議会質疑
PARLIAMENTARY QUESTION
厚生委員会
2008年11月18日 平成20年厚生委員会第15号
山加朱美
私からは、中国帰国者の方々への支援について二、三お伺いをさせていただきます。
中国帰国者の皆様は、まさに歴史の中で、戦争により翻弄され、数多くの犠牲者が生まれたわけであります。家族離散という大変悲惨な現状の中で、多くの幼子たちが肉親と離れ離れになり、中国の地に取り残されました。そして、その後子どもたちは、現地の養父母に育てられることになった残留孤児、また現地の方と結婚なさったご婦人の皆さん、中国に残留することを余儀なくされたたくさんの邦人の皆様方、その後も、中国国内における大変激しい対日感情や文化大革命等の歴史の中で、大変なご苦労をされてきたわけであります。
これらの中国残留邦人は、中国との国交正常化まで大変長い時間を要したことに加えて、その後の引き揚げも必ずしも順調でなかったために、帰国の時期が大幅におくれた方もたくさんいらっしゃいました。やっと自分の国に帰れても、言葉や生活習慣の違いによって安定した職を得るのもかなわず、また苦しい生活を送るなど、帰国後もさらに苦労に苦労を重ねてこられた、そんなお話を私も伺っております。
現在、戦後六十三年という長い長い時間が経過したわけであります。帰国者の数は年々減少する傾向にありますけれども、しかし、東京は全国でも最もこの帰国者の数が多い地域となっているわけであります。私の地元練馬区は、都内の中、区部で七番目に帰国者の数が多く、現在約八十名近い方が居住をしておられます。最近は高齢化が進むなど、地域での支援を進めるに当たり、関係者からはその課題が山積していると伺っているわけであります。
そこで、最新の都内に居住する中国帰国者の人数がどのくらいか、また、現在抱えている課題は都はどのように認識をしているのか、お伺いをいたします。
芦田生活支援担当部長
中国帰国者の方々につきましては、ただいま山加理事お話しのとおり、終戦時の混乱によって中国に取り残されて、大変なご苦労をされてきましたが、昭和四十七年の日中国交正常化を契機として、多くの方が帰国されるようになったところでございます。現在、全国に約六千人の中国帰国者が居住されており、その四分の一に当たる約千五百人が都内に居住をされております。
中国帰国者の方々が抱えている問題といたしましては、帰国者の平均年齢は約七十歳と高齢化が進んでおり、医療等のニーズが一層高くなっていること、しかしながら、年齢を重ねてから帰国したため、日本語習得が不十分であり、医療機関等で病状をうまく伝えられないこと、また、地域にうまく溶け込めず、地域住民と交流できないことなどの問題があると考えております。
山加朱美
中国帰国者の方々が重ねてきたご苦労、そのご苦労がさきの大戦に起因するものであることから、その後の老後の生活を保障し、地域で安心して生活を送ることができるよう支援する事業は、基本的には国の責任において行うべきであると思います。
この四月から、国では、中国帰国者が置かれている特別の事情にかんがみということで、老後の生活安定のための特別の措置として、まず老齢基礎年金の満額支給、年金制度を補完する支援給付制度を開始するなど、経済的な支援はかなり充実をしてきております。
しかし、現在、今ご答弁いただいたように、平均年齢七十歳と大変高齢化が進み、これからますます医療、介護等のニーズが高まっていること、また、特に高齢になってからの帰国者の皆さんは、言葉の問題も含めますと、地域の中で孤立しがちな現状を踏まえると、 今後は経済的支援に加え、地域の中で安心して老後の生活を送ることができる、そんな支援の仕組みづくりが喫緊の課題であると考えます。
私の地元の練馬区においては、従来より独自に中国帰国者に対して通訳を派遣するなど、そんな事業の先駆的な取り組みを行っております。また、今年度からはさらに、NPO法人中国語の医療ネットワークを初めとする支援団体と連携をいたしまして、巡回健康相談、また日本語教室等を新たに開始いたしまして、地域支援の取り組みを進めているところであります。こうした取り組みは、練馬区にとどまることなく、特に中国帰国者が多く居住する地域に広げていくことが必要であると思うわけであります。
そこで伺いますが、中国帰国者に対する地域での支援を拡充するために、都としてどのように取り組んでいらっしゃるのでしょうか。
芦田生活支援担当部長
理事ご指摘のとおり、中国帰国者への支援は、基本的には国の責任で行うべきものであり、今年度から実施されている新たな支援策の中で、経済的支援の拡充にあわせ、通訳や相談員の派遣等を行う地域生活支援事業を開始しているところでございます。
この地域生活支援事業は、これまで国の委託を受けて都道府県が実施していた事業等につきまして、地域でよりきめ細かな支援を行えるよう、今年度から原則として実施主体を区市町村に移したものであり、今年度末までに七区十二市で実施する予定でございます。そのほかの区市町村につきましては、今年度は都が暫定的に補完して実施をしております。特に帰国者が多く居住する地域につきましては、来年度以降、当該区市が主体的に事業を実施するよう、現在働きかけを行っているところでございます。
都といたしましても、帰国者が少ない地域につきましては引き続き事業を実施するとともに、区市町村職員を対象とした支援連絡会の開催や相談員研修の実施などにより、区市町村への支援を行ってまいります。
山加朱美
中国帰国者が地域の中で安心して生活をしていく上で、住居の確保は最も重要な問題の一つであろうかと思うわけであります。
都では毎年、新たに帰国した世帯を対象に都営住宅の優先入居をあっせんしていますが、現在都営住宅に入居していない帰国者に対しても、どうか優先的に入居ができるように柔軟に対応してほしい、そんな要望が帰国者本人また関係団体から寄せられているところであります。
また、昨年の七月には、与党の中国残留邦人支援に関するプロジェクトチームで取りまとめられた報告書の中で、終生にわたる公営住宅の優先入居あっせんの実現を図るなど、良質な住環境の整備が盛り込まれたところであります。
そこで伺いますが、都営住宅への優先入居あっせんについて、都は今後どのように対応する予定でしょうか。
芦田生活支援担当部長
都におきましては、中国帰国者の生活の安定に向けて、都営住宅への優先入居のあっせんを行っているところでございます。現在のあっせん基準では、国費により帰国した後、三年を経過していないことなどを要件としておりますが、理事ご指摘のとおり、事情により一たん中国に戻り再度帰国した方や、自費で帰国してこれまで頑張ってこられた方も入居できるようにしてほしいとの要望が多く寄せられているところでございます。
このため、こうした帰国者にも優先入居のあっせんが可能となるような仕組みを現在検討しており、実施に向け関係機関と調整してまいります。
山加朱美
東京は、帰国者約一千五百名、約六千名といわれる全国の帰国者の四分の一、最も多くの帰国者が住む地域であるという現状を踏まえますと、都としても、区市町村と連携をし、地域生活支援の取り組みをさらに積極的に進めていくことが求められると思います。
中国や日本での長年のご苦労が報われ、一人でも多くの方が祖国日本に帰ってきて本当によかった、そう思えるような支援が今後各地域で展開されることを私は心から期待をし、質問を終わります。ありがとうございます。
出典:厚生委員会速記録第十五号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2008-15.html
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