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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2014年11月18日 平成26年厚生委員会第14号

山加朱美
きょうの事務事業、十名が質疑を予定しているようでありますので、なるべく無駄な時間を省いて質疑をさせていただきたいと思います。
 東京都で直近、ことしの上半期、一月から六月までに東京を訪れた外国人旅行者は約四百十七万人と、過去最高を記録したとのことであります。六年後に二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控えて、今後ますますこの外国人旅行者の数はふえていくことが期待をされています。
 東京は今、世界で最も注目を集める都市であり、東京の魅力を海外に発信するまたとない機会を得ているわけであります。同時に、都民にとっても世界で一番の都市東京であるよう、都議会自民党は、さまざまな角度から政策提言を行い、その実現を目指し取り組んでまいります。
 都民が夢や希望を持ち、幸せを実感できる都市であるためには、何よりも、都民に安全と安心を約束できることが大切であることはいうまでもありません。都民の命を守る医療、私はこれこそが最大の生きるセーフティーネットだと思っています。
 都立病院は、都民の医療ニーズに対応すべき医療課題を行政的医療と位置づけ、高水準で専門性の高い医療を提供することを役割としています。まず、行政的医療の提供という観点から質問をさせていただきます。
 初めに、感染症医療についてですが、現在、世界は、エボラ出血熱という、まさに未知の感染症の脅威にさらされています。西アフリカの流行国では既に一万四千人以上の患者が発生し、死亡者は五千人を超えています。そのうち、治療に当たった医療従事者もエボラウイルスに感染し、三百人以上が死亡していると聞いております。
 日本にとっても、これは対岸の火事ではなく、先日、都内でも二件の疑い例が発生をし、危機感が募りました。これまでも疑い患者は新宿区にある国立国際医療研究センター病院に搬送されていますが、エボラ出血熱を含む最も危険な第一類感染症を治療できるのは、国立国際医療研究センター病院のほかは、都立病院では、専門病床を持つ都立駒込病院、墨東病院、公社荏原病院の公立、公社の三病院だけであります。
 こうした危険性の高い感染症対策はまさに行政的医療そのものであり、エボラ出血熱の国内発生の危機に対して、都としてもしっかりと応えていってほしいと願うわけであります。
 一方で、いざ患者が発生し、受け入れるとなれば、他の疾患で入院している患者、通院患者にとっては、アメリカで起きたような医療従事者の二次感染の事態が生じはしないか、感染拡大のおそれはないか、当然ですが、大変不安を抱くこととなると思います。
 国では、十月二十八日にエボラ出血熱対策関係閣僚会議の設置を閣議決定し、内閣官房に対策室を設置したとのことであります。都では、エボラ出血熱患者の発生に備え、どのような対策を講じているのか、まず伺います。

中野経営企画部長
未知の感染症に対しまして的確な対応をとることは、目下の緊急かつ重大な課題でございます。
 東京都では、東京都エボラ出血熱対策連絡会議を既に設置いたしました。また、都内で患者が発生した場合には、直ちに知事を本部長とする東京都エボラ出血熱対策本部が設置されることになっております。
 病院経営本部におきましても、既に感染症対策委員会のもとにエボラ出血熱対策専門部会を設置いたしまして、二十四時間の情報連絡体制をしいて受け入れ体制を整えております。
 第一種感染症指定医療機関である都立、公社の三病院につきましては、陰圧装置のある専用の感染症病床や独立したエレベーターを有しておりまして、他の患者さんと接することなくエボラ出血熱患者の治療が可能でございまして、二次感染を防止する構造となっております。
 また、これまでも定期的に防護服の着脱訓練を行ってまいりましたが、十一月十一日には、福祉保健局、東京消防庁、保健所等関係機関と実践的な合同訓練を実施いたしまして、患者発生時点から始まる情報伝達訓練から指定医療機関での受け入れ訓練を行い、一連の流れを確認することで、さまざまな活動を検証いたしました。
 今後も、感染拡大防止に万全を期してまいりたいと思っております。

