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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2006年12月11日 平成18年厚生委員会第18号

山加朱美
私からは、扶養年金制度について伺います。
 扶養年金制度を廃止する条例が提出されておりますけれども、この扶養年金制度は、障害者施策がまだ充実していなかった中で、保護者亡き後の障害者の将来を心配する関係者の願いにこたえる制度として、昭和四十四年、まさに東京都が国に先んじて創設したと聞いております。
 まず、この扶養年金制度の意義について伺いたいと思います。

吉岡障害者施策推進部長
心身障害者扶養年金制度は、保護者亡き後の障害者の生活の安定と福祉の向上を図るため、昭和四十四年に、任意加入の私的保険の仕組みを基本とし、低所得者に対する福祉的措置を伴った東京都独自の制度として創設されました。
昭和四十四年当時、月額二万円の給付を保障する本制度は、当時の生活扶助費の月額が一万四千二百四十五円であったことと比べても画期的な制度でございました。
 その後、昭和六十一年度に障害基礎年金や特別障害者手当が創設され、障害者に対する所得保障の水準が向上したことに加え、障害者施策が質、量ともに充実し、地域生活基盤が格段に整備されたこともございまして、扶養年金制度の果たす役割は、制度創設当時に比べれば相対的に変わってきているというふうに考えてございます。

山加朱美
昭和四十四年制度発足から三十七年を経過いたしまして、この間に、昭和五十六年、国際障害者年、そしてその後、それに続いて国連の障害者の十年がありました。
障害者に対するサービスの充実が図られ、グループホーム、また地域自立生活支援センターの整備など、障害者が地域で自立できるような環境整備も進んでまいりました。
障害者を取り巻く環境が制度発足当時と比べて格段に改善されてきていることは、私も承知しておりますので、今ご答弁いただいたように、扶養年金制度の果たしている役割が年金の創設当時と比べて相対的に変わってきていることは理解できます。
 しかし、確認の意味で、今回、扶養年金制度の廃止を提案するに至った理由について伺わせてください。

吉岡障害者施策推進部長
扶養年金制度は、平成五年から扶養年金基金の取り崩しが始まっており、平成二十三年度には基金が枯渇することが見込まれ、財政的に行き詰まっている状況です。
都は、平成十八年五月に扶養年金審議会を立ち上げ、扶養年金制度をどのように立て直すかという問題意識から審議を始め、制度のあり方の抜本的な議論を行いました。
 扶養年金制度を維持するためには、掛金の値上げか公費投入の二つの方法が考えられます。
しかし、加入者の負担能力を超える大幅な掛金の値上げは実際上困難です。
また、扶養年金制度は任意加入であり、年金給付に要する費用は加入者の掛金で賄うことを原則とするため、継続的な多額の公費投入は不適切でございます。
このため、扶養年金審議会は本年十月、制度の廃止を提言いたしました。
 都としても、審議会答申を踏まえ、慎重に検討した上で、扶養年金制度の廃止はやむを得ないと判断し、廃止条例を提案いたしました。

山加朱美
制度を立て直そうといろいろ議論をしたけれども、現行制度を立て直す方法はないので、やむを得ず廃止せざるを得ないと判断されたわけですね。
 財政的に立ち行かなくなり、廃止条例を提出されたわけですけれども、この扶養年金制度の財政が破綻に至った要因について伺います。

吉岡障害者施策推進部長
扶養年金制度が財政的に破綻した要因でございますが、扶養年金制度につきましては、今までに四回の制度改正を行ってきておりますけれども、直近の平成十年度に、掛金の引き上げにより財政基盤の立て直しを図りました。
しかし、バブル経済崩壊後の低金利状態が現在に至るまで長く続いたため、扶養年金基金の運用収入が激減していること、掛金の引き上げにより新規加入者が減少したことなどにより掛金収入が減少してしまったこと、そして、制度が成熟化したことにより年金受給者が増加し、給付額が年々増加していること、これらの要因により扶養年金基金の取り崩しがとまらず、平成二十三年度には基金が枯渇する状況に立ち至ったものでございます。

