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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2010年10月28日 平成22年厚生委員会第15号

山加朱美
 委員会質疑は限られた時間の中での貴重な質疑であります。百二十分というわけにはまいりませんので、私は、二十分程度の中で質疑をさせていただきます。
 まず、指導検査についてと社会福祉法人について、何点かお伺いをさせていただきます。まず、指導検査ですが、福祉サービス事業者への指導についてお伺いをさせていただきます。
 平成十二年に社会福祉法、介護保険法が施行されて、あれからはや十年が経過をしたわけであります。制度が発足した当時、平成十二年は都内の要介護高齢者は約十七万六千人ほど、それが十年たった今、その数、平成二十二年度には約四十三万三千人と、二倍以上に増加をしてまいりました。
 そして、この増加する介護ニーズに対応するために、NPO法人や企業など、多様な事業主体が参入し、その介護サービスが量的に拡大をしてきたわけであります。
 例えば、訪問介護事業所は平成十二年当時、約一千百事業所であったものが、今年度、平成二十二年には約二千七百事業所と、ざっと計算して二・五倍程度までふえてきているわけであります。
 都は、当然でありますが、この増加してきた訪問介護事業所に対して、介護サービスが適正に提供されているかどうか、指導検査を実施なさっていらっしゃいます。当然、この二千七百近くの事業所があるわけでありますが、本来ならすべての事業所に指導検査を実施することが理想とは思いますけれども、一年間ですべての事業所に実地検査に行くということは到底困難であると思います。
 そこで、まずお伺いいたします。指導検査対象の訪問介護事業所を毎年どのように選定をしているのか。そしてまた、指導検査の結果、事業所においてどのような問題が多いのでしょうか。

松浦指導監査部長
訪問介護事業所に対します指導検査対象事業所の選定方法でございますけれども、訪問介護事業所に対しまして、苦情や内部告発、これらが都や区市町村などに寄せられますけれども、その内容から実地検査の確認が必要と思われる事業所をまず選定いたしまして、早期に検査を実施いたします。
 また、事業者指定以降、指導検査を実施していない事業所や前回の指導検査の際に指導した項目の改善が不十分な事業所、これらを選定しまして指導検査を実施しているところでございます。
 次に、指導検査で多く認められた問題事例でございますけれども、平成二十一年度で申し上げますと、訪問介護計画でございますが、これはケアマネジャーが作成したケアプランに沿って作成されるわけですけれども、その計画の中で、訪問介護の目的を達成するための具体的なサービス内容が明確でないもの、また、必要に応じて訪問介護計画を見直していないというような事例がございます。
 さらに、事業者がサービス担当者会議などで利用者の個人情報を用いる場合には、これは同意が必要でございますけれども、あらかじめ利用者の同意を文書でもらっていない事例などがございまして、改善するよう指導しているところでございます。

山加朱美
部長からも、今、問題事例を何点かお伺いいたしましたが、私も現場から、訪問介護事業、これはまず第一に、サービスをいかに迅速に提供するかが求められるわけでありますが、そのために、そのことを優先したため、訪問介護計画の内容が不十分であったり、また、実際のサービスを見直して提供したけれども、計画内容を見直すのを後回しにしてしまったなどの事業所もあると伺っております。
 また、運営基準を守っていると思っていたけれども、省令や国通知で示されている運営基準が細か過ぎて、なかなかその基準を理解していなかった、また、たびたび変更があるので情報に追いついていけなかった、そんな現場の声もよく耳にいたします。
 平成十八年の介護保険法改正によって、この指導検査権限が区市町村にも付与されたわけでありますが、そこで、事業者への指導を充実するためには、区市町村に指導検査の技術的支援をするなど、さらに都は、連携を深める必要があると思いますが、所見をお伺いいたします。

松浦指導監査部長
お話のとおり平成十八年の介護保険法改正によりまして、区市町村にも都と同様に指導検査権限が付与されているところでございます。
 そこで、区市町村が効率的に指導検査を実施できるよう、まず、技術的支援といたしまして、区市町村の職員に都が実施する指導検査に同行してもらう、そういうこととともに、指導検査の実施に係る手引を作成いたしまして、区市町村に配布しているところでございます。
 また、区市町村の職員に対しまして、指導検査のノウハウの研修を実施するとともに、平成二十一年度からでございますが、二区八市の職員を派遣研修生としてそれぞれ六カ月間受け入れまして、実践的な研修も実施しているところでございます。
 また、区市町村が実施する指導検査に係る事務の一部を法人に委託するということができるようになりましたけれども、都におきましては、全国に先駆けて、都全体を対象とする区市町村事務受託法人というものを指定いたしました。区市町村は、当該法人の活用によりまして、訪問介護事業所等に対する指導検査を開始したり、取り組みを拡充させたりしております。
 さらに、区市町村は、指導検査を実施し、その検査結果を区市町村と協議しまして、必要に応じまして、当該事業所の改善を促進するための実地検査を都が行うということなど、区市町村をバックアップしているところでございます。
 今後とも、ご指摘のとおり、区市町村とさらなる連携を図りまして、東京都全体における、より効果的、効率的な指導検査を実施してまいります。

