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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2006年12月12日 平成18年厚生委員会・文教委員会連合審査会速記録第1号

山加委員
  都議会では初めての文教委員会・厚生委員会の連合審査会であります。我が党は、与えられた時間の中でむだのない的確な質疑をさせていただきたいと思います。
 本定例会に提案をされました東京都認定こども園の認定基準に関する条例案は、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律が施行されたことに伴い、都における認定こども園の認定の基準に係る規定を設けるものであります。
 私からは、この認定こども園制度について総論的にお尋ねするとともに、主に保育施設側からの視点に立って質問をさせていただきます。
 まず初めにお尋ねをいたします。就学前における教育、保育等の一体化の考え方については、本会議代表質問、一般質問でも活発な議論がされましたが、改めて、この法律が制定されることになった背景について伺います。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  この法律が制定された背景といたしましては、急速な少子化の進行や社会経済状況の著しい変化などにより、就学前の子どもに関する教育、保育のニーズが多様化し、これまでの制度だけでは対応できない状況が顕在化していることが挙げられます。
 具体的には、まず一つ目といたしまして、親の就労の有無にかかわらず利用できる施設が求められていること、二つ目といたしまして、核家族化の進行や地域の子育て力の低下などにより、家庭で子どもを育てている者への支援が必要であること、三つ目といたしまして、以前に比べ子どもや兄弟の数が減少する中、健やかな成長にとって大切な集団活動や、年齢の異なる子どもが相互に交流する機会が不足していることなどでございます。

山加委員
  ただいまご答弁をいただきましたように、就学前の教育、保育などのニーズが最近では非常に多様化していることを私も実感いたしております。女性の社会参加が進むにつれて、働く女性の数も一貫してふえるとともに、その就業形態も多種多様にわたっております。また、最近の調査では、共働きの家庭の母親に比べて、在宅で子育てをしている、いわゆる専業主婦の母親の方が子育ての負担感が大きいという結果も出されております。こうした状況の変化に適切に対応できる仕組みづくりが現在求められていると思います。
 我が都議会自由民主党では、この審議に先立ちまして、文教委員、厚生委員を中心とした約二十名で、先月の十六日ですが、昨年度国が幼保一元化モデル事業を実施いたしました都内二カ所の施設を視察してまいりました。
 一つは新宿区内の社会福祉法人が運営する認可保育所、もう一つは品川区立の幼保一体化施設であります。それぞれの施設長さんから、教育、保育一元化のカリキュラム、そしてまた子育て支援の取り組み事例を、大変具体的でかつ熱心な説明を受けてまいりました。大変有意義な訪問となりました。
 そこでお尋ねいたしますが、都ではこのモデル事業の実施をどのように評価し、また、この成果を今回の認定基準にどのように反映をさせているのでしょうか。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  昨年度国がモデル事業を実施いたしました都内二カ所の施設は、施設の定員や開所時間、また保護者の就労形態などが異なっておりますが、それぞれ所在する地域の教育、保育ニーズなどに応じた取り組みを意欲的に行っていただきました。
 都に事業報告のあった中から重立った課題を挙げますと、一つ目といたしまして、従事する職員が教育、保育のみならず医療や保健、臨床心理、栄養管理なども含めた総合的な視野を持つ必要があること、二つ目といたしまして、地域の子育て家庭への支援の取り組みをより具体的、複合的に実施し、関係機関との連携も密接に行っていく必要があること、三つ目といたしまして、保護者との連携を一層密にするとともに、小学校教育への円滑な接続に努めていく必要があることなどでございます。
 都では、こうした取り組み成果も踏まえまして、認定こども園が地域の多様なニーズに柔軟に対応することが可能となるように、独自の認定基準を策定したところでございます。

山加委員
  今のご答弁を伺いまして、都として、このモデル事業の成果を詳細に分析されていて、また認定基準を設定されようとしていることがよくわかりました。
 それでは、都独自の認定基準の具体的な例を幾つか挙げてお示しいただきたいと思います。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  認定こども園の認定基準につきましては、国が示しました施設の設備及び運営に関する指針を参酌いたしまして都道府県が定めるものでございます。
 都における認定基準は、これまで認可幼稚園、認可保育所、認証保育所で培ってきました教育、保育の実績を生かし、またモデル事業の成果も踏まえ、大都市東京の多様なニーズに的確に対応し、在宅の家庭も含めたすべての子育て家庭への支援が可能となるように設定いたしました。
 独自の基準の具体例といたしましては、まず幼稚園教諭、保育士資格以外の有益な資格を持つ人材などの活用を可能としていること、二つ目といたしまして、ゼロ歳、一歳の児童の年度途中に定員を超えて受け入れる場合の面積基準を、認証保育所の実績も踏まえ弾力化していること、三つ目といたしまして、子育て支援事業を地域の実情に応じて複数実施すること、四つ目といたしまして、認定こども園が行う情報開示項目を具体的に明示していること、例えば財務状況ですとか職員の配置、定員の空き状況などでございます。これらでございまして、国の指針を緩和したものもあれば、より厳格に規定したものもございます。

