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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2010年3月18日 平成22年厚生委員会第4号

山加朱美
   私からは、都立病院の看護師に関して何点かお伺いをさせていただきます。
 これまで我が党は、都立病院が都民に期待される役割を果たしていくためには、すぐれた施設整備と、そしてそれ以上に、医師、看護師等の医療人材を質、量ともに確保、育成しなければならない、そんな観点から、医師、看護師の確保、育成についてさまざまな提案をさせていただきました。  中でもとりわけ看護については、私自身、本会議、また、この厚生委員会の場で幾度となく、勤務条件の改善、七対一看護基準の導入、二交代制勤務の拡大、また、採用活動の強化、定着化対策の実施など、具体的な提言を行ってまいりました。
 そして本定例会における我が党の代表質問に対しまして、本部長は、採用活動の強化により、例年の二倍の看護師が確保できるめどが立ったこと、そしてまた、育成対策として、来年度から東京看護アカデミーの運用を開始することを旨とする答弁をされたわけであります。さらに、業務に着手した手当の新設等、勤務条件の改善も行われると聞いております。
 七対一看護基準については、既に三病院が導入をしております。また、二交代制勤務も着実に増加するなど、我が党が提案してきたこの総合的な確保、育成対策が具体的成果として実を結んでいる、このことは大変喜ばしいことと思っております。そしてまた同時に、これまでの病院経営本部のご努力に敬意を表したいと思います。
 とはいえ、全国的な看護師の不足状況は依然として深刻な状況にまだあるわけであります。これが急速に改善することは考えにくいわけでありますが、しかし、来年度もことしの成果を踏まえた看護師確保、そしてまた育成対策を強力に推し進めていく必要があることはいうまでもないことであります。
 そうした中で、来年度の看護師確保に向けて、この確保の土台となるのはやはり採用選考の抜本的な改正だと思いますが、この改正を行うと伺っております。そこで、今回の採用選考改正についてのその主な内容とねらいについて、まずお伺いをさせていただきます。

黒田経営企画部長
 今回の採用選考改正の最大のポイントは試験の簡素化でございます。現在、看護師は医療の高度化、専門化に伴いまして、四年制大学での養成が増加しつつあります。しかし、大学卒程度に対する従来の選考では、小論文と面接に加えまして、教養試験及び専門試験が課されておりまして、受験生に大きな負担感を与え、このことが都立病院が選択されない一因ともなっておりました。
 このため、今回の改正では、教養試験及び専門試験を廃止しまして、かつ、これまで大学卒程度と専門学校卒程度の二つに分かれていた選考区分を統合いたしました。これによりまして、受験者のさらなる増加が期待できるとともに、より一層人物重視の選考が可能となると考えております。
 なお、採用者の知識、スキルにつきましては、この間強化を図ってまいりました都立病院の教育訓練体系によりまして十分付与ができるものと考えております。
 また、中途採用につきましては、年齢制限を四十五歳未満から六十歳未満に引き上げまして、受験者の増加と経験豊かな即戦力の看護師の一層の獲得も目指していくこととしてございます。

山加朱美
   教養、専門試験の廃止、そして年齢制限の引き上げによる受験の間口を広げて、採用後もすぐれた看護師を育成していくという考え方は、高度専門化する医療に対して、必ずしも現在の大学、専門学校の教育が追いついていないのではないかという指摘もある中で、大変実践力のある信頼できる看護師を医療現場に安定的に確保する上では有効な方策であり、また、高く評価ができるところであります。ぜひとも今回の改正の周知徹底を図っていただき、多くの受験者を集めていただきたいと思います。
 さて、その育成に関しては、来年度から東京看護アカデミーとして運用を開始するとのことでありますが、この東京看護アカデミーの特徴と、これまでの看護師の研修体系との相違点についてお伺いをさせていただきます。

黒田経営企画部長
 看護学生の病院選択理由の上位に必ず挙げられますのが、卒後の研修体制がしっかりしていることでございます。都立病院の研修体系は、全国に先駆けました新卒看護師臨床研修制度の導入や、認定看護師、専門看護師資格取得支援制度など、その充実した内容が従来より外部の関係者から高く評価されてきたものでございます。しかし、これに甘んずることなく、新卒看護師につきましては、高度な臨床能力を段階的に身につけるために、また、中途採用看護師につきましても、スキルに応じた研修が行えるよう、カリキュラムの一層の充実を図ったところでございます。
 このほか、新たに助産師資格取得支援制度や海外派遣研修を導入するとともに、今年度後半から実施しております再就職支援研修につきましても、看護アカデミーに位置づけるなど、研修体系全体の充実を図ることとしたものでございます。

山加朱美
   看護アカデミーは、従来の研修をブラッシュアップするとともに、新たに助産師資格取得コースや海外派遣研修といった新たな研修を付加した総合的な体系的な研修体制であるということが今のご答弁で理解できたわけであります。また、結婚、出産、育児などで長く看護業務から離れていた、そんな方たちのための復職支援研修もアカデミーの中に設けたということであります。
 看護師が不足する中で、潜在看護師の掘り起こし、これは極めて重要なことであります。看護アカデミーのノウハウを生かして、非常勤として勤務しながらリカレント教育を受け、本格的な復職につなげていくというこの本研修、まさに私は公的医療機関としての役割にふさわしいものといえると思うわけであります。
 ちなみにこの復職支援についてですが、昨年後半から既に実施していると伺っているわけですが、その実績についてお伺いをいたします。

