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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2008年06月20日 平成20年厚生委員会第7号

山加朱美
 豊島病院の公社化について、 手短に何点かお伺いをさせていただきます。
 私の地元は練馬区なんですが、この練馬区は区の西北部保健医療圏でありまして、練馬区民もこれまで豊島病院には大変お世話になっております。このために、私も豊島病院のあり方については大変注目をしてきたわけでございます。
 この病院についてはさまざまな検討がありましたが、平成十九年一月、今後の豊島病院のあり方についてにおいて公社化の方向性が定められ、また、今回、運営移管後の医療機能等が明らかになったわけであります。
 今後、公社病院として住民が身近な地域で安心して暮らせるように、地域の核となってこれまで以上に地域ニーズを踏まえた運営を行っていくことが必要であることは、今さらいうまでもないことであります。
 そこで、我が党は従前より、公社化に当たっては地元の自治体と役割分担を十分に踏まえた上で、地元の住民、また地域の医療機関の声を十二分に聞いていただくように要望してまいりました。
 今回の豊島病院公社化の検討に当たりまして、先ほど豊島病院運営協議会準備会における主な意見ということで資料等でもございましたけれども、改めて、地域の声や要望にはどのようなものがあって、また、それらを医療機能等にどのように反映をさせたのか、お伺いをいたします。

及川経営企画部長
 豊島病院公社化の検討に当たりましては、地区医師会や地元自治体、住民代表等から構成されます豊島病院運営協議会準備会を設置いたしまして、医療機能等について議論しますとともに、各地区医師会会員等を対象としましたアンケートを実施しまして、地域の医療ニーズ把握に取り組んできたところでございます。
 準備会では、地元の意見を反映した病院の名称とすること、新たに脳血管疾患医療や、がん医療を重点医療として取り組みを強化すること、地域医療支援病院の承認を目指していくこと等、具体的にさまざまな意見やご要望をいただいております。
 また、アンケート調査では、この移管後の重点医療につきまして、救急医療につきましては九八%の方々から、また、脳血管疾患医療は九五%、がん医療は八八%と多くの方々から実施すべきであるとのご意見をちょうだいしております。
 こうした意見やアンケート調査を踏まえまして、豊島病院の名称を残すことや、救急医療など三つの医療を重点医療とするとともに、原則として現在の診療科及び診療機能を継続することとしたものでございます。
 さらに、地元板橋区とは、公社化いたします豊島病院が地域に果たす役割という観点から、基礎的自治体である板橋区が医療面でどういったかかわり方をするのか、具体的な方策として何ができるのかなど、現在さまざまな面から意見交換をしているところでございます。

山加朱美
 地域の医師会等からのアンケート調査、また、住民代表を交えた準備会での議論などによって地域の要望がきちんと反映をされ、さらに現行の診療科及び診療機能が継続されることが確認できたわけでありますが、しかし、今回の報告書を見ますと、診療規模、いわゆる入院病床数、外来規模が明確にはなっておりません。
 また、この豊島病院は平成十二年度の第二次開設以降、依然として三次開設が見送られたままとなっているわけでありますが、こうした移管後の診療規模がどうなるのか、また、未開棟となっている病棟をどうするのかをお伺いいたします。

及川経営企画部長
 豊島病院は、医療法上の許可病床は四百七十八床でございますが、段階的な立ち上げによりまして円滑な病院運営を行うために、平成十一年度に新病院といたしまして、最初二百六十七床で開設をいたしておりまして、翌十二年度には三百六十床の病院規模とする第二次開設を行ってまいりました。
 その後、都立病院の役割と医療機能を再検討する都立病院改革を進める中で、当面第三次開設を見送っておりまして、現在に至っております。
 この間、三百六十床という規模で運営を行ってまいりましたが、最近の産科や小児科などにおきます医師の不足や患者実績等を勘案いたしまして、平成二十年度は三百四十八床の病床規模としたところでございます。
 公社移管後の診療規模につきましては、現在、病院現場や移管先となる保健医療公社とともに検討しているところでございますが、地域の中核病院としての役割を担っていくために、医療スタッフの確保状況や患者実績等も勘案しながら、より適切な診療規模を設定していきたいというふうに考えてございます。
 なお、豊島病院が持つ人材あるいは施設設備など、こうした医療資源を最大限活用することによりまして、地域のニーズにこたえていくため、将来的には全病棟の開棟を目指してまいります。

山加朱美
 ぜひとも適正な診療規模を設定していただくとともに、より効率的な病院運営を行っていただきたいと思います。
 さて、これまで都立病院から移管してきた病院の中では、多摩北部医療センター、また荏原病院の状況を見ますと、看護師の確保が大変厳しく、一部の病棟が閉鎖をされているわけであります。最近の看護師不足は、公社病院でも大変苦労されていると思いますが、これは全国的な流れでありまして、こうした事態をあたかも公社化したことが原因であるかのようなマイナスイメージで主張する一部の会派もあるようでございますけれども、これは全国的な流れであります。
 そこで、確認のために伺いますけれども、これまで公社化した病院における看護師不足の理由は何か、また、具体的な対策についてお伺いをいたします。