山加朱美
  私は、福祉現場の質、また、福祉サービスの質を底上げするためにも、公正公平に指導する都の指導検査の重責は、大変皆様の期待を担っている、そう思っております。介護事業の適切な運営のために、どうかこれからも区市町村の連携をさらに充実し、指導検査を重点的、また、効果的に実施していただくことをお願い申し上げたいと思います。
 次に、社会福祉法人について何点かお伺いをさせていただきます。
 私は、ことしの三月の厚生委員会で、社会福祉法人経営適正化事業について質問をさせていただきました。その際、学識経験者などで構成される社会福祉法人経営適正化検討会が設置され、その検討会において、社会福祉法人の経営適正化のためには、理事会機能を強化させることと、また、法人が抱えている課題の早期発見、早期対応が重要であるとしているとのご答弁をいただいております。
 社会福祉法人が財務上、経営がうまくいっていない場合には、当然のことでありますが、収入増を図る、また、費用の節減をするなどの早期の対応が必要となってくるわけであります。
 今年度、この検討会で、社会福祉法人の財務分析手法を検討しているとお伺いしております。この財務分析手法は民間でも行われているわけでありますが、社会福祉法人となりますと、少し異なった独自のものとなるのではないかと思っております。社会福祉法人の経営に財務上の問題があるかどうかをはかる指標として、どのようなものが検討されているのでしょうか。

松浦指導監査部長
財務分析のための経営指標にはさまざまなものがございます。社会福祉法人独自の財務上の課題を発見するための有効な指標を検討するために、まず、都内の社会福祉法人から提出されました平成二十年度の決算書を分析しております。その結果、有効な指標といたしましては、事業活動収支計算書からは、当該年度の事業活動の収支差額、それから次期繰越活動収支差額、これらはもとよりでございますが、人件費の比率や事業収入に対する借入金比率などがございます。
 また、貸借対照表からは、まず、短期的に経営が安定しているかどうかという点では、流動資産、これは現金預金や未収金などでございますが、これと流動負債、短期借入金や未払い金などでございますが、この流動資産と流動負債の比率などのものがございます。
 また、長期的に経営が安定しているかどうかという点でございますが、そういう点では、土地建物、備品などが固定資産でございますけれども、この固定資産が基本金などの純資産や設備資金借入金などの固定負債で賄われているかというような、こういう指標が社会福祉法人の財務分析において有効なものではないかというふうに検討しているところでございます。

山加朱美
これも現場の声でありますけれども、理事会機能を強化させるために、社会福祉法人の理事が当該法人の財務状況をチェックしようと決算書を見ても、なかなかその経営状態がいいのか悪いのか、また、経営状況が適切なのかどうかがわからない、自己チェックがなかなか難しいという声を私はよく耳にいたします。
 社会福祉法人経営適正化検討会で、この経営状況をチェックできる経営指標とその標準値、また、要注意ラインなどを検討していただき、社会福祉法人の理事が当該法人をチェックできるようになることが望ましいと考えるわけでありますが、所見をお伺いいたします。

松浦指導監査部長
経営状況のチェックでございますけれども、都内の社会福祉法人の中には、理事会が施設長に法人の経営とか事業運営を一任していたと、そういうことをしたために経営が悪化してしまったというような法人もございます。
 社会福祉法人経営適正化検討会におきまして、このような法人など、課題ある法人を早期に発見し、早期に対応する仕組みについて検討しておりますけれども、そのために、まず都内にあるすべての社会福祉法人の決算書をもとに財務分析を行っております。その分析では、社会福祉法人のさまざまな経営指標の平均値を算出しまして、それを参考に、経営指標のうち、社会福祉法人独自の経営状況をチェックできる有効な指標を検討しているというところでございます。
 例えば、先ほど申し上げました流動資産と流動負債の比率、すなわち流動比率でございますけれども、精査が必要となる要精査水準というのは一〇〇%未満と。これが八〇%未満になりましたら要警戒水準になるというようなラインを明らかにしてまいりたいと思っております。
 これは、東京都における課題のある法人の早期発見のツールとして活用することはもとより、今、山加理事のご指摘を踏まえまして、社会福祉法人の理事によります自己チェックにも活用できるようなものにするよう目指してまいりたいと思っております。

山加朱美
  ぜひともこの有効な経営指標を検討し、わかりやすいガイドラインとして公表していただくことを期待を申し上げます。
 都民の方々が安心してサービスを利用するためには、この社会福祉法人を初めとする福祉サービス事業者が適正な福祉サービスを持続的、また、安定的に提供することが求められるわけであります。そのためにも、東京都は、今後とも、この指導検査の重点化を図り、ぜひ効果的な検査を実施するとともに、社会福祉法人を初めとするサービス事業所をきめ細かく指導していただくことを要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。

出典:厚生委員会速記録第十五号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2010-15.html

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