議会質疑
PARLIAMENTARY QUESTION
厚生委員会
2006年11月14日 平成18年厚生委員会第16号
山加朱美
ことしの七月の末、ちょうど夏休みが始まってすぐでありますが、埼玉県で、小学二年生の女の子が流れるプールの排水口に吸い込まれて死亡するという大変痛ましい事故が起こりました。
二度と起こってはならない事故であります。
しかし、今回のこの事故、全国各地で過去に何度となく同様の事故が起き、そのたびに管理の不備が指摘されたにもかかわらず、一つ一つの経験がきちんと蓄積されてこなかった結果が招いた悲劇といえるものであります。
この事故を風化させずに、この教訓を今後にどう生かしていくかが、プールの経営者、また管理者を初めとする関係者に厳しく問われているものと考えます。
そこで、プールの安全確保について何点か伺います。
給排水口などのプールの構造上の安全について、公立学校プールは、文部科学省の通知により教育長が、また、スポーツクラブや遊園地などの営業プールは、昭和二十四年、これは全国に先駆けて制定された都条例に基づいて福祉保健局が対策、指導していると聞いております。
そこで、営業プールに対する対応を伺いたいと思いますが、まず、都内に営業プールというのはどのぐらいあるのか伺います。
金丸参事
東京都内の営業プールの施設数は、平成十七年度末で、多摩・島しょ地区が二百五十四施設、特別区が四百九十施設、合計七百四十四施設となっております。
なお、多摩・島しょ地区については都のプール等取締条例によりまして、また、特別区については都条例と同様の条例を各区が定めて指導を行っております。
山加朱美
今伺ったこの施設に対し、都は通常どのような監視指導を行っているのか聞かせてください。
金丸参事
都の条例では、水質等の衛生管理とともに、プールの構造設備や施設の維持管理などにつきまして経営者がとるべき安全対策を規定しておりまして、そうした管理の状況を確認するため、通年プールでは年二回以上、夏季プールでは年一回以上、保健所の環境衛生監視員が定期的に立入検査を実施し、直接指導を行っております。
山加朱美
日常の管理指導について、もう少し具体的に伺いたいと思います。
今回の事故で問題となった排水口及び循環水の取り入れ口についてはどのように指導をしているのでしょうか。
また、給排水口による事故は、吸い込まれることによって起こるものだけではないと思います。私も以前、手術をした後、リハビリでプールを使用いたしまして、大変筋力が弱いときに、吸いついて離れなくて、どうしようと思ったことがあったんです。今プールは、さまざまな高齢者のリハビリ等で使われている場合も多いようですけれども、やはりこのように、そしてまた小さなお子様が排水口に吸いついて亡くなったという事故も過去あったと聞いております。
このような事故を防止するための指導が行われているのかどうか伺います。
金丸参事
排水口及び循環水取り入れ口につきましては、条例で、堅固な金網、鉄格子等を設け、容易に移動できないようにするとともに、常に正常な位置にあることを確認するよう義務づけております。
また、水泳者が吸いつけられるおそれのあるものにつきましては、施設の構造に応じまして、排水及び循環水の系統をそれぞれ二つ以上に分けることや、吸い込みの圧力を逃がす弁を配管途中に設置すること、あるいは循環水取り入れ口の金網、鉄格子等を凸面型にするといった吸いつき防止措置を適切に講ずるよう基準を設けて指導しているところでございます。
山加朱美
日常の監視指導の内容についてはよくわかりました。
次に、緊急対応として、今回の事故を受けて実際どのような対応が行われたのか伺います。
金丸参事
都では、事故後直ちに、今回問題となりました流水プール十三施設に対して緊急的に立入検査を行い、引き続いて他の営業プールについても同様の措置をとりました。その結果、すべての営業プールで、排水口及び循環水取り入れ口のふたが、ねじ、ボルト等で固定されており、安全であることを確認しました。
また、教育庁など庁内関係局との連絡会の設置や、特別区の保健所との緊密な情報交換等によりまして、関係部署間の情報の共有化と、連携した対応を図りました。
山加朱美
営業プールの安全確保について、今のご答弁で、都ではきちんとした対応がとられているということがよくわかりました。
しかしながら、すべての施設について定期的に直接出向いて状況確認を行って、問題がある場合はその場で指導を行うという、このような保健所の環境衛生監視員の日々の取り組みが、営業プールの安全を担保し、利用者の安全につながる重要な要素になっているということはいうまでもないと思います。