及川経営企画部長
 看護師の不足の原因といたしましては、ただいま副委員長のお話のように、七対一の新看護基準導入による全国的な看護師不足の影響を受けておりますほか、医療が高度化、多様化をいたしまして、患者のニーズが増大する中で、新人看護師の看護実践能力と医療現場で求められる能力とのギャップによりまして、主に新人看護師が早期に離職をするといった傾向があるというふうに考えております。
 公社病院では、このような比較的離職率の高い新人看護師の離職防止対策といたしまして、三カ月間指導者をつけて、さまざまな病棟、手術室などを回りまして多様な業務を経験させる、いわゆるグローアップ研修と呼んでおりますが、こうした研修を実施いたしますとともに、中堅職員のスキルアップのため認定看護師の資格支援など、定着対策にも努めております。
 また、公社事務局での毎月採用の実施や、病院での随時採用の拡大などに加えまして、経験者の採用試験を面接のみにするなどの工夫を凝らし、採用にも努力をしております。
 さらに、一部の病棟では、現在三交代で行われている勤務について、夜間を分割しない二交代制の施行などを開始いたしまして、勤務体制の多様化も図っております。
 こうした取り組みに加えまして、現在、公社職員の人事給与制度の見直しを検討しているところでございまして、こうした考え得るさまざまな対策を行うことによりまして、引き続き看護師の確保に努めてまいります。

山加朱美
 公社を所管する病院経営本部におきましては、公社が創意工夫と努力を行って、どうか職員確保に向けたより有効な対策を打ち出せるようにご指導をお願いしたいと思います。
 私は、先日、知人が平成十六年度に公社化した大久保病院に入院、手術をしたものですから、訪れる機会がありまして、この公社化された大久保病院、以前も知っているのですけれども、大変活気づいたといいますか、病院内が明るくなって、てきぱきとしているというか、そんな雰囲気を感じまして、ちょっとお話も伺ってきたんです。
 確かに移管直後はさまざまな風評被害も若干影響して、この病床利用率も下がったけれども、その後、やはりいろいろな工夫を凝らして、ご苦労も大変あったと聞いておりますけれども、現在はメタボリックシンドロームの週末短期入院、そしてまた、アンチエイジング外来を開始するなど公社病院ならではの特色ある医療を提供して、大変活気を呈しておりました。
 やはり豊島病院においても、この公社化病院としてさまざまな知恵を出していただいて、サービスの向上に努力するようにお願いをしたいと思います。
 ところで、本会議における我が党の代表質問に対して、豊島病院においては地域の医療機関との役割分担を踏まえて、帝王切開が必要となるなどのリスク管理が求められる分娩に対応できるように、この秋を目途に準備を進めているという答弁がございました。
 そこで、何点か確認をさせていただきたいのですが、まず、分娩に関しまして、この地域の医療機関との役割分担を踏まえ、リスク管理が求められる分娩に対応できるようというのは、具体的にはどういうことなのか、お伺いいたします。

及川経営企画部長
 豊島病院は、産科医の確保が困難となりましたことから、平成十八年九月より分娩を休止しておりますが、分娩の再開につきましては地域からの要望も強く、その中でも特に帝王切開や合併症を持つ妊婦さんの分娩に対応してほしいという、こういった声を準備会でも聞いております。
 この間、議会のお力添えをいただきながら、医師の処遇改善などさまざまな取り組みによりまして医師確保に努めました結果、現在、常勤の産科医を四名確保したところでございます。
 チーム医療を行っていく上で、まだまだ十分な体制とはいえませんけれども、地域のニーズにこたえるために、診療所や個人病院など地域の医療機関との役割分担のもとに、この秋を目途に、母体や胎児の異常、あるいは多胎児出産に伴う帝王切開などのリスク管理が求められる分娩を中心に段階的に対応していく予定でございます。
 また、豊島病院では対応が困難な低出生体重児出産などのハイリスク分娩に関しましては、周産期医療センターの機能を持つ大塚病院や墨東病院を初め、近隣の大学病院等と連携をいたしまして適切に対応してまいります。

山加朱美
都立病院が高度な周産期医療の集約化を図り、また、地域医療の核となる豊島病院においては、診療所や個人病院などの医療機関や大学病院との連携を行って、帝王切開などの分娩に対応する、こうした機能に応じた役割分担を図るということについては理解をいたします。
 それでは、分娩再開に向けて、この秋を目途に準備を進めているということでありますけれども、今後、具体的にどのように準備を進めていくのか、お伺いをいたします。

