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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2008年03月17日 平成20年厚生委員会第3号

山加朱美
 私からは、第二次都立病院改革実行プログラムにおける災害対策について伺わせていただきます。
 まだ記憶に新しいところでありますが、昨年七月、新潟県中越沖地震では、新潟県及び柏崎市からの要請を受けて、都立広尾病院と墨東病院が医療救護班を一班ずつ編成して現地に向かい、大変活躍をしたと伺っております。報道によれば、新潟県内の高速道路や一般道路、また柏崎市内のJR路線の一部が不通になるなど、発災後の大変混乱の中での医療救護活動、さぞ大変なご労苦をされたのだろうと思います。改めて医療救護班のご努力に敬意を表したいと思います。
 ところで、知事の施政方針表明にもありましたけれども、東京は、三十年以内にマグニチュード七程度の大地震が発生する確率が七〇%程度もあるということであります。東京が一たび大地震に見舞われれば、その被害ははかり知れないわけでありますが、都立病院は、東京都の地域防災計画の中では災害拠点病院に指定されるなど、大変重要な役割を担っているわけですが、病院経営本部がその役割をみずから意識して、第二次都立病院改革実行プログラムにおいて災害対策を充実強化していくということは大変有意義であり、心強く感じているところであります。
 そこで、改めてこの第二次都立病院改革実行プログラムにおける災害対策の基本的な考え方について伺います。

及川経営企画部長
 これまで病院経営本部といたしましては、広尾病院を中心にマニュアルの作成、医療資器材の整備など災害対策を進めてまいりました。一方で、新潟県山古志村などが被災をいたしました平成十六年の新潟県中越地震や、お話にありました昨年の新潟県中越沖地震への東京DMATや医療救護班の派遣を通じまして、災害時の医療提供体制における災害拠点病院として、特に自治体病院の役割と責任を強く認識いたしたところでございます。こうした経験や過去の震災情報から得た教訓を踏まえまして、第二次都立病院改革実行プログラムにおきまして災害対策を充実強化することといたしました。
 特に、被災しても病院機能を継続するために、あるいは速やかに復旧するためには、日ごろの備えが重要であるといった観点から、災害に備えた取り組みに重点を置いております。例えば、発災による混乱の中にありましても、円滑かつ的確に医療救護活動を実施するための情報連絡体制や、発災後、供給停止が予想されます医療資器材、あるいはライフラインの備蓄、また、二十年度予算では緊急地震速報システムを導入することとしております。
 このようにハード面の整備を着実に進めますとともに、職員研修や訓練を充実させまして、ソフト面の核となります人材育成を推進するなど、災害対策の充実強化を図ってまいりたいと考えております。

山加朱美
 いつあるかわからない災害に備えた常日ごろの取り組みが最も大切であるという病院経営本部のお考えには、私も共感をするところであります。特に、災害時の情報は、医療救護活動の根幹を左右するものでありまして、一刻も早く確実な連絡体制を整備する必要があるのではないかと考えています。
 振り返れば、過去の大きな震災では、一斉に電話回線などが集中することによってふくそうを起こしてしまう、パンクをしてしまう、また、通信手段の遮断によって、病院の被害状況、また医療体制に関するさまざまな情報交換が滞り、医療資器材の供給のおくれや、患者が特定の病院に偏って集中するなどの混乱が生じたと聞いております。
 そこで、災害時に病院経営本部が安全かつ的確な医療救護活動を行うためには、まず確実な情報手段が極めて重要であるわけでありますが、具体的にはどのように取り組みを進めていくのか、伺います。

