議会質疑
PARLIAMENTARY QUESTION
厚生委員会
2003年11月20日 平成15年厚生委員会第18号
山加朱美
私からは、都立病院における危機管理対策について数点お伺いいたします。
危機管理という言葉を考える場合、現在の社会状況を考慮すると、これまでの地震、台風などの自然災害への対応だけでなく、今まで考えることも想像することもできなかった、例えばテロや核物質、生物剤、化学剤などによるいわゆるNBC災害などの人為的災害などへの対応が求められております。
こうした危機管理への対応は、一千二百万の人々が生活し、日々さまざまな政治経済活動が行われている首都東京においては、何よりもまず、万全な体制を構築しておかなければならないと考えるのは当然のことであります。
また、東京のような大都市は、多様な危機が発生するリスクを常に抱えているわけですから、こうした災害から都民の命、身体、財産を守り、あわせて首都機能を保全するためには、災害の発生に際し、これまで以上に迅速かつ的確に対処できる危機管理体制の構築が必要であることは、いうまでもないことであります。
このため、都においては、こうした自然災害やNBC災害などの危機に際して、指揮命令を混乱することなく行うために、危機管理監のポストを新設するとともに、情報機能を強化した総合防災部を発足させたことは、都民として大変心強いことと思います。
このことは、医療の分野においても例外ではありません。発災時の迅速な医療救護活動や、負傷者に対する適切な治療など、都立病院の果たすべき役割は極めて重要であります。
こうした考えに基づき、病院経営本部は、都立だからこそできる災害医療を行政的医療と位置づけ、都立病院が取り組むべき医療課題とするとともに、本年一月に策定した都立病院改革実行プログラムの中でも、都立病院における危機管理体制の充実を最重点課題の一つとしております。
そこで伺いますが、まず、災害発生時の都立病院の役割、現在の都立病院における災害時の医療提供体制がどのようになっているのか、お願いいたします。
押元経営企画部長
都立病院は、東京都の災害時の医療提供体制の中で、災害拠点病院に指定されるなど、中心的な役割を担っております。
災害などが発生した場合、都立病院の中で災害拠点病院として九病院が指定されておりますが、この九病院を中心といたしまして、負傷者を受け入れ、治療を行いますとともに、都知事の要請によりまして、医療救護班を現場の方に派遣をするという役割も担っているところでございます。
また、生物剤、化学剤あるいは核物質といったようなものを原因といたします災害にも対応できますよう、平成十三年度には、広尾、墨東、府中の各病院に、こういった生物剤、化学剤、核物質などを洗い落とすためのテント、除染テントというふうにいっておりますけれども、これを装備いたしますとともに、防護服などを配備しております。
このように、各病院におきまして、職員に対しての訓練もあわせて実施をいたしますなど、救急災害に対しまして体制を整えているところでございます。
山加朱美
発災時の都立病院の役割、現在の体制が整っているということはわかりました。
ところで、平成十三年十二月、都立病院改革マスタープラン、そして本年一月の都立病院改革実行プログラムにおいては、広尾病院を救急災害医療センターとして位置づけていますけれども、この広尾病院を救急災害医療センターとして位置づけたのはどのような理由からでしょうか。
押元経営企画部長
都立病院の医療機能を集約化していくのに当たりまして、各病院の役割を検討していきます中で、広尾病院につきましては、国の方から災害医療に関する基幹施設となる基幹災害医療センターとしての指定を受けていたこと、また、東京ER広尾や、あるいは救命救急センターの機能を備えておりまして、初期から三次に至ります救急医療の技術、情報などを豊富に保有しておりまして、重症あるいは重篤な患者さんに対しても対応が可能であったことなどから、こういった機能を十分に活用し、救急災害医療センターとしての役割を果たしていくこととしたものでございます。
山加朱美
現在保有する機能を活用といっても、さらにパーフェクトな救急災害医療センターとしていくためには、今後さらに機能を追加するというか、持たせていかなければならないと思います。
そこで、広尾病院は救急災害医療センターとして今後どのような機能を持つのか、伺います。
押元経営企画部長
広尾病院につきまして、救急災害医療センターといたしまして、都立病院の医療危機管理体制の一つのモデルとなるように整備をしていく考えでございます。また、国が指定をしております基幹災害医療センターとしての役割を担うために、さらに必要な体制づくりを進めてまいります。
具体的に申し上げますと、防災倉庫や研修施設などを備えました救急災害対策用施設の整備、また全都立病院の職員に対します研修あるいは訓練の実施、また、常時、医療救護班を編成しておきまして、災害が発生したときに直ちに対応できるような態勢を確保すること、また、生物剤、化学剤あるいは核物質などによる災害を含めました災害マニュアルの作成を行いまして、蓄積をいたしました情報あるいは技術を他の都立病院に普及、伝達していく役割、こういった機能を広尾病院に備えさせていこうというふうに考えております。