黒田経営企画部長
 復職支援制度は昨年の九月から都立病院でスタートいたしまして、この二月までに計四名の方が受講されておりまして、このうち一名が都立病院に常勤として、一名が非常勤として就業をしております。その他一名につきましても、診療所への再就業を検討するまでの成果が得られているところでございます。

山加朱美
   約半年で四人との実績とのことでありますから、この復職支援を看護アカデミーに位置づけたことで、今後一層受講者がふえることを期待申し上げたいと思います。
 また現在、看護師以上に不足が指摘される助産師についても資格取得支援を行っていくということでありますが、このことは、将来助産師を目指す看護師にとっては非常に魅力的な制度ではないかと考えます。そして、アカデミーでは、来年度から海外派遣研修も実施するということでありますが、災害医療やがん医療など、まさに世界の先進的な医療を学ぶ機会ができたということは画期的であると思いますが、この海外派遣研修のねらいというのは何なんでしょうか。

黒田経営企画部長
 都立病院におきましては、災害医療、がん医療、感染症医療、救急医療等、高度な行政的医療に取り組んでおりまして、医師につきましては、海外の著名な病院や大学で研さんを積んだ者が少なくございません。このため、医師とともにチーム医療の核となります看護師につきましても海外派遣研修を導入いたしまして、海外の医療現場や医療事情を実際に見聞きし、国際的な視野から、都立病院の看護を見詰め直す機会を付与することといたしました。このことで都立病院の看護師のモチベーションや資質の向上が期待できると考えております。

山加朱美
   多彩な育成メニューを持つこの看護アカデミー、二十年度からスタートしている東京医師アカデミー同様、医療関係者からは評価され、また、人材の確保、育成に大きく貢献すると考えられると思います。また、こうした総合的、重層的な取り組みこそが高度専門医療を担う都立病院に期待される役割ではないかとも思います。ぜひとも看護アカデミーをしっかりと運営し、定着を図っていただくことをお願いしたいと思います。
 そしてまた最後に、今年度の取り組みの総括と、今後に向けた看護師の確保、育成に対する本部長の強い決意を伺いまして、質問を終わらせていただきます。

中井病院経営本部長
   これまで山加委員には、本会議や委員会の場で、看護師の確保、定着に向けたさまざまなご提言をいただいてまいりました。これらのご提言を踏まえ、私どもといたしましては、働きやすい勤務環境を創出するための七対一看護基準の積極的導入や二交代制勤務の拡充、さらには、病院と本部とが一体となった採用活動や病院を挙げての定着対策など、多様な確保、定着対策に総力を挙げて取り組んでまいりました。
 この結果、代表質問でもご答弁申し上げましたとおり、看護師不足が深刻な中でも、来年四月には例年の二倍の看護師を採用でき、全都立病院で定数を超える配置が可能となる見通しでございます。この三月には、多摩総合医療センター、そして小児総合医療センターが開設するということもあり、この一年の採用活動については、我々としても本当に危機的な意識を持って、全組織を挙げて取り組んでまいりました。
 しかしながら、ちょうど昨年の今ごろ、この時期には、本当に予定どおりの充足ができるんであろうか、この深刻な看護師不足の中で難航をきわめるのではないかという、そういった危ぶむ声も確かにあったわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたとおり、予定どおり、あるいはそれを上回る充足ができたというのは、これは厚生委員会の先生方のご支援、ご指導のたまものであるということで、改めてこの場をおかりして感謝申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
 今後は、先ほどご質問いただきました東京看護アカデミーを戦略的な柱として、看護人材の安定的確保と実践力のある人材の育成にさらに力を入れてまいりたいと考えております。山加先生のご指摘にもありましたとおり、高度専門化する医療の中で、実践力のある看護師の育成はますます重要となっております。
 しかしながら、現行の文部科学省や厚生労働省の法令、方針のもとでは、大学、専門学校における教育には大きな限界があるのが現状でございます。例えば、過密なカリキュラムからくる実習時間の不足、あるいは無資格者に対する実技指導の大きな制約などでございます。こうしたことから、医療現場における実践的、体系的な人材育成システムの充実が喫緊の課題となっております。看護師がみずから成長でき、病院全体で育てていくという東京アカデミーは、まさにこれにこたえようとするものであります。都立病院の看護人材の確保は、量と質のいずれも十分なものにしていく必要がありますが、とりわけ看護の質の向上については、これでよしというところはなく、常によりよい看護を目指して努力しなければならないものでございます。
 その意味で、東京看護アカデミーはこの四月にスタートいたしますが、その後も、改善、充実をさらに継続していく所存でございます。そして、平成二十年度にスタートした東京医師アカデミーとともに、都立病院の将来の発展を力強く支える車の両輪となるよう目指してまいります。今後ともご指導、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

出典:厚生委員会速記録第四号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2010-04.html

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