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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2009年9月16日 平成21年厚生委員会第10号

山加朱美
 私からは、第百四十一号議案から第百四十四号議案に関連した、この四つの議案に関して、都の新型インフルエンザ対策について、何点かお伺いをいたします。
 本年四月二十四日、米国メキシコで新型インフルエンザの発生が確認をされて以来、急速にウイルスが世界じゅうに広まり、世界保健機関、WHOは二カ月もたたないうちに、パンデミック警報、人から人感染のフェーズ六、世界的大流行の兆しがあることを宣言したわけであります。
 インフルエンザ、このウイルスは、特にA型は、多くの亜型を持ち、私たち人間だけではなく、その宿主はカモなど水鳥を中心とした豚や、また馬、アザラシ、鯨、鶏など、動物界にその宿主は広く分布をしているわけであります。地球最大規模の人獣共通感染症といわれております。
 そして、この動物のインフルエンザウイルスは、その種を超えて感染し合うことがあり、それがこの新型インフルエンザ発生のきっかけとなるとされているわけであります。
 食のグローバル化が進み、また、この現代社会では大規模な養豚場や養鶏場が世界各国につくられるようになりました。自然界では考えられない規模で、まさに人、鳥、豚などが濃密に接触をしており、新型インフルエンザの発生の可能性が飛躍的に高まっているわけであります。
 また、航空機などの高速かつ大量輸送手段の発達によって、一たびこの新型インフルエンザが発生すれば、過去にないスピードで地球規模での大流行が起こることも、今や必然となっているわけであります。
 食のグローバル化が、そしてまた輸送手段の発達が、人類の進歩のあかしではありますが、その反面、動物由来感染症などの新興感染症の発生と流行という、新たな脅威を人類にもたらしてしまいました。
 私は、こうした観点から、平成十六年の第二回定例会、また、平成十八年の第四回定例会など、さまざまな場面を通し、世界じゅうから人、物が集積するこの首都東京として、新興感染症対策を十分に講じるよう、訴えてきたわけであります。
 都議会自民党としては、感染症対策、とりわけ新型インフルエンザ対策の強化充実の必要性については強く主張し、また、都がそれを受けて、タミフル、リレンザといった抗インフルエンザウイルス薬、そして、また医療資器材の備蓄を進め、そして医師会、薬剤師会など、さまざまな関係機関と対策を検討し、医療体制の確保に取り組んできたわけであります。
 今回の新型インフルエンザの発生では、これまで都民の健康被害は最小限に抑えられています。これは、私は、まさに議会と都が車の両輪となって対策に真摯に取り組んできた成果であると思っております。
 しかし、全国的には、若年層を中心に夏の間も感染拡大は続いています。そして、これから秋、冬の爆発的な流行が避けられないといわれているわけであります。
 そこで、都民の生命と健康を守る立場から、今後の対策について、何点かお伺いさせていただきます。
 まず初めに、現在の都内の流行状況、そしてまた今後の流行の推移についてお伺いをいたします。

前田感染症危機管理担当部長
 現在の都内の流行状況についてでございますけれども、本日取りまとめました九月七日から十三日までの一週間の一定点医療機関当たりの患者数は五・九〇人でございました。前週の三・六六人に比べまして二・二四人の増となっておりまして、依然として感染拡大が続いております。
 今後の流行の見通しについてですが、八月二十八日に国が示した流行のシナリオによりますと、流行の開始から八週間後に当たる十月前半に、都内では流行のピークとなります。その際の一日当たりの最大入院患者数は、四千六百人に達すると推定されております。

山加朱美
 十月前半、来月になるわけでありますが、今回の新型インフルエンザ、その十月前半にも流行のピークを迎えるとなりますと、タミフル、リレンザといったこの治療薬、重症患者のための人工呼吸器等が十分に確保されているのかどうか。改めて確認の意味でお伺いをしたいと思います。