ところで、国は七月の末のこの事故を受けて、八月に関係省庁が共同で緊急アピールを出したようですけれども、今後の国の動きがどうなっているのか、わかる範囲で結構です。お願いいたします。
金丸参事
国はこれまで、省庁ごとに安全面も含めたプールの管理基準を定めまして、おのおの関係機関に通知してまいりましたが、今回の事故を受け、関係省庁による連絡会議を設置しております。
そして、十二月を目途に、プールの施設及び管理運営に係る統一的な安全標準指針を作成する予定であると聞いております。
山加朱美
新聞報道等では、プールの設置者、そして管理者に対する国の通知の周知が不十分であったこと、そしてまた通知が一過性のものとなってしまったという問題も指摘されておりました。
安全標準指針を作成しても、それをきちんと伝えるとともに、その実効を確保していく取り組みがなければ、指針もしょせん絵にかいたもちであります。
また、一口にプールといっても、規模、構造設備ともにさまざまでありますから、よりきめ細やかな指導が必要になってくることはいうまでもないことであります。
そこで、都として、今回の事故を受け、今後のプールの安全確保に向けてどのような検討を行っているのか、また、検討に当たっては、構造設備の技術的な進歩や、施設の管理実態を踏まえた管理指導の基準や方法について規定整備を視野に入れることも必要ではないかと考えますけれども、見解を伺います。
金丸参事
現在、都は特別区と検討会を設置いたしまして、専門家から構造設備の安全対策に関する情報収集を行い、施設実態に応じてとり得る具体的な安全策や、より適切な監視指導の方法等について検討を行っているところでございます。
今後出される国の安全標準指針も踏まえまして、プール利用におけます都民の安全・安心確保のため、ご指摘の規定整備も含め必要な対策を講じてまいります。
山加朱美
今後とも、都民が安心してプールを利用できるように、関係部署が連携して、さらなる安全対策の充実を図っていただくことを要望いたします。
次に、ホームレスについて伺います。
ホームレスに係る都民の声、これは平成十六年四月から十七年二月までの統計ですけれども、公園にホームレスがいて子どもを安心して遊ばすことができない、また、隅田川のテラスにホームレスのブルーテントがあり都市景観が損なわれているといった都民の声が多いようであります。
ホームレスというのは、日本だけでなく世界各国にいると思いますが、ブルーテントというのは日本だけと聞いております。外国には大変ホームレスも多いですが、ブルーテントが張られているというところはないようであります。
やはり、公共の空間をどのようにとらえるのか。公共の空間だからみんなのものである、だから自分も使っていいと考えるのか、公共空間だからみんなのものである、だから個人が使用してはならないと考えるのか、その差はあると思うんですけれども、ホームレスの問題の一つは、公園、道路、河川敷の公共空間をホームレスがまさに独占しているために、都民の方々の自由な利用、施設管理の妨げとなり、地域住民の方とあつれきが生じていることであると思います。
また、住居がないことにより健康を害するなど厳しい生活を強いられ、これがやはり行政が取り組まなければならない課題なのかなと思います。
先日、私、隅田川のほとりの高速道路を通りましたときに、数年前と比べてブルーテントの数が激変したことに驚いたんですけれども、最初に、二十三区におけるホームレスの数の推移についてお伺いしたいと思います。
松浦連絡調整担当部長
二十三区におきますホームレス数の推移でございますけれども、東京都は、公園、河川等の各施設管理者により、毎年八月に概数調査を実施しております。
二十三区におきましては、平成九年には三千六百八十二人だったホームレスの数が、平成十年には四千二百九十五人、十一年には五千七百九十八人と増加いたしました。その後、平成十六年まで五千人台で横ばいの状況でございましたが、十七年には四千二百六十三人になり、本年八月には九年ぶりに四千台を下回り、三千六百七十人になったという調査結果になっております。
山加朱美
ホームレスの数が九年ぶりに三千人台に減少したということですが、その要因はどのように分析していらっしゃるのでしょうか。
松浦連絡調整担当部長
ホームレスの数が減少した要因でございますけれども、まず一つは、ホームレスが入所する緊急一時保護センターと自立支援センターの自立支援システムが平成十七年八月に計画どおり十カ所整備されたこと。二つ目は、平成十六年から開始いたしました地域生活移行支援事業によりまして、新宿中央公園など都内の五公園に起居していたホームレス千百九十人が借り上げ住居に移行したこと。