及川経営企画部長
 副委員長がおっしゃるとおりでございまして、新潟県中越沖地震の際に出動いたしました医療救護班からは、発災翌日の出動直前まで、現地からの情報が二転三転いたしまして、到着してからも正確な情報がなく、医療救護活動に支障を来したというふうに報告を受けてございます。このように、災害はまさに情報との戦いといっても過言ではございませんで、ご指摘のとおり、情報連絡体制を整備することは極めて重要であるというふうに考えております。
 また、たまたま先月、都庁におきまして、病院経営本部とすべての都立病院との間で、東京都防災行政無線による通信訓練を行っております。そこで実際には、こういった訓練を実施しますと、回線がふさがっていてつながらないとか、情報がおくれるといったようなトラブルが、訓練ではございますが生じておりまして、確実な情報連絡体制の必要性を改めて認識をしたところでございます。
 そこで、今ある防災無線の電話、ファクシミリと災害時の優先電話だけでは情報が不足して混乱を招くといったおそれが考えられますことから、こうしたものを補完するために、災害による影響を受けにくい衛星携帯電話や地上デジタルテレビ放送からの情報を受信できる携帯電話などの配備を検討しておりまして、通信手段の多重化、分散化を図っていこうと考えております。
 加えまして、いざというときに迅速かつ効率よく情報連絡ができますように、防災無線など機器の使用方法に関する研修や通信訓練を定期的に実施してまいります。こうした取り組みを通じまして、災害時における情報連絡体制の強化を図ってまいります。

山加朱美
 災害は情報戦であるとのご答弁をお伺いいたしましたが、もし東京で大きな災害が起これば、都立病院にはけが人が殺到し、パニックに陥るであろう、まさに大変な事態になるわけであります。そのような中にあっても、指揮命令系統や情報が錯綜することなく、都民の方々に適切な医療を提供できるように、ぜひとも通信機器を充実させるとともに、効果的な訓練を日々重ねながら、災害に強い人材を育てていただきたいと願っております。
 そして、被災しても病院機能を継続するために必要な取り組みということでは、先ほどもライフラインの確保が大切だというご答弁がございましたけれども、まさにこのライフラインの確保が大切な問題であるわけであります。阪神・淡路大震災では、建物被害を免れた医療機関も、このライフラインが寸断して、医療需要の急増に十分な対応ができなかったと聞いております。国や自治体は、少なくとも二、三日分の食料と飲料水を家庭や事業所等に備蓄をするよう呼びかけているわけであります。
 東京都の地域防災計画でも、災害発生時、道路の障害物除去が本格化し、物資の輸送が可能となるのは三日目以降としております。それまでの間は、それぞれが、各病院が自力で持ちこたえなければならないわけでありますけれども、そこで、都立病院におけるライフラインの確保について、病院経営本部のお考えを伺わせていただきます。

及川経営企画部長
 お話にございました阪神・淡路大震災で被災をしました医療機関では、断水と停電のために、人の生命を維持管理いたします人工呼吸器が使えなくなり、手動で人工呼吸器を人海戦術で動かし続けたといったような事例も報告されております。こうしたことからも、ライフラインの確保が極めて重要であるというふうに認識をしております。
 都の地域防災計画では、医療機関は、災害時には優先的にライフラインが供給されることになってはいるものの、副委員長ご指摘のとおり、物資が輸送されるまでの間のライフラインを確保する必要があるという考えから、第二次都立病院改革実行プログラムにおきましても、都立病院は三日分のライフライン整備を進めていくとしております。
 今後、都立病院における三日分のライフライン確保について、品目や備蓄量を見直すとともに、使用量そのものを節減する方法などについて検討し、より現実的な対策を進めまして、大きな災害に見舞われましても病院機能が継続できるよう、そういった体制を整備してまいります。

山加朱美
 今のご答弁から、病院経営本部としても、ライフラインの確保については大変大きな課題としてとらえ、取り組んでいただいていることが改めてわかりました。どうか万全の体制を期するように、改めてお願いをしたいと思います。
 さて、もう一つ、最近話題の緊急地震速報システムの運用について伺わせていただきます。
 緊急地震速報は、地震の初期微動をとらえまして、強い揺れが来る前に知らせるものでありますけれども、その間、わずか数秒から数十秒の時間しかないというふうに私は聞いております。新聞などでは、この速報を知らせることによって、身の安全確保に役立つというメリットがある反面、また、多くの人が外に逃げようと出入り口等に殺到し、二次被害を引き起こすなどのデメリットも同時にあると報道がされております。
 確かに、病院でこの緊急地震速報が流れれば、患者や家族が、心構えなど、身構えるなどして、ある程度の危険から逃れるということは当然できる反面、もし手術中であったりした場合どうなるのかな、検査中であった場合はどうなるのかな、そういうことも考えるわけであります。場合によっては、本当に混乱をするおそれが考えられます。
 そこで、安全を確保するという観点から、病院ではこの緊急地震速報システムをどのように運用するのか、伺わせていただきます。