前田感染症危機管理担当部長
 まず、治療薬の確保についてでございますが、現在の流行状況に十分対応できるタミフル、リレンザの量が都内では流通してございます。
 加えて、都では、タミフル、リレンザを合わせて四百万人分を備蓄しております。
 次に、人工呼吸器についてでございますが、都内の四百八十二病院に調査した結果では、人工呼吸器の保有数は約四千台で、そのうちの半数の二千台が稼働中でございました。
 したがいまして、国の流行シナリオによります一日最大重症患者数、四百六十四人に対しまして、十分対応可能な人工呼吸器が確保されております。

山加朱美
 次に、急増する患者に対する医療体制、特に、重症患者のための入院ベッド等を都はどのように確保しているのか、お伺いいたします。

吉井医療政策部長
 新型インフルエンザ患者の急増に対応するため、外来治療を専らとする救急医療体制を平常時にも増して確保していく必要があることから、都は本日、区市町村及び医師会に対して、休日夜間急患センター、開業医が行います在宅当番医制、それから小児初期救急医療施設等における医師の増員や診療時間の延長など、各地域の実情に応じた休日夜間の外来診療体制の強化を要請いたしました。
 あわせまして、急増する入院患者や重症化するリスクが高い妊婦、小児、透析中の患者などの入院医療を確保するため、都内全病院に対し、病棟間や診療科等、部門間における医療従事者の配置の再調整、さらにはその適切なベッドコントロール等により、受け入れ体制を確保するよう要請を行ったところでございます。

山加朱美
 医師不足の中、流行のピーク時には大変厳しい状況となることも懸念されていますが、どうか都民の生命と健康を守るために、開業医の先生方、また医療機関、行政が一体となって医療体制の確保に努め、難局を乗り切っていただきたい、切に思います。
 また、抗インフルエンザウイルス薬についてですが、タミフル耐性の強毒型の新型インフルエンザが発生するという、最悪の事態を想定して、都の備蓄計画は着実に進められているわけでありますが、今回の新型インフルエンザは、タミフル、リレンザ、いずれも有効であり、両者合わせて、都独自に四百万人分を備蓄していることは、現段階において、都民にとっては大変大きな安心材料であると思います。
 これら備蓄分のうち、タミフル百万人分、リレンザ二百万人分、これは新型インフルエンザ緊急対策として、去年の第三回定例会において補正予算を組み、くしくも新型インフルエンザの発生直前に、この備蓄が完了したものであります。民主党や共産党が本会議において、新型インフルエンザ対策を含む補正予算案に反対したことを私はここで指摘をしておきます。
 ところで、タミフルには、ドライシロップ、小児用のシロップ、これは小児が服薬しやすいように製剤化されたものでありますが、このドライシロップの備蓄について、都の考え方を伺います。

奥澤食品医薬品安全担当部長
 都が備蓄を進めております二種類の抗インフルエンザウイルス薬、タミフルとリレンザの有効期間は七年でございますが、それに対し、タミフルドライシロップの有効期間は、現在流通しているもので二年、今後出荷されるもので三年と短く、長期の備蓄にはなじまないため、都は備蓄の対象としておりません。
 なお、感染拡大時にタミフルドライシロップが不足した場合には、タミフルの脱カプセル、具体的にはタミフルのカプセルを外し、小児の体重に応じて調剤することにより対応することとなります。そのため、都は、東京都薬剤師会に対して協力を依頼し、脱カプセルによる調剤が確実に行われるよう万全を期しております。