及川経営企画部長
 分娩の再開に当たりましては、母体や胎児の異常などによりリスク管理が必要となる妊婦を中心にすると申し上げておりますが、これは、分娩がまた再開したことによって、過度に集中をすることによりまして、また産科医が疲弊をし、再び離職するといったような事態にならないようという理由がございまして、引き続き、産科医や助産師等の確保にも努力をいたしまして、その状況を踏まえますとともに、地区医師会や地域の医療機関等とも十分に連携を図りながら、段階的に受け入れ対象や件数を拡大していくとしたものでございます。
 また、再開に向けましては、母体だけではなくて、生まれてくる子どもにも一定の対応が可能となるよう新生児の専門医の確保にも努めますとともに、産科医と看護要員がチームとして実践的な分娩のトレーニングを行いながら、十分連携を図ることによりまして、この秋を目途に安全な受け入れができる体制を整えてまいります。

山加朱美
 総合的な医師確保対策が目に見える効果としてあらわれ、また産科医の確保、リスク管理が求められる分娩の再開へとつながったことは、それを強力に支援してきた我が党としては、大いに評価をさせていただきたいと思います。
 公社化することによって、あたかも現在行われている医療サービスが低下するということを宣伝、また吹聴する、そしていたずらに都民の不安をあおってしまう、そんな一部の会派もありますけれども、決してそのようなことではなくて、これまでの質疑を通して、産科医を確保するとともに、生活習慣に密接に関係し、患者数も多いがん医療、また脳血管疾患医療などを重点医療として、その機能充実が図られることが大変確認できました。
 今後も豊島病院は、公社医療としての医療サービスを維持向上させ、また、公社移管後も引き続き地域に密着した質の高い医療を提供していただくことを要望いたします。
 そして、最後に、豊島病院の公社化に向けまして、病院経営本部長の決意を伺っておきたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 決意を伺って、質問を終わらせていただきます。

秋山病院経営本部長
ただいま山加副委員長から、豊島病院の公社化に当たりまして、多面的なご質問をいただきました。
 公社化に当たった運営協議会の準備会で、地元の皆様からさまざまなご意見をちょうだいした、これを聞くにつけて、地域医療を豊島病院が担っていくということへの地元の強い期待とともに、我々病院経営本部、それから来年この経営を担っていく公社、これらの重い責任を改めて痛感したところでございます。
 公社化に当たって当面の最大の課題が産科医の不足、分娩の休止でございまして、これは先ほど部長からもご答弁したとおり、常勤医四人、必ずしも十分ではございませんけれども、産科医の総数が減少する中で、また、都内においてもまだまだ病院の分娩休止が発生しているという状況の中では、荏原病院で産科医の確保のめどが立ったこととあわせまして、比較的大きな成果が出たんじゃないかというふうに思っております。
 その成果が出た要因は、先ほどお話がございましたとおり、医師の処遇の改善、給与の改善だけではなくて、女性医師対策なども入れたことによりまして、その総合的な対策が医療界の中で評価をされたということがございますけれども、実は、とりわけ何といいましても、都民を代表する都議会の場で医師不足の現状が議論をされ、その上で対策が打ち出されたということに対する評価が高うございます。
 日本産科婦人科学会の幹部からは、医師不足や産科の現状を理解し、議会などできちんとした都民的議論が行われた上で対策が示された東京都には支援をしていくという話が私にも直接ございました。こういう言葉が、そのことをあらわしているというふうに思っております。
 大変僣越でございますけれども、厚生委員会の先生を初め都議会にてご支援を賜りました先生方に、厚く御礼を申し上げたいと思っております。
 ただいまの質疑でも議論されましたが、公社化に当たりまして、まだまだ課題もございます。地域連携のさらなる強化、それから重点医療の充実ですね、これは、大きく三つ、救急、脳血管、がんと掲げておりますけれども、それから、さらなる医療スタッフの確保、そういったものを総合した診療規模等、解決すべき課題がある。
 こうした課題をとらえてかどうかわかりませんが、現在、公社化するとこれまでの医療やサービスは守れないといった、やや誤解を招きかねないスローガンを記載したビラが地元で配布されるなどの動きがあるということは承知をしております。
 しかしながら、これらの課題は、公社化によって新たに地域医療サービスを充実するためにつくり上げていく医療機能であったり、また、病院の経営形態とは関係なく現在の激変する厳しい医療環境に影響を受けている課題にほかなりません。したがって、現状の的確かつ冷静な分析の上に具体的で総合的な対策が極めて大きな効果を発揮した医師確保と同様、都議会の先生方のご支援、ご協力をいただき、ひいては多数の都民の皆様の理解を基盤といたしまして、現下の厳しい医療環境に対しました、地域に密着したサービスの向上に具体的に結びつく万全の準備を進めながら、平成二十一年四月からの公社化を着実に推進してまいるとともに、引き続き公社化後の支援にも努めてまいる所存でございます。

出典:厚生委員会速記録第七号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2008-07.html

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