議会質疑
PARLIAMENTARY QUESTION
厚生委員会
2010年3月17日 平成22年厚生委員会第3号
山加朱美
私からも、今、斉藤理事からも質疑がありましたが、在宅の重症心身障害児者に対する支援についてお伺いをさせていただきます。
私ども都議会自民党は、昨年の四定の代表質問におきまして、NICU等に入院している重症心身障害児に対する早期支援の充実、また、短期入所及び通所サービスにおける超重症児者等の受け入れ促進など、ライフステージに応じた在宅支援の充実を要望させていただきました。
これを受けて、都が「十年後の東京」への実行プログラム二〇一〇において、在宅重症心身障害児者の新たな支援策を掲げたことを高く評価させていただきたいと思います。
生まれたばかりの我が子が重い障害を持って生まれた場合、ご家族のご心痛は察して余りあるものがあるわけであります。まして子どもがNICUなどの高度な医療機関に入院している場合には、退院後、自宅での療養生活について、ご家族は大変大きな不安をお持ちと思います。
この退院後の生活に向けたご家族の不安を少しでも軽減し、安心して在宅生活に移行できるようにするためには、私は、入院中からまさに精神的なサポートを含めた支援を実施することがぜひとも必要と思うわけですが、そこで、NICU等の入院児に対する早期支援の充実のために具体的に都はどのように取り組むのか、お伺いをいたします。
芦田障害者施策推進部長
都はこれまで、重症心身障害児の家庭に看護師を派遣して、医療的ケア等につきまして技術的指導や助言を行う在宅重症心身障害児者訪問事業を実施してまいりました。
来年度からは、NICU等に入院する重症心身障害児が在宅生活へ円滑に移行できるよう、入院中からの相談支援を新たに実施をいたします。
具体的には、看護師資格を持つ在宅療育支援員が病院を訪問して、病院のスタッフや地域の保健師等と連携して退院後の生活の支援体制づくりを行います。
また、退院直後から都の訪問事業のサービスが受けられるよう調整を行うとともに、人工呼吸器を使用するなどの医療ニーズの高い子どもの場合には、訪問の回数をふやすなどの手厚い支援を行ってまいります。
山加朱美
入院中に、在宅療育の専門の看護師が退院に向けた支援を行う、そしてまた、退院直後は、家庭訪問をしてご家庭に子どもの医療的ケアの仕事を行うという、こうしたまさに連続した早期支援の体制を組んでいくということで、ご家族にとっては大変心強いことと思うわけであります。
重症心身障害児は、退院後も継続的な医療が必要であるわけでありますが、在宅療育を長期間にわたって安定的に続けていくためには、やはり訪問看護ステーションなどのサービスの利用が欠かすことはできないわけであります。
しかし、この重症心身障害児を診ることができるこの訪問介護ステーションというのは、まだ非常に少ない現状なんですね。
そこで、この重症心身障害児に対応できる地域の看護人材の育成、確保について、都はどのように取り組んでいくおつもりでしょうか。
芦田障害者施策推進部長
地域の訪問看護ステーションが重症心身障害児の看護に対応できるよう、都がこれまで訪問事業等で蓄積してきたノウハウを生かして、在宅療育の研修の実施やマニュアルの作成等を行ってまいります。
また、重症心身障害児を支援する保健所等との連携会議を実施することによりまして、地域での支援体制の強化に取り組んでいきます。今後とも、地域の行政機関や医療福祉施設と連携して、在宅で生活する重症心身障害児の早期支援に努めていきたいと考えております。
山加朱美
ぜひともこの訪問介護を担う人材の確保がしっかりとできるように、取り組みに期待をしております。
そして、これまでの答弁を伺っておりますと、早期支援についても、また訪問介護ステーションの人材育成についても、これまで実施してきた訪問事業のノウハウを活用して取り組まれるということでありますけれども、実効ある取り組みを着実に実施していくためには、これまでの訪問事業とあわせた事業体制の強化が必要になることと思います。
そこで、都はどのような体制でこの事業を実施していくのでしょうか。
芦田障害者施策推進部長
都はこれまで、訪問事業につきまして、区部と多摩地域ごとにそれぞれ別の社会福祉法人に委託して事業を実施してまいりました。
来年度からは、訪問サービスをより効率的に提供できる体制を整備するため、都内全域を統括する重症心身障害児在宅療育支援センターを設置いたします。これにより、看護人材を有効活用して訪問事業をより一層充実するとともに、NICU入院児の在宅移行支援の充実や地域の訪問看護人材の育成など、早期療育支援の体制を整備してまいります。
山加朱美
実施体制も強化をされるということですから、取り組みが着実に進むことをご期待を申し上げたいと思います。