山加朱美
具体的な施設整備は何を行うのでしょうか。
押元経営企画部長
今年度末を目途にいたしまして現在整備を進めているところでございますが、救急災害対策用の施設といたしまして、職務住宅や防災倉庫、さらには、平時は研修施設として活用し、災害が発生した場合には直ちに臨時病室に転用ができるような施設などを整備中でございます。
防災倉庫の完成に合わせまして、災害時の簡易ベッドですとか、あるいは医療用の資材、器材なども整備拡充していくつもりでございます。
山加朱美
施設整備が整いましても、いざ災害が発生した場合は、同時に多くの被災者が来院すると思います。
当然のことながら、医療救護活動にも多くのスタッフが必要となりますけれども、救急災害医療センターとして、災害時に活動できるスタッフの育成は大変重要なことと思います。
これをどのように確保、養成していくのでしょうか。
押元経営企画部長
災害時に看護活動のリーダーとして中心的な役割を果たします看護師を養成いたしますために、災害エキスパートナースという制度を今年度から立ち上げたところでございます。
また、今後、新たに整備いたします救急災害対策用の施設におきまして、これは先ほども申し上げた、今年度末を目途に整備しているものでございますけれども、災害エキスパートナースなどの専門スタッフを教育訓練してまいりたいというふうに考えております。
山加朱美
次に、都立病院改革実行プログラムで、広尾病院を救急災害医療センターとして位置づけているわけですが、局所的な災害によって広尾病院の機能が停止する場合も考えられます。
また、災害の規模や種類によっては、広尾病院のみで対応することが困難な場合もあるのではないかと思います。
そうなったときの代替ですけれども、都立病院改革実行プログラムでは、墨東と府中病院に救急災害医療センターとしての代替機能を確保するとありますが、両病院をどのように位置づけをするのか、またどのような機能を持たせるのか、伺います。
押元経営企画部長
山加副委員長のご指摘のとおり、局所的な災害などによりまして、広尾病院の機能が停止する場合も想定されるわけでございますが、その場合には、広域基幹病院でございます墨東、府中の両病院に代替機能を担わせることとしております。
その機能といたしまして、災害の発生した場合に、患者さんの受け入れ態勢の整備、それから、医療救護班を編成いたしまして、直ちに災害現場等へ出動ができるように即応態勢を組むこと。
また、平時には、総合的かつ実践的な職員に対する教育訓練の実施、また生物剤、化学剤、核物質などによります災害への対応訓練の実施、これに加えまして、必要な資材、器材の整備などを実施してまいります。
山加朱美
墨東、府中病院に、災害発生時における広尾病院の代替機能を持たせるという考えは理解できます。
しかし、東京という大変広域的な地域を考える場合、当然、ほかの都立病院が災害時に手をこまねいているということは許されないことであります。
広尾病院、墨東病院、府中病院の連携だけにとどまらず、それ以外の都立病院との連携も当然必要ですし、これは発災時のみならずに、平時から緊密な連携を図っていくことが重要であると思います。
実行プログラムにもありますとおり、都立病院全体として危機管理に関するネットワークを構築していくことが必要と考えます。
具体的には今後どのような体制を構築していくのか、伺います。
押元経営企画部長
都立病院の危機管理のネットワークでございますけれども、広尾病院を災害医療体制の中核となる施設として位置づけまして、広尾病院の蓄積いたしました情報あるいは技術、そういったものを都立病院全体で共有化してまいります。
すべての都立病院におきまして、スタッフに対する教育訓練の実施、発災時におきます医療救護班の編成などの即応態勢の確保、またNBC災害なども含めた各種災害の対策用のマニュアルの周知徹底、また後方へ患者さん、負傷者を運びますための後方搬送手法、とりわけてヘリポートの活用策の検討などを実施することによりまして、各都立病院間の連携を確保いたしまして、災害が発生したときに円滑に活動ができるように、危機管理ネットワークを構築してまいりたいと思っております。
山加朱美
私が冒頭申し上げましたとおりに、今後、危機管理体制の構築というのは、自然災害の対応のみにとどまりません。
その意味では、本年の春に諸外国で発生した新型肺炎SARSを例に挙げれば、都は、保健所、都立病院ほかの医療機関、健康安全研究センター、東京消防庁などが緊密な連携を図り、SARSの疑い例や可能性例のある患者に対応し、東京SARS診療ネットワークを構築し、適切な対応を図ったことは、大変高く評価できることであります。
改めて伺いますが、東京SARS診療ネットワークの中で、都立病院はどのような役割を担ったのでしょうか。
押元経営企画部長