こうした都区共同事業によりますホームレス対策の成果とともに、都内の有効求人倍率が、昨年八月は一・四三でありましたが、十八年八月には一・六二と向上したことなど、雇用情勢が回復したことも一因であるというふうに分析してございます。
山加朱美
まさに東京都が特別区と共同で先駆的に行ってきたホームレス対策の成果が上がってきたといえますけれども、しかし、問題はこれからだと思います。
ホームレス対策の基本は、やはりご本人の自立した生活を回復させ、地域社会の一員として社会復帰させることだと思います。
先ほどの、ホームレス減少の要因の一つ目として答弁のありました自立支援システムのこれまでの成果ですけれども、利用者のうちどのくらいの人が就労自立したのか教えてください。
松浦連絡調整担当部長
自立支援システムでございますけれども、福祉事務所に相談に来ましたホームレスの方を緊急一時保護センターに入所させまして、健康を回復させるとともにアセスメントを行います。
この入所者の半分は、路上生活が三カ月未満の者となっております。その中で、就労意欲があり、かつ心身の状況が就労に支障のない方は自立支援センターに移ることになりますが、そこでの生活支援、就労支援などの結果、平成十二年十一月から十八年八月末まででございますが、三千三百七十五人が就労自立しております。
これは自立支援センターの退所者六千五百九十六人の約五一%に当たります。
山加朱美
今のご答弁によりますと、自立支援システムの利用者は路上生活が比較的短い方が多く、就労支援の結果、約半数の方が就労自立しているのだなという状況がわかりました。
次に、平成十六年から開始した地域生活移行支援事業の方はいかがでしょうか。
公園のブルーテントから借り上げ住居に移った地域生活移行支援利用者で就労した人数が一体どのくらいいるのか、また、どのようにして就労に至ったのか、具体的例があれば教えてください。
松浦連絡調整担当部長
地域生活移行支援事業の利用者の就労でございますけれども、昨年度、民間団体と連携しまして協議会を設置し、民間企業への訪問により獲得した求人のあっせんをしていった結果、平成十八年四月から八月で百二十八人、月平均二十五・六人が就労しております。
その就労の代表的な例を申し上げますと、かつて配達関係の仕事をしていましたが、健康を害したことによって職を失いましてホームレスになった四十代半ばの方でございますけれども、借り上げ住居に入居して健康を回復し、当初は一日二時間の清掃作業からスタートしまして、その後徐々に四、五時間に延長していって働いていたところ、勤務態度が非常にまじめであったということで、その清掃会社のオーナーから正社員にしたいという申し出がございまして、常用雇用になったケースなどがございます。
山加朱美
今ご答弁いただいたケースは、利用者本人と就労支援をした人の相互の努力の成果が報われた、まさに理想的なケースと思います。
すべての人がこうなるといいのですが、やはり借り上げ住居に移った人のホームレスに至った経緯はさまざまであると思いますから、なかなか難しいと思います。
借り上げ住居の利用者の中には、テント生活が長く、これまで日雇いしか経験のない人、また、不定期な仕事しかしていない人がたくさんいらっしゃると思いますが、これらの人にとって、就労自立への道というのはなかなか容易なことではないなと想像されます。
就労による自立を目指すためには、アパート代が、今、平均、安くて例えば四万、五万、六万とすれば、そこで自立するためには、やはり最低十二、三万を超える、しかも継続的な月収が必要になるわけであります。
先ほど答弁にもありましたけれども、有効求人倍率は向上しているということでありますが、しかし、賃金水準は高くはありません。日給八千円としても、月十七日以上働かなければ、月十三万という固定収入には届かないわけでありますから、こういう常用雇用の経験がない人、技能がない人に対する就労支援はどのように行っていくのか、お尋ねをいたします。
松浦連絡調整担当部長
副委員長ご指摘のとおり、地域生活移行支援事業により借り上げ住居に入居した方は、これまで、土木、建築などの日雇いの仕事や、アルミ缶などの廃品回収を仕事とし、一定の収入を得ているものの、家賃の支払いが困難だった人が大半でございます。
就労支援は、NPO法人などに委託して実施しておりますが、家賃が月五万円程度のアパートを借り上げまして、利用者本人からは三千円の家賃で入居してもらい、まず一定の時刻に起き、毎日働くことを習慣づける生活指導から始まりまして、清掃、警備、造園等の臨時就労をあっせんしまして、当面の生活資金を賄っていただきます。