ところで、私の地元は練馬区なんですが、重症心身障害児の通所施設がございます。天気のいい日には、お子さんを車いすに乗せて散歩している光景などを目にするわけでありますが、ご家族や施設の職員の方々が送り迎えをされて、そして子どもたちの目が本当に輝いている。そんな姿を見るたびに私は感動を覚えるわけでありますが、同時に、日々介護に当たられるご家族のご苦労、また、それを乗り越えていらっしゃったその困難を思うと、本当に頭が下がる思いがいたします。
そして、何としてもこの福祉の向上、都の施策の充実を図っていかなければならない。そのために、気持ちを新たに頑張らなければならないと思うわけでありますが、重症心身障害児者の方々が、地域の中でご家族とともに安心して生活をしていくためには、こうした通所や短期入所などのサービスの利用が不可欠であるわけであります。
特に近年は、在宅で過ごす重症心身障害者の中で、人工呼吸器や経管栄養などの濃厚な医療が必要な、いわゆる超重症児者等の方が増加をしているわけであります。
短期入所や通所の場でも、こうしたニーズへの対応が求められていると聞いているわけでありますが、そこで、都は、短期入所や通所における超重症児者等の受け入れ促進にどのように取り組んでいくのか、伺わせていただきます。
芦田障害者施策推進部長
都はこれまでも、重症心身障害児者の短期入所病床確保事業や通所施設への整備費補助等によりまして、短期入所や通所事業の拡充に努めてきたところでございます。
また、今年度から、重症心身障害児施設で働く看護師を対象とした専門研修を実施し、特に医療ニーズの高い超重症児者等に対応できる人材の養成を行っております。
さらに、来年度からは、民間の短期入所施設や通所施設等において、超重症児者の受け入れのために、高い看護技術を持つ看護師を受け入れ促進員として配置する場合に、この配置費用を助成する事業を実施いたします。
これによりまして、超重症児者等を受け入れるための施設の体制整備を支援し、重症化が進む在宅の重症心身障害児者の一層の受け入れ促進を図ってまいります。
山加朱美
今、ご答弁によりまして、大変きめ細かく対応を検討していただいたことに感謝を申し上げたいと思います。どうか対策の実効が上がり、重症心身障害児とそのご家族に対する支援が今後ますます充実することを期待いたしまして、次の質問に移らせていただきます。
次に、福祉サービスの質の向上についてお伺いをいたします。
介護保険制度や障害者への居宅、通所サービス、また保育所などのサービスにおいては、社会福祉法人とともにNPO法人や企業など、まさに多様な事業主体が参入し、福祉サービスが量的に拡大をしてきたわけであります。
しかし、都民福祉の向上のためには、量の拡大とともに、サービスの質の向上、このことが大変重要なわけであります。都は全国に先駆けまして、平成十五年からこの福祉サービス第三者評価を開始しております。この制度は、第三者である評価機関がサービスに対する利用者の意向やサービス内容、また組織マネジメント等を評価することで、サービスの質の向上に向けた事業者の自主的取り組みを促進するとともに、利用者がサービスを選択するための情報提供することを目的としていると認識をいたしております。サービスの質の向上に向けた自主的な取り組みの促進、サービスを選択するための情報提供、いずれをとっても、できるだけ多くの福祉サービスの事業者がまずはこの第三者評価を受審していただくことが重要なわけであります。
そこでお伺いをするわけでありますが、制度開始以来、これまでにこの第三者評価を受審したことがある事業者の割合はどのくらいでしょうか。施設サービスと居宅サービス、それぞれでどのくらいなのか、お伺いをいたします。
松浦指導監査部長
平成二十年度末までに福祉サービス第三者評価を受審した事業者の割合で申し上げますけれども、この施設サービス、これには特別養護老人ホームや障害者施設、認可保育所、認証保育所など、約三千二百の事業者がありますが、これら施設サービスの事業者全体の受審率は七四・〇%でございます。
また一方、居宅サービス、これには介護保険制度における訪問介護とかデイサービス、ショートステイという事業で、約一万七百の事業者がございます。これら居宅サービス事業者全体の受審率は一一・三%でございます。
山加朱美
第三者評価を受審したことがある事業者の割合、施設サービスの事業者が七四・〇%、この数字もまだまだ低いなと思う数字でありますが、居宅サービス事業者、これが一一・三%、かなり低い数字だなと思います。
この第三者評価、受審したいけれども、受審すると手間暇がかかる、それから料金が高い、そして、企業が受ける負担に伴うメリットがなかなか感じられない、そんな現場の声を私はよく耳にするわけでありますが、しかし、サービスの選択に資するという点では、この受審率の低い居宅サービス事業者の第三者評価の受審率を向上させること、これは不可欠であると考えます。
