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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2008年09月30日 平成20年厚生委員会第10号

山加朱美
 第百八十二号議案、条例改正案の提出のありました豊島病院の公社への運営移管に当たりまして、これに関して何点か伺います。
 豊島病院の公社化については、さきの第二回定例会の厚生委員会でも活発な質疑が行われました。我が党からも、特色ある医療の提供、医療機能の充実など、これまで以上に地域に密着した質の高い医療を提供していただくよう要望させていただいたところであります。
 中でも、特に地元の自治体、住民から要望の高い分娩再開については、リスク管理が求められる分娩に対応できるよう、この秋を目途に準備を進めているとのご答弁をいただいております。また、この分娩再開については、地元の板橋区議会、豊島病院の地元であります区議会からも、産科や新生児医療への取り組みなど医療の充実を求める意見書の提出があったと伺っております。
 この秋に分娩を再開することにより、こうした要望にもこたえていくことになると考えるわけでありますが、こうした地域の大変関心の高い豊島病院の分娩再開について、これに関する現在の準備状況、また今後の見通しについて、まずお伺いいたします。

及川経営企画部長
 豊島病院の分娩の再開についてでございます。現在、産科の常勤医師四名のほか、新生児に対応いたします常勤医師も七月に一名採用いたしまして、さらには非常勤の医師を確保するなど、分娩の再開に向けました体制を整えまして、この十月からはリスク管理が求められる分娩を中心に行うということといたしまして、その準備を進めているところでございます。
 現在豊島病院には、既に数名の妊産婦さんが通院中でございますけれども、分娩に対する安全性を確保するために、再開後二、三カ月程度は、症例数をある程度制限する必要があるというふうに考えておりまして、民間の医療機関では対応が困難でございます、例えば糖尿病合併妊娠とか、双子や三つ子などの多胎等、妊娠中や出産後の母体、胎児、新生児、こういった経過や出産後のリスクが予想されます分娩を対象としていくといった考え方でございます。その後に、安全性を十分に確認した上で、地区医師会や地域の医療機関とも密接な連携を図りながら、こうしたリスク管理が必要な分娩を中心に、段階的に受け入れ対象や件数を拡大していく計画としております。

山加朱美
 産科、そして小児科など、特定の診療科における医師不足、これは全国的な問題でありまして、その確保が大変困難なことは周知の事実であります。そのような中で、今ご答弁いただきましたように、豊島病院では、分娩の再開に向けて、産科、新生児専門医の確保を着実に進めてきたということ、大変評価をしたいと思います。
 しかし、一方では、最近は私の世代ですと、ほとんど三分の二が高齢出産でありますけれども、最近は特に高齢出産などで帝王切開になるというケースもふえているようであります。母子の状態によっては、相当に高度な医療行為も必要になると聞いておりますが、お産に対するリスクに十分に留意をしながら、どうか適切な対応を進めていただくよう要望させていただきます。
 さて、この豊島病院の公社化後も、地域の中核病院としての機能を充実させ、地域全体の医療サービスの向上を図っていくこととしております。その診療規模については、さきの厚生委員会におきまして、医療スタッフの確保状況や患者実績等も勘案しながら、より適切な診療規模を設定していくというご答弁をいただいているわけでありますが、今年度の予算病床数を見ますと三百四十八床となっております。
 今後は、地域の医療ニーズにこたえていくためには、必要な病床数を確保していくということが大変重要と思うわけでありますが、そこで、公社化後の豊島病院の病床数がどうなるのか、病床数の考え方についてお伺いいたします。