山加委員
  具体的なご説明をいただきまして、さらによくわかりました。
 次に、関係団体などからの意見について伺います。
 この制度に対しては、これまで幼稚園、保育所関係者それぞれから多くの意見、要望などが寄せられていると聞いております。委員会資料にも重立った意見が記載してありますけれども、例えば職員資格の区分を見ますと、幼稚園教諭免許と保育士資格両方を必要とすべきという意見がある一方で、どちらかでよいとする意見もあり、立場の違いからさまざまな意見が出ていることがうかがえます。
 私は、都が独自の基準を定めるに当たっては、既存の制度の枠組みにとらわれることなく、現在の社会情勢や大都市東京の特性、これまでの教育、保育の実績などを十分踏まえたものとすることが基本と考えます。
 認定こども園の施設類型や運営主体については、先日の厚生委員会における請願審査でも同様の質疑がありましたが、施設類型を認可幼稚園、そして認可保育所に限った幼保連携型だけにするとか、設置主体を公益法人に限定するべきという意見には私は賛成できません。こうした主張を相変わらず繰り返している会派もあるようですが、どうして柔軟な発想ができないのかなと不思議でなりません。
 認定こども園の施設類型及び運営主体に対する都の基本認識を再度確認しておきたいと思います。ご所見をお聞かせください。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  就学前の子どもに対する地域の多様な教育、保育ニーズに適切に対応していくためには、多様な形態によるサービス提供が不可欠であり、認定こども園の類型を認可幼稚園と認可保育所が連携した幼保連携型に限定する必要はないと考えております。
 また、現在の認可保育所の設置主体は、区市町村、社会福祉法人に限らず、株式会社、NPOなどどのような主体であっても設置、運営することが可能となっております。したがって、認定こども園の設置主体につきましても限定する必要はないと考えております。

山加委員
  認定こども園には四つの類型があるという説明を今までも何度かお聞きしております。また、類型の中にさらに区分があるものもあり、認定基準も類型、区分により少しずつ異なっているとのことであります。しかし、正直いってわかりにくいというのが私の実感であります。ですから、都民の方々も同じような意見を、よく私は耳にいたします。そこで、なぜこのような四つの類型となっているのか伺います。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  就学前の子どもに対して求められている機能は、大別いたしますと二点ございます。一点目は、保護者の就労の有無にかかわらず就学前の教育、保育を一体的に提供する機能であり、もう一点は、子育て相談、一時保育など地域の子育てを支援する機能でございます。
 認定こども園制度はこの二つの機能に着目し、現行の認可幼稚園、認可保育所、認可外保育施設それぞれを基盤として有効活用し、利用者の多様なニーズにこたえることを目的として創設されたものでございまして、既存の制度自体は変更しておりません。このため、認可幼稚園を主体とした幼稚園型、認可保育所を主体とした保育所型、認可幼稚園と認可保育所が連携した幼保連携型及び認可外保育施設を主体とした地方裁量型の四つに分類されたものでございます。
 お話のように、利用者、都民にとってはわかりづらい点があるのは確かでございます。都では関係者などに対し丁寧な説明を行ってまいります。

山加委員
  今後とも、幼稚園、保育所関係者それぞれに説明をする機会があると思いますので、ぜひともこの認定基準などに誤解を生じないよう努めていただきたいと要望いたします。
 さて、この認定こども園制度の仕組みの中には、これまで都が取り組んできた保育所制度改革の成果が取り入れられていると私は受けとめておりますが、これに対する都の評価をお聞かせください。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  都ではこれまで、利用者本位の保育サービスの実現に向け、独自の認証保育所制度を創設し、現行の保育所制度の抜本的改革に向けて国に対しても積極的に提案要求してまいりました。
 認定こども園制度では、就労の有無にかかわらず利用できること、施設と利用者との直接契約の導入など、認証保育所で実践してきた内容を国が受け入れたものとして一定の評価をしております。しかしながら、国の財政措置は、既存の認可部分に限られるなど不十分な点もあるため、都独自の財政支援を行う予定でございます。
 今後とも、利用者本位の保育サービス提供の実現に向けて努力してまいります。