及川経営企画部長
 緊急地震速報システムは、病院内の必要な部署に専用端末を配備いたしまして、地震が来るまでの秒数あるいは震度を院内放送等で知らせるといったシステムでございます。
 お話にもございましたが、単に、もうすぐ地震が来る、それだけを院内放送した場合に、利用者の方が混乱して慌てて、例えば転倒するといったような二次被害も発生するおそれがございます。このため、速報を受信してから強い揺れが来るまでの間にできることは一体何なのか、どのような対応が必要かといったことについては、十分に検討する必要があると考えております。
 例えば、速報発信時に流れる放送の内容や職員による誘導などの病院の対応を、あらかじめ院内掲示やチラシによりまして患者やご家族に周知をし、いざというときの行動をイメージしておいてもらうといったことも必要かなと考えております。また、お話にございました手術や検査などの医療行為についても、一時中断をして危険を回避するといった行動も必要になると思います。こういった職員の行動マニュアルも作成をしていかなければならないというふうに考えてございます。
 強い揺れが来るまでの間、たとえ数秒でもこうした行動を可能にするという、この緊急地震速報システムの機能を有効に活用いたしまして、患者さんやご家族の安全を確保してまいりたいと考えております。

山加朱美
 患者にとっては、病院に入院をしている、もうそのことがすなわち有事であるわけでありますから、そこに突然の災害、まさにダブル有事になるわけでありますね。マニュアルを策定し、一定の周知期間を設け、速報が流れた際の行動について患者や家族に注意を促すなど、デメリットを最小限に抑えることによって、この緊急地震速報システムは、患者や家族の安全確保に相当の効果を発揮するものと考えます。
 そこで、二十年度の予算で整備をする予定とお聞きをしているわけでありますが、二十年度を待つことなく、できるだけ早く準備を進めていただきまして、一病院でも先行導入をすることによって、やはり導入をすれば、実際にそこにさまざまな諸課題がまた見えてくると思います。実際にその課題を洗い出してから効果的に導入すべきと思いますが、いかがでしょうか。

及川経営企画部長
 確かに、お話のとおり、速報が流れてから大きな揺れまでの数秒間に一体どこまでできるのか、そして、どういう事態が起きるのかといったことを、実際に病院でシミュレーションをして初めてわかることもあるかと思います。
 したがいまして、副委員長のご提案にもございましたが、早速導入準備に着手をいたしまして、一部の病院で先行導入するなどしまして、このシステム導入の効果を最大限に発揮するための具体的な準備を進めていきたいと思っております。

山加朱美
 これまでお伺いをいたしまして、病院経営本部が災害に備えた取り組みを中心に対策を強化し、東京が大きな災害にいつ見舞われても、病院機能を維持し、あるいは速やかに回復するようさまざまな取り組みを進めていることが、きょうは大変よくわかりました。実際に災害が発生すれば、当然想定できないさまざまな事態が起こり、都立病院だけですべてを担うことは難しいと承知をしています。
 しかし、冒頭申し上げましたとおり、災害時の医療における都立病院の役割は大変重要であります。都民の期待は絶大であります。都民の安心を守るためにも、どうか引き続き緊張感を持っていただき、災害による被害を最小限に抑えるための取り組みを鋭意推進して、災害に強い都立病院を目指していただきたいことを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございます。

出典:厚生委員会速記録第三号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2008-03.html

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