及川経営企画部長
 公社移管後の豊島病院の病床数についてでございますが、先ほど申し上げました今回の分娩再開によります産科病床の整備といったことや小児科の充実、また、重点医療といたします救急医療、それから、脳血管疾患医療、がん医療などに対応するための病床を確保いたしまして、地域の中核病院としての役割を果たしていきたいというふうに考えてございます。
 特に、脳血管疾患医療では、脳卒中治療を重点的に行う病床を確保するため、SCU、これは脳卒中センターでございますが、これを整備するなど、今後も地域住民の期待にこたえてまいります。
 今年度は、ご指摘のとおり、これまでの患者実績等を勘案いたしまして、三百四十八床ということで運営をしておりますけれども、今後の重点医療と、先ほど述べましたこうした医療等の要素を十分に考慮しながら、当面必要な病床数を確保いたしまして、地域の医療ニーズにこたえていきたいというふうに考えております。その上で、周辺の医療環境等も踏まえながら、将来的には全病棟の開棟を目指してまいります。

山加朱美
 社会環境が大きく変化をしている中で、地域からの医療ニーズや医療の需要状況を踏まえ、地域に必要な医療を確保していくためには、病床を含め、持てる医療資源を最大限活用していくことが大切であることはいうまでもないことであります。今ご答弁をいただきましたけれども、将来的な全病棟開設に向けて、どうか努力をしていただきたいと思います。
 さて、先ほど、分娩の再開に向けて産科や新生児専門医を確保したとのご答弁をいただいたわけでありますが、医師不足とともに看護師の不足も全国的な問題となっております。その確保をすることは、病院運営を行っていく者にとっては極めて重要な課題であると認識をいたしております。
 現に、多摩北部医療センター、また荏原病院など、一部の公社病院では看護師確保が大変厳しく、病棟を休止せざるを得ないなど、病院が本来持つ力を十分に発揮できずに、現場の皆さんは大変悔しい思いをされていることと思います。この公社病院における看護師不足については、七対一の新看護基準を契機とした全国的なものであるわけでありますが、それを理解せず、あたかも公社化したことが原因であるかのように主張される向きもあるように思います。
 そこで、公社病院における看護師欠員の状況が公社化を起因としているものなのか、その点について改めて確認をさせていただきたいと思います。

及川経営企画部長
 看護師の欠員の問題でございますが、今回要求資料でもお示しをしてございますが、ここ数年、特に、ここ二年から三年ぐらいの間なんですが、看護師の確保は大変厳しい状況にございまして、この傾向は公社病院だけでなく、都立病院においても同様でございます。
 その中で、公社病院の個々の病院を見てみますと、平成二十年度を見ますと、例えば開設当初から公社病院でございました東部地域病院においては、看護師は充足の状況にございます。一方、やはり開設当初から公社病院であった多摩南部地域病院は欠員といった状況になってございます。
 また、都立病院から公社移管を行った病院について見てみますと、例えば、大久保病院は都立時代と変わらずやはり充足しているといった状況にございますが、残念ながら、多摩北部医療センター、荏原病院につきましては欠員の状況ということでございます。
 これらのことから、看護師の欠員状況は、やはり基本的には七対一の新看護基準といった診療報酬制度に起因をしているというふうに考えるところでございますが、先ほどのデータにもございますとおり、個々の状況を見ますと、地域性などの病院の置かれた個々の事情も影響しているというふうに考えられるところでございます。

山加朱美
 公社化により看護師の不足が生じているという主張は事実に基づいていないということが、今のご答弁によってまた確認をできたわけであります。しかし、今お話にあったように、荏原病院、多摩南部地域病院の状況を見ますと、大変厳しい欠員状況にあるのもまた事実であります。こうした事実を真摯に受けとめ、看護師の確保、定着の対策をしっかりと実りあるものとしていかなければならないと考えております。
 そこで、看護師の確保については、これは病院運営のかなめであるわけでありますが、当然さまざまな取り組みを行っていると思います。保健医療公社における看護師確保、定着に向けた具体的な取り組みについて、また、豊島病院においては、公社化にあわせ医療スタッフをどのように配置していくのか、あわせてお伺いいたします。