また、就労に向けまして、履歴書の書き方や採用面接の受け方を講義する就労セミナーを開催するとともに、例えばハウスクリーニングの技術などを身につける技能訓練、また、専門カウンセラーによる就業相談などを実施しております。
さらに、必要に応じて採用面接に同行もしております。
こうした取り組みとともに、常用雇用になるために必要な住民票を設定するとともに、支給された給与を計画的に使うために預金通帳をつくってもらい、給与の一部を貯金することなどの指導を行っております。
山加朱美
今、大変きめ細やかな指導が東京都として行われているということ、大変驚いたのですけれども、しかし、就労により自立してもらうことは理想でありますけれども、年齢や健康状況によっては就労が困難な方もいらっしゃると思います。
借り上げ住居利用者の年齢構成、また生活保護受給者の数はどうなのでしょうか。また、年金をもらっている人はいらっしゃるのでしょうか、教えてください。
松浦連絡調整担当部長
地域生活移行支援事業で借り上げ住居に移行した人等の年齢構成でございますけれども、平成十八年八月現在で、四十歳未満が五・二%、四十から四十九歳が一五・九%、五十歳から五十九歳が四三・七%、六十歳以上が三五・三%でありまして、平均年齢は約五十六歳でございます。
また、現在の生活保護受給者でございますけれども、三百七十三人で、全体の三二・三%になっております。
また、年金につきましては、これまで住居不定のため受給できなかったけれども、借り上げ住居に住民票を設定した結果でございますが、年金受給が可能になったという人は六十四人でございます。
山加朱美
住民票を設定することにより年金を受給する。高年齢の方、健康状況が悪化している方はきちんと生活保護を適用する。
そうした上で、就労可能な人は、一人一人の状況に応じた自立支援を行っていくということだと思います。
地域生活移行支援事業、今年度は隅田川流域、それと宮下公園などで行っていると聞いております。これは路上生活者地域別の一覧表、平成十八年八月現在のものですが、墨田区は平成十八年八月、六百三十八名、私の地元練馬区は二十四と、その数はかけ離れているんですけれども、こうしたホームレスがたくさんいる場所とともに、ホームレスが数人しかいないという公園も、都と区の共同事業であるホームレス対策の対象にすべきと考えます。
東京都は、二〇一六年オリンピック開催の国内候補地に決定しました。オリンピック開催に向けてホームレス対策も着実に実施していく必要があると考えますが、所見を伺います。
松浦連絡調整担当部長
ホームレス対策についてでございますけれども、ホームレスの方ご自身の、二度とホームレス状態には戻らないで自立するという強い意思と、それを支援する行政の仕組みがマッチングしまして、継続的に粘り強い支援を行うことによりまして、自立という成果が出るというふうに考えております。
今後とも、自立支援センターや借り上げ住居の利用者に対しまして精力的に就労支援を実施していくとともに、今年度の新規事業でございます巡回相談事業を充実しまして、二十三区の公園や河川等に起居するホームレスを定期的に訪問し、ホームレス対策事業を利用してもらうように勧奨することによりまして、一人でも多くのホームレスの自立を図ってまいります。
山加朱美
ぜひとも継続的に、粘り強い支援を継続していただきたいと思います。
ホームレス問題は、大都市を中心とした全国的な問題であり、社会のセーフティーネットにかかわる問題であります。したがって、ホームレス問題は本来、国に第一義的責任があると考えます。
我が自民党は、都議会自民党ホームレス対策協議会を組織いたしまして、大阪府議会と共同しまして、財政支援など国への要望を積極的に今までも行ってまいりました。
その成果もあり、平成十四年八月、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法が制定されました。十年間の時限立法でありますが、国においては、後半の五年間の施策を策定するために、来年度、基本方針の見直しを行うと聞いております。
それに向けまして、福祉保健局が、都が先駆的に行ってきたホームレス対策、特に就労対策や住宅対策について国が十分な財政措置をとるように、どうか精力的に提案要求していただくことを要望いたしまして、質問を終わります。
ありがとうございます。
出典:厚生委員会速記録第十六号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2006-16.html
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