山加朱美
 タミフルドライシロップの備蓄が難しいこと、また、その期間が限られた期間しか備蓄ができないということ、よくわかりました。
 しかし、今回の流行では、子どもの患者が多いことも事実であります。特に乳幼児は、インフルエンザ脳症など、重症化する危険性が高いといわれています。子どもへの治療が適切に行われるよう、治療薬の流通とともに、またあわせて入院病床の確保にも取り組んでいただきたいと思います。
 また、今回の新型インフルエンザは、若年層の患者が多いことのほかに、先ほどご答弁にもございましたが、妊娠されている方が重症化しやすいとのことであります。そのため、万が一、罹患した場合には、産科医院での感染を避ける必要があるわけであります。あらかじめ、かかりつけ産科医に受診医療機関について紹介を受けたり、また受診方法等の指示を受けるよう、どうか妊娠されている方に対して周知徹底をしていただきたいと思います。
 また、今回の新型インフルエンザは、夏場にも感染が拡大するという異例の事態となったわけであります。今後の流行が国の想定どおりに進むのか否かはわかりませんが、仮に流行のピークが季節性のインフルエンザの流行時期に重なれば、患者数はさらにふえることになります。
 都は引き続き、この流行状況を的確に把握し、関係機関と緊密な連携を図りながら、これまで以上に医療提供体制の強化を図ることを強く要望いたします。
 次に、ワクチンについてお伺いいたしますが、今回の新型インフルエンザのワクチンについて、国は十月下旬から接種を開始するとしています。接種の優先順位がどうなるのか、また副作用が発生した場合の補償問題をどうするのかなど、制度の詳細については今月末に決定をされると報道されていますが、現段階で国が示しているワクチンの接種計画の内容について伺います。

前田感染症危機管理担当部長
 新型インフルエンザワクチン接種についてでございますけれども、国は、今回のワクチン接種は、国が一元的にワクチンを確保し、直接、医療機関と委託契約を締結して実施する事業であることを明らかにしております。
 また、接種の優先順位を九月末を目途に決定し、その順位に従って十月下旬から接種を開始するとのことでございます。
 さらに、費用負担については、ワクチン接種が個人予防を主たる目的とすることから、接種の実費相当額を被接種者から徴収するとしております。しかしながら、医療従事者の範囲や基礎疾患を有する者といった具体的な定義などについては、まだ詳細は示されておりませず、健康被害に対する補償や低所得者の費用軽減負担の措置のあり方についても、まだ検討中とのことでございます。
 都はこれまでも、ワクチン接種が円滑かつ確実に行えるよう、国の責任において実効性のある仕組みを構築するとともに、必要な財源措置を講ずるよう提案要求してまいりました。今後とも、国の動向を注視しつつ、新型インフルエンザワクチン接種が適切に実施されるよう国に求めてまいります。

山加朱美
 ワクチン接種については、接種費用や具体的な接種体制など肝心な部分を国がまだ定めておらず、都としても対応には苦慮しているようでありますが、必要な方が確実にこのワクチン接種を受けられる体制の確保に努めていただきたいと思います。
 また、今回の新型インフルエンザは、私たちが当初想定していた鳥ぐらいの強毒型の新型インフルエンザではなく、弱毒型であるということであります。したがって、タミフルやリレンザも有効とされているわけであります。
 しかし、マスコミ等、最近、新型インフルエンザというだけで過剰に反応して、ワクチンこそが新型インフルエンザの唯一の予防策とするような、そんな報道が見られることに対して、私は若干心配を持っております。ワクチンを接種すれば新型インフルにかからないというわけではありません。また、ワクチン接種をしたからといって、安心してはならないわけであります。
 季節性インフルの致死率は〇・一%以下といわれているわけですが、ほとんどの方が免疫を持たないこの新型インフルエンザの致死率は〇・四%とされていますよね。また、短期間で重症化するということも、この新インフルの形であるわけであります。まずは、この新型インフルを恐れるだけでなく、都民の一人一人が正しい知識を持って、必ず手洗いをする、人込みの中ではマスクをかける、また、せきエチケットなどの予防行動をとることが感染拡大の防止に極めて有効であることはいうまでもないことであります。今後とも、都民に対して、十分かつわかりやすい情報提供をどうかお願いをしたいと思います。
質問を終わります。

出典:厚生委員会速記録第十号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2009-10.html

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