及川経営企画部長
 保健医療公社におきます看護師確保の取り組みでございますが、まず、固有職員の確保対策としましては、公社事務局での早期選考や毎月採用の実施、病院での随時採用の拡大、面接を重視しました採用試験を実施するなど、公社独自の工夫を凝らし、採用に努力しているところでございます。
 また、定着対策としましては、三交代制から夜間を分割しない二交代制への移行など勤務体制の多様化を図るとともに、新人看護師の看護実践能力の向上を図るため、採用から三カ月間指導者をつけ、さまざまな病棟などを回り、多様な業務を経験するグローアップ研修の実施、中堅職員のスキルアップのため、認定看護師の資格取得支援など、さまざまな取り組みを行っております。
 こうした取り組みの結果、新卒看護師の採用確保状況は昨年と同程度でございますが、年度途中の看護師の退職者数について見てみますと、八月一日現在で、昨年と比較をしまして二十名程度の減少ということになってございます。看護師の確保につきましては依然として厳しい状況が続いておりますけれども、さまざまな工夫を凝らし、引き続き看護師の確保、定着に努めたいというふうに考えてございます。
 次に、豊島病院に勤務する医療スタッフの配置でございますが、豊島病院が公社化される際には、これまで公社化をしてまいりました病院と同様に、希望する方につきましては、公社固有職員に身分を切りかえて、引き続き豊島病院に勤務することとなります。そのほかにつきましては、当面、現在豊島病院に勤務している医師、看護師等を都職員の身分のまま派遣することになります。
 このように、医療スタッフの確保対策、あるいは職員配置を行っていくことによりまして、公社化後の豊島病院の医療機能に十分対応できる医療スタッフを確保してまいります。

山加朱美
 豊島病院の公社化に向けて、今後も引き続き、医療スタッフの確保に努め、万全の体制で公社移管を行っていただくよう強く要望いたします。
 今回、豊島病院を公社化することによって、来年度から保健医療公社は六病院体制となり、病床数も二千床を超えるという病院経営を行うことになるわけであります。医療現場を取り巻く環境は、今後ますます厳しくなると思われるわけであります。そしてまた、公社病院に対する住民、都民の期待も大変大きいものがございます。
 そこで最後に、豊島病院の公社への運営移管に当たり、改めて中井病院経営本部長の強い決意を伺い、私の質問を終わらせていただきます。

中井病院経営本部長
 豊島病院の公社化に当たっての決意ということでございますが、豊島病院はこれまでも、感染症医療、緩和ケア医療、精神科救急医療などの行政的医療を担う一方で、地域の医療機関との連携を通じて、地域医療に重要な役割を果たしてきているわけでございます。
 公社化に当たりましては、これまでのこうした実績を生かしつつ、地域の医療機関等との連携をさらに強化し、地域の中核的な役割を果たす病院として、地域全体の医療サービスのさらなる向上に努めてまいる所存でございます。
 具体的には、救急医療、脳血管疾患医療、がん医療を重点医療として取り組みを強化してまいります。
 また、先ほどもお話ございましたが、地域からの要望の高かった産科医療については、産科や新生児の専門医の確保にめどが立ったことから、リスク管理が求められる分娩を中心に診療を再開してまいります。
 このような取り組みを中心に、地域ニーズを十分に踏まえた特色ある医療サービスの提供に努めてまいります。
 また、ご指摘のございました看護師の確保につきましては、公社病院においては、これまでも採用選考の機会拡大や勤務体制の多様化など、その確保に努めているところでございますが、豊島病院につきましても、看護師の確保、定着対策にさらなる努力、力を投じてまいりまして、看護師の確保に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
 こうしたさまざまな取り組みにより、公社化後の豊島病院がこれまで以上に地域住民の期待にこたえられるものになるよう、病院経営本部、そして保健医療公社一丸となって、来年四月の移管に向けて万全の準備を行ってまいります。どうかご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

出典:厚生委員会速記録第十号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2008-10.html

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