メインイメージ

議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2002年11月12日 平成14年厚生委員会第15号

山加朱美
 私は、地域医療を確保するための病院整備について質問させていただきます。
 都内の病院を開設主体別に見ますと、民間病院が九割以上、国全体でも同様の状況ですが、これは、我が国の医療提供体制が民間医療機関の主体性を基本として構築されてきたためであります。
こうした国の方針が、医療サービスを国民が容易に利用でき、また、多種多様に増大する国民の医療ニーズに対応できる医療提供体制が効率的に整備されたという点では、評価できるものであると考えます。
 しかし、その一方では、民間病院主導で築かれた今の医療提供体制の中には、病院の地域偏在、不採算となりがちな分野の医療提供が不足するなどの課題が残りました。
 私は、このような課題に対応して、民間病院の医療資源を最大限に活用しながら、これを補完し、住民が身近な地域で症状に合った適切な医療を受けられる体制を整備することは、行政の大切な役割であると考えております。
 都の保健医療の基本計画であります東京都保健医療計画を見ますと、東京都全体を、身近な区市町村の単位であります一次保健医療圏から、都全体を単位とする三次保健医療圏までの三層に分割して、それぞれの圏域にふさわしい医療機能を整備する計画となっています。
 この中で、病院の病床については、複数の区市町村から成る十三の二次保健医療圏ごとに必要な病床数を定め、これにより病床の偏在を解消し、基本的な入院機能を確保することとなっておりますが、住民が身近な地域で、三百六十五日二十四時間の安心、いつでも、どこでも必要な医療を受けられるようにするためには、これだけではもちろん十分とはいえません。
 そこで、まず、都は圏域の中で不足する医療機能を確保するために、どのような取り組みをしているのか伺います。

奥田医療政策部長
 都といたしましては、都民に必要とされる医療機能を確保するため、救急医療や災害時の医療体制の整備を初めといたしまして、老朽化した病院の療養環境の改善あるいは療養病床に対する整備補助など、個別の医療課題に対応するための各種の施策を実施するとともに、医療機関相互の機能分担と連携に基づく効率的な地域医療システムの構築に努めているところでございます。

山加朱美
 必要な医療機能の確保、地域医療のシステムの構築に都は努めているということですけれども、地域の医療を確保するためには、都のみでなく、基本的自治体である区市町村の役割も大きいと考えます。
 医療提供体制の整備における基本的自治体である区市町村の役割は、どのようなものであるのか伺います。

奥田医療政策部長
 区市町村は、住民に最も身近な基礎的自治体といたしまして、住民の健康の保持増進に大きな役割を果たしており、医療の分野においては、かかりつけ医機能の充実や初期救急医療など、プライマリーケアから一般的な入院医療を含む、住民に身近な地域医療を確保する役割を担っているものと考えております。
 こうした中、地域の実情に応じて市町村公立病院を設置運営し、民間病院の誘致など病院の整備に、みずから取り組んでいる区市町村もございます。

山加朱美
 ただいまの答弁に、公立病院の運営というお話がありましたけれども、都では、区部と多摩の自治体の性格が歴史的に異なっていたという経緯もあり、多摩地域の市町村では昔から公立病院を運営しておりますが、区は公立病院を運営しておりません。
 しかし、近年では、住民生活に密接にかかわる分野については、区市町村の役割が大きくなっております。
私は、区市町村がプライマリーケアの確保にとどまらず、地域の病床不足を解消するために積極的に病院整備に取り組み、住民が必要とする医療機能を確保することが重要であると考えます。
 私の地元の練馬区では、練馬区が属する医療圏、十三の圏域中では病院数は最も多く、病床数は東京都全体の平均となっております。しかし、練馬区だけで見た場合、六十七万人の人口を抱える練馬区でありますけれども、病院数は最も少なく、病床数は二十三区の中では最も少なくて、区部の平均の三分の一程度でしかありません。
 区内には、中核となる大規模病院は、区が誘致した練馬光が丘病院のみでありました。このため、私も区民の一人といたしまして、区が、真に区民のためになる病院整備を実現することを期待していたところであります。
しかし、区の新病院整備基本構想によれば、練馬区民の入院患者の七割、救急患者の五割が区外の医療施設を利用するという状況であります。
 特に、がんや循環器疾患などの場合には区外の病院を紹介されることが多いという実情からも、区内に、何としても地域医療の中核となる病院を整備してほしいというのが、長年の練馬区民の切なる願いでありました。
 そこで、練馬区では、区の財政状況にもゆとりがあるとはいえない状況の中で、区有地を提供し、建設費の補助をするなどの財政負担をして病院を誘致いたしました。区内の病床不足と総合的な医療機能を確保するという取り組みを進め、先月の二十日には、運営主体となります学校法人順天堂と基本協定を締結するに至っております。
 練馬区のこの例のように、各区市町村がそれぞれの実情に応じ、地域医療を確保するためにさまざまな取り組みを進めている場合があるかと思われます。
区市町村が病院の整備にかかわっている例は、ほかにはどのようなものがあるのか伺います。