山加朱美
 答弁から、エボラ出血熱に対してハード、ソフトの両面において適切な対応がされていることがわかり、大変安心をいたしました。
 患者の血液や体液に直接触れない限り感染はしない。また、発熱など発症するまでは感染リスクは極めて低いということなので、不必要に恐れることなく冷静に受けとめたいと思います。しかし、都民には正しい情報がしっかりと伝達されるように、啓発もしっかりとお願いをしたいと思います。
 また、ことしの夏はデング熱という感染症が発生し、本来憩いの場である公園が感染防止のために利用できなくなるなど、都民生活に影を落としました。
 オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年夏に向かって、国境を越えた人々の往来がますます活発になります。それに伴い、新たな感染症が国内で発生するリスクもあるわけであります。今後も、感染症への対策には、都として万全を期していただきたいと思います。
 次に、災害医療についてお伺いをしたいと思います。
 昨年十月、大島では台風による大雨で土石流が発生し、多くの方の人命が奪われ、大惨事となりました。震災も風水害も、自然災害はいつ起こるかわからないものですが、都立病院では、東京DMATや医療救護班の派遣体制を整備し、迅速に被災者の救護活動に従事できるようにしています。このことは高く評価をしています。
 しかし、一方で、災害とは必ずしも自然がもたらすものばかりではありません。二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック開催を前に、余り考えたくないことですが、悪意を持ったテロなど人為的な災害をも想定しておく必要があるわけであります。
 こうしたさまざまな災害から都民の命を守り、災害に強い安全な東京をつくるためには、都立病院の果たすべき役割は大変重いものであると思います。
 今までも都立病院は、首都東京の名に恥じないさまざまな訓練を通して対策を講じてくれています。改めて、都立病院における災害医療に対する取り組みについてお伺いをしたいと思います。

中野経営企画部長
災害時に一人でも多くの命を救うため、都立病院がその役割を確実に果たしていくことは極めて重要であると考えております。このため、各都立病院では、災害時の優先業務や対応手順等を定めましたBCPを策定いたしまして、都内で震度六弱以上の地震が発生した場合には災害対策本部を立ち上げるなど、迅速に対応できる体制を構築しております。
 こうした初動体制を確かなものとするため、各病院では毎年、首都直下地震等を想定した防災訓練を実施しております。災害対策本部の立ち上げや、多くの傷病者を受け入れるトリアージ訓練など、実践的かつ実効性の高い内容を盛り込んだ訓練としております。
 さらに、広尾病院におきましては、核物質や炭疽菌等が使用されたテロ等を想定したNBC災害訓練を毎年行うなど、人為的な災害につきましても対策を講じております。
 今後も、さまざまな災害に対応した訓練を繰り返し行うことにより、都立病院の災害対応力の強化を図ってまいります。

山加朱美
 大規模災害は、きょう、あした発生するかもわからない。いつ起きてもおかしくない災害に的確に対応し、これからもしっかりと都民の命を守れるように、今後も都立病院として着実に災害対策を進めていただきたいと願います。
 次に、救急医療について伺います。
 昨年、東京消防庁の救急出場件数は過去最高を更新したと聞いています。今後も高齢化の進展に伴い、ますます救急医療の需要が増大することは必至であります。
 東京都は、三百六十五日二十四時間の安心を掲げ、初期から三次救急に対応する東京ERを開設してから間もなく十三年がたとうとしています。都民の救急医療に対するニーズは今後ますます高まるばかりであると思います。救急医療の充実を望む都民の期待に応えるため、東京ERを今後どのように強化していくのか、伺います。

中野経営企画部長
急性期医療を基本的役割とする都立病院では、広尾病院、墨東病院、多摩総合医療センターに初期から三次救急までを担う東京ERを開設するなど、これまでも救急医療に力を入れてまいりました。
 高齢化の進展などにより、救急患者は増加しております。また、合併症を有する患者さんや重症患者の増加にも的確に対応するため、救急診療機能をさらに強化していく必要がございます。このため、東京ERに先進的な医療機器を導入することや、心臓冠動脈疾患治療室、CCUなど、疾患別の集中治療室の設置を図っていくこととしております。
 また、墨東病院では、より質の高い救命医療を提供するため、広範囲熱傷などの特殊疾患患者に対する救命医療を行う高度救命救急センターの平成二十七年度中の指定を目指しております。
 今後も、三百六十五日二十四時間の安心、いつでも誰でも適切な医療が受けられる救急医療の充実強化に努めてまいります。

山加朱美
 ありがとうございます。ただいまの答弁から、医療環境の変化にしっかりと対応できるよう、新たな機能を備えた東京ERを目指していることがわかりました。今後も、都民に信頼される救急医療を提供していってほしいと願います。
 冒頭申し上げたとおり、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に、海外から日本を訪れる外国人はさらにふえていくことが見込まれます。観光で日本を訪れる、あるいは長期にわたり滞在する外国人に世界で一番の都市を実感してもらうためには、医療環境を整えることは大変重要な要素であります。
 九月に公表された東京都長期ビジョンの中間報告によれば、二〇二〇年までに、全都立公社病院では、外国人が安心して適切な医療を受けられる環境を実現するため、多言語による診療体制の整備を行っていくとしています。これこそ東京のプレゼンス、東京の存在感を世界に発信していくために欠かせない取り組みであると思います。
 私たちも海外に出かけるわけでありますが、海外に出かけたときに、急に発熱をする、また、事故に遭って病院に運ばれ、その病院で日本語が通じたらどんなにか心強く思うことでありましょう。ですから、逆も同じであります。日本の高水準な医療を海外の方にもぜひ知っていただきたいと願います。
 そこで、どのようにして多言語による診療体制を整備していくのか、取り組みの方向性について伺います。