そもそも、居宅サービス事業者の受審率の低い要因につきまして、都は把握されていらっしゃるのでしょうか。また、それに対して都がどのような対策をとっているのでしょうか。
松浦指導監査部長
まず、施設系サービスに比べまして、居宅サービス事業者の受審率が低い要因でございますけれども、居宅サービスの事業者は経営形態、事業規模が多様でございまして、施設系サービスと同様の組織マネジメントに関する項目など、評価項目の体系がそぐわない面があったこと。また、訪問介護などの事業者におきましては、事務担当者が配置されていないところが多く、受審する上で業務負担があるためというふうに推測しているところでございます。
そこで今年度から、従来の標準的な評価手法とは別に、組織マネジメントに関する評価項目を省略いたしました利用者調査とサービス項目を中心とした簡易な評価手法、これを導入いたしまして、訪問介護、通所介護などの居宅サービス事業者がいずれかの手法を選択できるようにして負担軽減を図っているところでございます。また、区市町村が居宅系サービス事業者に対しまして第三者評価の受審費用を補助する場合におきましては、東京都はその当該区市町村に対しまして、地域福祉推進区市町村包括補助事業で財政支援をしているところでございます。
山加朱美
ぜひとも、事業者の立場に立ってこの居宅サービス事業者の受審促進に向けた取り組みをさらに進めていただきたいと思います。
さて、この第三者評価制度ができてから、平成十五年ですから七年近く経過をしているわけでありますが、この間、一定程度の受審実績が当然蓄積されてきたと思うんです。その受審実績の蓄積をサービスの選択に資するように、都民にわかりやすく情報提供する工夫が必要と思うわけでありますが、そしてまた、評価を受けることで自主改善の取り組みが進むことを考えると、この評価項目の内容をそろそろ見直す時期に来ているのかなとも考えるわけであります。第三者評価制度の改善に向けた取り組みと、そして都の所見をお伺いしたいと思います。
松浦指導監査部長
まず、福祉サービス第三者評価結果の公表についてでございますけれども、とうきょう福祉ナビゲーションというインターネットサイトに公表しております。今、山加先生ご指摘のとおり、公表している評価結果をよりわかりやすく、活用しやすくすることが重要でございます。そこで、評価制度の説明や画面表示の解説を充実するとともに、評価結果概要の欄におきまして、当該事業者の評点と同一サービス全体の評点の平均、この両方をグラフで表示するようにいたしました。この結果、当該事業者における評価項目別の強み弱み、これがわかるとともに、同一サービス全体の平均との比較ができるようになっております。
また、評価項目につきましては、お話ありましたように、第三者評価を開始してから七年目を迎えております。この間、介護報酬改定や、新しい保育所保育指針の施行などがございまして、これらを考慮するとともに、これまでの評価結果、評価項目ごとの取り組み状況の分析や検証を踏まえまして、さらに活用しやすく、よりよい評価項目、評価基準とするために、学識経験者や事業者代表の意見を聞きながら改定してまいります。
平成二十二年度からは、特別養護老人ホーム、認可保育所、認証保育所の三つのサービスについて、この新しい評価項目に基づく評価を開始いたします。また、他のサービスの評価項目につきましても、今後順次見直しを行ってまいります。
山加朱美
ぜひとも、都は全国に先駆けてこの制度をスタートさせたわけでありますから、この第三者評価制度がさらに有効な制度となることを要望して、次の質問をさせていただきます。
社会福祉法人についてお伺いをいたします。
介護保険制度などの居宅サービスにNPO法人や企業など多様な事業主体が参入してきていますが、福祉サービスの主な担い手、やはり中心は依然として社会福祉法人であります。平成二十二年度予算案に社会福祉法人の経営強化事業として、社会福祉法人の経営改善及び法令違反の解消に向けた判断基準を策定し、対応策を講じることによって福祉サービスの水準確保を図るとあります。
そこでまず、都内に社会福祉法人が今どのくらいあり、その社会福祉法人ができた経緯、さまざまであろうかと思いますが、どのような経緯で設立されてきたのか、まとめていただければと思います。
松浦指導監査部長
まず、都内にある社会福祉法人の数でございますけれども、平成二十一年四月一日現在、九百九十六法人ございます。
これらの社会福祉法人が設立された経緯でございますけれども、さまざまな経緯で設立されております。まず、戦前戦後からの民間の篤志家や慈善事業者、これらが、昭和二十六年に社会福祉事業法が制定されましたが、そのときに社会福祉法人の格を取得したものや、障害者など当事者により設立された団体から社会福祉法人に転換されたもの、また、医療法人が福祉事業を営むために参入したために創設したものがございます。