奥田医療政策部長
 練馬区の例のほかには、台東区が小学校跡地を提供して建設費の一部を補助した永寿総合病院、こういった例であるとか、八王子市が土地の提供と、それから救急医療等の運営費を補助して、東京医大八王子医療センターあるいは東海大八王子病院を誘致した事例、さらに、府中市が土地を提供いたしまして榊原記念病院を誘致した事例などがございます。

山加朱美
 ただいまの答弁にもありましたけれども、病院経営が厳しさを増しているといわれている中で、区市町村は、直接公立の病院を経営する以外にも、誘致や補助など多様な方法によって病院整備に取り組んでおります。都は、こうした取り組みをどのように評価しているのでしょうか。

奥田医療政策部長
 区市町村が地域医療の確保の観点から、民間病院の誘致など病院運営の自律性、効率性にも配慮した、さまざまな取り組みを主体的に行うことは大変望ましいことと考えているところでございます。

山加朱美
 区市町村が関与して整備する病院は、医療機能の分化が進められる中で、かかりつけ医との連携、救急医療、災害時の医療体制の確保など、まさに地域に必要な医療を提供する中核病院としての役割を期待されている病院であります。
都は、地域医療の中核的な役割を果たし、地域に不足する医療を提供している市町村公立病院に対しては、一床当たり百二十二万円の運営費補助や、増改築にかかる整備費の四分の一相当の補助を行っておりました。
 しかし、区に対しては、区立病院が今までなかったことから、現在、このような補助はありません。
仮に、区が区立病院を設置運営する場合には、こうした補助制度の適用を考えることは当然であると思いますけれども、民間病院を誘致するような場合には補助制度があるのでしょうか。
 区に対しても、誘致した病院がその機能を十分に果たせるように、機能に応じた支援策を講じていくべきと考えますが、その所見を伺います。

奥田医療政策部長
 病院誘致を行う区市町村に対する支援策についてのお尋ねでございますが、病床不足地域において、区市町村が民間病院に対して病床整備資金の利子補助を行う場合、都としても、これを補助する事業を実施しているところでございます。
 また、都は現在、都民が必要とする医療機能の整備を誘導する目的で、例えばリハビリ専門病床の整備に対する補助など、さまざまな支援を行っていますが、区が誘致した民間病院がこうした機能を担う場合には、これら補助制度を活用して必要な支援を行っていく考えでございます。

山加朱美
 このたび、東京発医療改革の核として都立病院改革が行われ、そして都立病院の役割は、都全域あるいは複数の二次医療圏を対象とした行政的医療という明確な位置づけがなされたところであります。
 このような中、住民に最も身近な基礎的自治体である区市町村が、きめ細やかに地域に不足する医療を補完することの重要性は、ますます高まっていると考えられます。
区市町村が土地を提供するなど積極的に誘致した病院は、たとえ公立病院ではないものの、地元自治体を交えた運営協議会を設けるなど、密接な連携のもとに公立病院と同様の役割を果たしていく病院であると考えられます。
 今後、区が、さまざまな方法でこのような病院を整備する場合には、どうか、その機能が十分に発揮され、区民の切実な願望がかなえられるように、都として、現行の市町村公立病院への補助制度を参考にしながら、財政面も含めて積極的な支援に努めていただくよう強く、重ねて強く要望いたしまして、私の質問を終わります。

出典:厚生委員会速記録第十五号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2002-15.html

戻る