山加委員
  都がこれまで取り組んできた保育所制度改革については、高く評価をいたします。また、国に対しては引き続き積極的な働きかけを行っていただきたいと思います。
 ところで、ご説明いただいた四つの類型のうち、地方裁量型は、文字どおりそれぞれの地域の実情に応じた認定基準を定めるという趣旨だと理解しておりますが、都の認定基準を今回定めるに当たっての基本的な考え方についてお伺いいたします。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  認定こども園で実施する就学前の子どもに対する教育、保育を一体化したサービスは、当然のことながら、子どもたちが健やかに育つよう良質な環境のもとで実施される必要があります。このため、地方裁量型の認定基準につきましては、都が独自に創設しました認証保育所の基準を基本として実施することを考えております。

山加委員
  認証保育所は、平成十三年度の制度創設以来、設置が飛躍的に進み、この十二月で施設数が三百四十九カ所、利用定員は一万人を超えていると伺っております。都民からこれだけ広く支持を得ている認証保育所の考え方を地方裁量型に取り入れることは、私は異論のないことだと思います。
 確認のためにお伺いいたしますが、今ご答弁のありました認証保育所の基準を基本とするという考え方は、既存の認証保育所だけでなく、新たに認証保育所の基準を満たせば実施できるということでよろしいのでしょうか。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  地方裁量型につきましては、良質なサービスを行っている認可外の施設にありまして、都が定める認定基準を満たせば認定こども園となれるものと考えております。

山加委員
  就学前の子どもの教育、保育ニーズに的確に対応するため、多様な事業者の参入を促すことは必要だと思います。しかしながら、認定こども園では、子どもたちにとってよりよい環境の中で適切なサービスが提供されることが望ましい姿です。いうまでもないと思います。
 地方裁量型にあっては、今ご答弁がありましたように、認可外の施設にあって良質なサービスを行っている事業者が積極的に参加、参入できるものとする一方で、営利目的で劣悪な環境で運営しているベビーホテルなどは当然排除されなければなりません。その意味でも、地方裁量型においては認証保育所の基準を基本とするのが適切だと考えます。
 先ほどのお話にもありましたように、認定こども園制度が就労の有無にかかわらず利用可能であることや、利用者と施設との直接契約となることなど、都が主張してきた内容が取り入れられることは是とするものであります。
 ところが、一方で既存の制度はそのままとなっているために、認定こども園の実施に当たっては、既存制度との整合性を十分に整理しておく必要があると考えます。特に、保育に欠ける児童、欠けない児童という要件は、認定こども園においてもそのままとなっていますが、同じ保育に欠ける児童が認定こども園を利用したため、認可保育所を利用した場合と比べて不利益をこうむるようなことは絶対に避けなければなりません。この点について都としての考えをお聞かせ願いたいと思います。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  認定こども園制度では、保護者の就労の有無にかかわらず施設と利用者とが直接利用契約を結ぶこととなります。このうち、認定こども園である認可保育所への申し込みがあった場合は、施設から区市町村に連絡し、区市町村が保育に欠ける子どもに該当するか否かを施設に通知し、保育に欠けると認めた場合には、例えば伝染性疾患など正当な理由がない限り、その入所を拒むことはできない仕組みとしております。また、利用希望者が多い場合の入所児童の選考については、母子家庭や虐待を受けた児童など特別の支援を要する家庭に配慮することや、あらかじめ公表した公正な方法で選考することを義務づけております。
 都では今後とも、保育の実施主体である区市町村が認定こども園に対しても適切に対応するよう働きかけてまいります。

山加委員
  ただいまの答弁を聞いて大変安心いたしましたが、今後とも利用者からの視点を基本といたしまして、この制度の仕組みを整えていただきたいと思います。
 また、都民の皆さんに認定こども園を安心、納得して利用していただくため、入所申込手続や保育料の設定方法など、この制度の仕組みをPRしていくべきと考えますが、ご所見を伺います。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  認定こども園は、地域の多様な教育、保育ニーズに柔軟に対応し、地域の子育て支援事業にも積極的に取り組むことが期待されております。このため都では、「広報東京都」を初め都のホームページなどさまざまな機会を通じて、お話にありました入所手続なども含め、できるだけわかりやすいような形で都民、区市町村、教育や保育関係者などへ積極的に情報発信をしてまいります。