東京SARS診療ネットワークでございますけれども、都立病院といたしましては、第一種の感染症指定医療機関でございます荏原、墨東の二病院を中心にいたしまして、第二種感染症指定病院でございます駒込病院、豊島病院を加えました四病院で、SARSの疑い例患者あるいは可能性例患者などにつきまして、診断と治療を行ったところでございます。
また、これらの四つの総合病院につきましては、SARS医療の協力医療機関といたしまして、疑い例患者の外来診療を行うなど、東京SARS診療ネットワークにおいて、都立病院は中核的な役割を果たしているものと認識しております。
山加朱美
SARSについては、この冬に再流行することも懸念されています。
また、インフルエンザの流行と重なった場合には、症状が大変似ていることから、患者が殺到することも危惧をされております。
まさに局の垣根を超えて、都としてさまざまな対策を講じているようですが、確認の意味で、冬季の発生が懸念されている中で、都立病院の体制というのは大丈夫なのでしょうか。
押元経営企画部長
SARSにつきましては、インフルエンザと大変症状が似ておりますために、冬季に発生した場合には、先ほどお話のございました東京SARS診療ネットワークで、保健所や地域の医療機関、あるいはSARS協力医療機関が適切に患者の振り分けをしていくことが必要であると考えております。
また、都民に対する適切な情報提供などを通じまして、社会的に生じる不安を解消していくことが極めて大切なことと考えております。
しかし、擬似症患者あるいは真性患者が発生し、その後、患者が次第に増加していくといったような状況が現出した場合には、SARS患者の治療に当たることができますのは、都立病院を中心とする感染症指定医療機関でございます。
中でも、都立病院が都民にとっての、いわば最後のよりどころになろうかと考えております。
したがいまして、私ども病院経営本部といたしましては、東京SARS診療ネットワークを有効に活用しながら、感染症指定医療機関であります都立四病院を中心といたしまして、その他の都立病院、SARS協力医療機関などと密接な連携を図りまして、患者さんの受け入れに万全を期していく覚悟でございます。
山加朱美
SARS対策の例でも明らかでありますけれども、東京の医療危機管理体制は都立病院のみで構築できるものではありません。災害時においても、国立病院東京災害医療センター、また民間の医療機関などとの連携のもとで、都としての医療危機管理ネットワークを力強く構築していくことが、都民の安全と安心につながるものと考えます。
このため、日ごろから、早急に都として医療危機管理ネットワークの構築が必要であり、都立病院はその中心的役割を果たすべきと考えますが、病院経営本部長の見解を伺います。
押元経営企画部長
都立病院におきます危機管理体制の充実強化、これ自体が私の仕事として非常に重大な仕事だというふうに、私、受けとめてございます。
この危機管理体制でございますが、都立病院の日ごろの運営におきまして、私、常に思っておりますのは、何よりも地域の医療機関との十分な連携が極めて大事であるというふうに認識しておるわけでございますが、このことは、今お話の医療危機管理体制といいますか、この面では特に決定的に重要ではないかなというふうに考えております。
都民の生命が脅かされます災害時、あるいは事件とか事故、こういうものの発生時におきましては、都立病院だけでは担い切れるものではございません。
平時から、今お話し申し上げましたように、地域の医療機関や他の災害拠点病院などとの協力支援体制の強化が極めて大事かというふうに存じております。
このため、都といたしまして、医療危機管理ネットワークの構築に向けまして、関係機関と引き続き協議を行うとともに、国の基幹災害医療センターであります国立病院東京災害医療センター、立川でございますが、これとの間におきまして、相互訓練を実施するなど、連携強化を図っておるところでございます。
都立病院でございますが、私も、副委員長おっしゃるとおり、これらのいろいろな事態におきます医療提供体制の中で中心的役割を果たすべきものというふうに考えてございます。
先ほど来からお話にございました広尾病院を旗振り役としまして、都立病院全体としまして、この管理体制の強化に万全を期してまいりたい、かように考えてございます。
山加朱美
本部長から大変力強い答弁をいただきましたけれども、SARSの発生など新たな感染症の発生、地下鉄サリン事件や東海村放射能漏れ事故、また目を海外に向ければ、アメリカの同時多発テロ、韓国の地下鉄列車火災事故など、災害に対する備えは一刻の猶予も許されません。
災害発生後、できるだけ多くの被災者を救うためには、病院経営本部や総合防災部、健康局等、局の垣根を超え、関係機関が一体となって、早急に都としての医療危機管理体制づくりに取り組まれますよう要望して、質問を終わります。
出典:厚生委員会速記録第十八号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2003-18.html
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