中野経営企画部長
ただいまのお話にありましたように、外国人患者にとりまして、病院を訪れた際に言葉が通じるということは大きな安心感につながるものと考えております。
 このため、英語を初めとします外国語でのコミュニケーションが可能となりますよう、職員の語学力を高める取り組みを進めております。ことし八月から順次、広尾病院、墨東病院、多摩総合医療センターにおきまして、看護師などの医療系職員を対象に、語学リーダー養成コースとして英語の研修を開始いたしました。来年度からは都立八病院で語学研修を実施し、病院の各部門において、語学リーダーとして外国人患者とのコミュニケーションを推進する職員を育成してまいります。
 また、診療に当たりまして必要となる問診票なども英語版を用意したり、多言語の対応ができる翻訳ツールを導入することも検討しております。
 さらに、院内の案内表示につきましても見直しを行い、必要に応じ、英語以外の表示やピクトグラムの表記を使用してまいります。
 加えまして、さまざまな文化、宗教的背景を理解することも重要でございますので、今年度から、異文化への理解を深める研修も実施してまいります。
 こうした多角的な取り組みによりまして、外国人患者の療養環境の向上を図ってまいります。

山加朱美
 言葉、そして異文化への理解の両面から、外国人患者をサポートする取り組みがしっかりとなされることを期待いたします。
 さて、都立病院の中で最も多く外国人が訪れているのは都立広尾病院だと聞いております。オリンピック・パラリンピック開催時には、オリンピックファミリー、そして観光客への医療提供体制の中で、都立広尾病院はさらに大きな役割を担うことになると思います。また、都立広尾病院は基幹災害拠点病院として都の災害医療の牽引役でもあり、また、東京ERとして救急医療を担う、都民にとっては大事な大事な病院であります。
 昨年十二月、前の厚生委員会で広尾病院の視察を行いました。遠藤委員長もそのとき参加をされております。私も参加をいたしております。ヘリポート、災害時の医療対策施設、レドマスやERを見せていただきました。
 この広尾病院は、昭和五十五年の改築以来、病棟の改修、そして別館の増築などを繰り返し、これまで必要に応じて施設機能の拡充が図られてきたと、そのとき伺っております。広尾病院が持つ重要な医療機能と役割に比べて、視察をさせていただいたときに、余りの施設の老朽化が否めなかった。これは、視察に参加をした者の感想でありました。もちろん広尾だけでなく、大塚病院、神経病院にも同様のことがいえると思います。
 都民の安全・安心を支える医療の充実、これは都民の願いであり、厚生委員会理事としての私の願いでもあります。今後、都立広尾病院を初めとした都立病院が、その基本的役割とする救急医療、災害医療などの行政的医療を適切に提供するために、そして世界で一番の都市東京にふさわしい医療の姿を示すためには、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックを目標に、場合によっては老朽化したこの都立病院、建てかえや改築などの抜本的な対策を考えなければならない時期に来ているのではないかと思います。きょう、あしたでできることではありません。十年先のことをしっかり考え、その間の社会の情勢の変化も考えていかなければなりません。
 また、二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピックが確実に来るわけであります。都民の命だけでなく、この二〇二〇年には、五十年前に私たちが迎えた東京オリンピック、この想像を超えた人々が東京に押し寄せてくるでありましょう。どうかしっかりと、都民のみならず、そして、海外、世界の人の命をしっかりと守れるように策を講じていただきたいと思います。  そんなことも含めまして、最後に、今後の都立病院の運営に当たっての本部長の強い決意を伺って、私の質問を終わります。

醍醐病院経営本部長
理事が冒頭におっしゃられたとおり、都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を適正に都民に提供し、他の医療機関等との密接な連携を通じて良質な医療サービスを提供することを基本的役割としております。
 現在、国におきましては、団塊の世代が後期高齢者となる二〇二五年を見据え、患者ニーズに応じた病院病床機能の役割分担や、医療と介護の連携強化など、持続可能な社会保障制度の確立に向けて、これまでにない制度改正が行われようとしております。
 さらに、これもお話ございました二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催を六年後に控えまして、国際都市東京として、都民のみならず海外から東京を訪れる方々に対しても、安全・安心の医療を提供するという役割も生じております。
 こうした医療を取り巻く大きな環境の変化に、都立病院としてこれからも適切に対応していくためには、ソフト、ハード、この両面から、これまで以上に医療機能を高める取り組みを進めていくことが必要であると認識をしておるところでございます。
 今後とも、都立病院の医療機能を最大限活用し、都民の皆様に信頼される医療を提供するよう、全力で取り組んでまいります。

出典:厚生委員会速記録第十四号 https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2014-14.html

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