山加委員
  ぜひとも積極的な広報、PRを行っていただきたいと思います。
 また、事業者に対しては、認定基準の確認や実際の申請手続などが円滑に行われることが求められます。ところが、関係する都の組織を見ましても、福祉保健局、生活文化局、教育庁とに分かれております。認定審査に当たっては、事業者に対して適切な説明が行える体制を整えるとともに、できるだけこの申請窓口を一本化するなど、事務の簡素合理化を図るべきと考えますが、ご所見を伺います。

都留福祉保健局少子社会対策部長
  お話のとおり、都におきまして、私立幼稚園は生活文化局、公立幼稚園は教育庁、保育施設については福祉保健局がそれぞれ所管しておりまして、認定こども園はこれら三局に関係する制度でございます。この制度の円滑な実施を図るためには、都と区市町村それぞれにおいて、四つの類型にかかわらず、認定こども園に関して一義的に対応する部局を決定することが重要でございます。
 このため都では、子どもや子育てに関する施策を総合的に実施している福祉保健局において認定申請などを一元的に行うことといたしました。また、都民や事業者からの相談や問い合わせには、福祉保健局だけでなくいずれの局においても的確に対応できるよう、相互の連携をこれまで以上に密接に行い、円滑な制度の実施に努めてまいります。
 なお、区市町村に対しても、同様の取り扱いとするよう依頼をいたしております。

山加委員
  都においても、また区市町村においても、この制度の円滑な実施に向けて関係する部署の連携強化をぜひとも図っていただきたいと思います。
 認定こども園制度の実施に当たりまして、都において主体的に対応していただくことになる福祉保健局長のご所見を伺いたいと思います。

山内福祉保健局長
認定こども園制度は、就業形態の多様化、核家族化の進展、地域の子育て力の低下等に伴いまして、就学前の子どもに関する教育、保育ニーズが多様化していることを背景に創設されたものでございます。
 今定例会に提案した認定こども園の認定基準に関する条例は、こうした社会構造の変化や大都市東京の特性など、これまでの都における教育、保育の実績などを踏まえまして、就学前の子どもや子育て家庭に対するさまざまなニーズに柔軟かつ的確にこたえられる基準を盛り込んでいるものと考えております。
 子どもと子育て家庭を総合的、一体的に支える新たな仕組みであるこの制度の実施に当たりましては、関係局の連携を強化し、先ほど部長が申し上げたとおり、福祉保健局がまず一元的な対応を図ることといたしたところでございます。
 今後とも、区市町村と緊密に連携を図りまして、認定こども園が都民ニーズにより的確に対応し、地域に密着したものとなるよう、本制度の推進に努めてまいります。

山加委員
  次に、先ほどお話のありました幼保一元化モデル事業の実施報告にもありましたとおり、就学前から小学校教育への円滑な接続という観点も重要なことだと思っております。
 最後に、都の教育を所管する立場から、認定こども園制度の実施について教育長のご所見を伺います。

中村教育長
幼児期におきます教育は、生涯にわたります人間形成の基礎を培うものでございまして、平成十六年四月に都教育委員会が定めました東京都教育ビジョンにおきましても、幼稚園、保育所の制度を超えた取り組みの重要性を指摘しているところでございます。
 認定こども園制度につきましては、このような東京都教育委員会の就学前教育の考え方と軌を一にするものというふうに考えております。この制度の実施を契機といたしまして、幼稚園と保育所関係者の意見交換あるいは相互交流がさらに進められ、それぞれが積み上げてきました経験の共有が促進されることによりまして、幼児教育、保育の機能の一層の強化が図られるというふうに考えております。
 このことからも、認定こども園におきましては、地域の実情に応じまして本制度の活用が進められますよう、区市町村教育委員会に対しまして、認定こども園制度の趣旨、内容を十分に周知してまいります。
 都教育委員会といたしましては、ご指摘のございました小学校教育との円滑な接続の課題に取り組むとともに、今後、認定こども園も含めまして、幼稚園教育要領に基づきます幼児教育の指導の充実を図ってまいります。

山加委員
  福祉保健局長、そして教育長、お二人から大変力強いお言葉をいただきました。我が都議会自由民主党も、就学前の子どもの教育、保育が、認定こども園の実施に伴ってますます充実していくことを期待いたしております。
 提案されました条例案に賛意を示し、与えられた時間内での私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

出典:厚生委員会・文教委員会連合審査会速記録第一号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/union-exam/2006-01.html

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