また、制度改正が契機になったものもございまして、介護保険制度を契機に社会福祉事業を開始するために新たに創設されたものや、障害者自立支援法を契機にいたしまして、法内施設とするために創設されたものがございます。
またさらに、近年におきましては、民間企業が社会的責任を果たす、いわゆるCSRの一環としまして、福祉事業に参入するために創設されたもの、また、個人や企業が土地や財産を有効活用するため新たに創設されたものというようなものがございます。
山加朱美
東京都は社会福祉法人に対して指導検査を実施していますけれども、平成二十年度における主な指摘事項として、経理事務処理が不適切、理事会などの開催が不適正、事業経営の管理体制、計画性が不十分などがあるとお伺いをしております。法人経営にこうした不適切な事情が生じる背景として、どのようなことがあると都はお考えなのでしょうか。
松浦指導監査部長
お話のとおり、不適切な指摘事項がある社会福祉法人が少なからずございます。東京都は昨年七月に、学識経験者、弁護士、公認会計士、社会福祉協議会、区市職員などで構成されます社会福祉法人経営適正化検討会というものを設置いたしまして、多様な福祉ニーズに対応した良質なサービスが持続的かつ適切に提供されるために、社会福祉法人の経営機能の強化、経営基盤の確立など、経営の適正化に向けた方策などについて検討しているところでございます。
この検討会の中で、こういう課題のある社会福祉法人の背景について議論されまして、まず、法人や事業の経営を理事長、施設長に任せきりにしており、理事会、評議員会が形骸化していると。また、監事による内部監査機能が果たされていないこと。
二番目としまして、一つの施設だけを運営している社会福祉法人の中には、財政基盤が弱く、スケールメリットが見込めない法人がある。また、介護保険法などによりまして、措置制度から契約制度に移行いたしましたけれども、自立的な経営にふなれな社会福祉法人にとりましては、こうした変化に対応できず、厳しい経営環境になっていると。また、組織や事業をマネジメントする機能が弱い社会福祉法人があるなどが背景として挙げられているところでございます。
山加朱美
ご答弁によって、さまざまな課題を抱えている法人があるということがわかりますけれども、では、この社会福祉法人経営強化事業では具体的にどのようなことを実施していく予定なのでしょうか。
松浦指導監査部長
先ほど申し上げました社会福祉法人経営適正化検討会におきまして、法人経営の適正化のために、理事会や監事の機能を活性化させるとともに、法人の事業をマネジメントする、いわゆる法人本部の機能を充実させること。また、社会福祉法人の抱えている課題をできるだけ早期に発見し、早期に対応することなどが重要であるというふうに指摘されております。
そこで、平成二十二年度の社会福祉法人経営強化事業といたしまして、まず第一に、理事や監事が求められる役割をきちんと果たし、理事会機能を向上させるための役員機能強化研修を実施いたします。
第二に、社会福祉法人の課題を早期に発見する基準や、課題解決に向けた方策を作成いたしまして、幾つかの法人でモデル実施といいますか、その試行を行いまして、それを検証し、課題の早期発見、早期解決の仕組みを構築していくということとしております。さらに、社会福祉法人の適正な経営のためには区市町村と連携することが重要でございまして、そのために、区市町村が社会福祉法人に関与する、その関与のあり方に関するガイドブックを作成いたします。
こうしたことなどによりまして、社会福祉法人経営の一層の適正化を支援していく考えでございます。
山加朱美
福祉サービスの利用者が安心して必要な福祉サービスを継続的に利用できるためには、この社会福祉法人を初めとするサービスの提供事業者が経営機能の強化、経営基盤の確立など、経営の適正化に努めることが最も重要と思うわけであります。
東京都は、経営適正化検討会での検討内容を受けた社会福祉法人経営強化事業を引き続き実施をいたしまして、この指導検査による改善指導、福祉サービス第三者評価を受けた法人の自主改善と相まって、社会福祉法人が適正な経営のもとにより質の高いサービスを提供できるように、どうか指導、支援をしていただきたいと思います。
また、制度上に課題があれば、例えば、社会福祉法人に対する指導に関する規定の充実など、国に提案要求すべきものは国にしっかりと要求していくということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
出典:厚生委員会速記録第三号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2010-03.html
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