山加朱美
この制度を廃止しない限り、基金が底をついてなくなってしまう。そうなると、その後は、掛金を大幅に値上げするか、公費で穴埋めをするしかないということになりますが、加入者の負担能力を超える大幅な掛金値上げの実現というのは不可能であります。そうなると、残るは、公費を投入して制度を存続させるしかないわけであります。
 この条例案の対応策を実施すると一千五百億の経費が必要だそうですが、現行制度を廃止しないで存続させた場合、必要となる公費の投入額がどのくらいの金額になるのか、聞かせてください。

吉岡障害者施策推進部長
現在のまま制度を継続し、新規加入者も現在とほぼ同数で推移すると仮定した場合、平成二十三年度には三十三億円、翌年度以降、毎年四十億円以上の公費投入が必要となります。その後、受給者が年々増大するため、公費投入額はさらに年々増大してまいります。
 現行制度を廃止すると仮定した場合に、現行制度を収束するまでに約六十年間所要すると考えられますので、それと同じ期間、六十年間、現行制度を見直ししないで継続すると仮定した場合には、累計で約三千億円の公費投入が必要となる見込みでございます。

山加朱美
将来的に六十年間継続して、累計で約三千億もの公費投入が必要となる制度、やはり将来の世代に負担を残すことを考えた場合、これは絶対に避けるべきであり、存続させることはできません。そうなりますと、制度は当然廃止せざるを得ません。
 扶養年金制度が財政的に破綻するに至ったことについて、制度を運営する都の責任を指摘せざるを得ません。東京都心身障害者扶養年金審議会中間のまとめに対する公募意見でも、制度廃止に至った都の責任は重いという意見が大変多くを占めております。
加入者は東京都を信頼して加入したわけでありますから、制度に期待していた方々に対し、制度廃止に至った責任を都はどのような形で果たしていくつもりか伺います。

吉岡障害者施策推進部長
制度廃止に伴い、条例案で示したとおり、加入者に十分配慮した措置を確実に実施していくことが責任を果たすことになると考えております。
 具体的には、受給者に対しては今後とも現行どおり給付を続けるとともに、未受給者に対しては、全国制度に準じて算出した清算額を支払うことや、分割払いも選択できるようにすることなどにより、加入者が制度に対して期待していたものや制度廃止に伴う要望に可能な限りこたえて、制度運営を担う者としての責任を果たしてまいります。
 また、新たな全国制度への参加を国と調整するとともに、民間の生命保険や信託制度などを紹介することにより、保護者亡き後、年金的に障害者にお金を残したいという保護者の希望にこたえてまいります。
 さらに、制度廃止後も、問い合わせや相談に丁寧に応じながら、加入者を適切にサポートしてまいります。

山加朱美
受給者に対しては現行どおり給付を続けるとのことでありますので、今後、かなり長期にわたって年金支給の事務が続くことになると思います。
 年金の支給事務は定型的な事務でありますから、必ずしも都が直接執行する必要はないわけですが、ぜひ都としては効率的な執行体制をとるべきではないかと思います。
 そこで、将来的な年金の支給事務の執行体制に対する考え方を伺います。

吉岡障害者施策推進部長
ご指摘のとおり、年金支給事務はおおむね定型的な事務でございますので、事務執行の確実性や正確性、加入者に対する適切な相談体制の確保、個人情報の保護等に十分に留意した上で、民間委託等を含め、効率的な執行体制について検討してまいります。

山加朱美
ぜひとも加入者の方へ、制度が廃止となったこと、また制度の廃止時期、そして制度廃止後の清算金の支給方法などを含めまして、その後の対応を丁寧に説明していただきまして、加入者の皆様に対して適切な選択をサポートしていただくことを強くお願いいたしまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

出典:厚生委員会速記録第十八号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2006-18.html

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