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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2011年11月16日 平成23年厚生委員会第14号

山加朱美
 救えるはずの命が救えなかった、そんなことがあっては絶対にならないわけであります。児童虐待ゼロを目指し、私自身も日々啓発、この児童虐待防止のオレンジリボン運動を展開している一人であります。
 先ほども児童虐待、また、里親のお話がございましたけれども、今月十一月、東京都の児童虐待防止推進月間であります。
 このオレンジリボンキャンペーン、ぜひ、党派を超えて応援をいただける先生がふえることはうれしいことでありますので、先ほど質疑をいただいた柳ヶ瀬先生もぜひつけていただきたいと思います。
--お願いいたします。

 私は、平成二十年の第一回定例会におきまして、当時、十年間過去右肩上がりに東京の児童虐待件数が増加していることに、アメリカにおける虐待の状況と比較しながら、このままでは欧米並みに虐待件数がふえてしまうといち早く警鐘を鳴らしたところであります。そして、機会があるたびに、社会全体で子どもを虐待から守っていくための都民に対する普及啓発の推進、また支援の充実、施策の充実について取り上げてまいりました。
 児童虐待防止法は平成十二年の十一月に施行されたわけでありますが、十一年たつわけであります。この間、児童相談所を初め、区市町村の子ども家庭支援センター、保健所、学校、病院など、多くの機関が児童虐待防止に向けた取り組みを懸命に行ってくれております。
 しかし、残念なことに、児童虐待の数は、この十一年間も右肩上がり、そして、決して減らないわけであります。そのことが非常に危惧されることであります。
 虐待により子どもが死亡する、その痛ましい事件は、全国で後を絶ちません。都民、そして国民一人一人が児童虐待防止の意識を持って、子どもたちが伸び伸びと笑顔で生活できるよう、改めて取り組みを進めるべきだと考えます。
 新聞報道によりますと、本年七月に公表された、全国の児童相談所が平成二十二年度に受けた児童虐待の相談対応件数、宮城、福島、仙台では、三・一一、震災を受けたことで速報値が出ておりませんが、そこを除いた速報値は五万五千百五十二件、前年度比一万二千件、二八%と大幅な増となっているわけであります。
 そこで、まず、都における児童虐待の現状について、お伺いいたします。

桃原少子社会対策部長
 平成二十二年度に東京都の児童相談所が受理した児童虐待の相談対応件数は四千四百五十件となっておりまして、前年度と比較いたしまして、一千百件、三三%の増加を見ております。
 また、区市町村の子ども家庭支援センターにおける対応件数は七千七百二十八件で、前年度に比べまして、二千二百七十二件、四一%の増加となっております。
 この中では、調査の結果、事後に実際に虐待と見られた件数も増加しておりますが、都と区市町村がこの間、児童虐待防止に向けた取り組みを進めた結果、地域の住民の皆様方の意識が高まり、虐待が疑わしい場合も含めて相談件数全体がふえたものと考えております。
 昨年度、児童相談所が受けた四千四百五十件のうちでも、一千二十九件につきましては、調査の結果、虐待の事実がなかったことが判明しておりますけれども、何よりも通報していただくことが重要なものと考えてございます。

山加朱美
 都及び区市町村の関係機関それぞれにおいて、児童虐待の件数が急激に増加していることと、件数が増加した背景の一つとして、住民意識の高まりが考えられることがわかりました。
 しかし、四千四百五十件のうち、千二十九件は虐待の事実がなかったとしても、残りの三千四百二十一件、つまり、最低でも三千四百二十一名の子どもたちに何らかの虐待の事実があったわけであります。これは、やはり大変なことであります。
 しかし、児童相談所、子ども家庭支援センターなど、この関係機関の職員の方は、表に出てくる数がふえたということは、それだけ大変な状況と思います。
 身近な住民からの通報が増加するということは、児童虐待を早い段階で発見でき、また、重度化する前に対処することができるなど、大変評価すべき点でもあります。しかし、その裏にある虐待件数が減っていないということは、しっかりと心の中に秘めていただきたいと思います。
 また、児童虐待に陥るおそれのある親子を早期に発見し、地域で支えていくためには、地域の関係機関はもとより、一人でも多くの住民に、児童虐待防止に対する理解を深めていただく、この取り組みが重要であります。また、子育て中の方々に対して、児童虐待に関する知識、相談、支援の方法について周知する取り組みは極めて重要であります。
 都では、平成十九年度より、児童虐待防止オレンジリボンキャンペーンを行って、さまざまな取り組みを通じ、この普及啓発に努めてくれているわけであります。
 五年間継続をしてくれているわけでありますが、児童虐待防止オレンジリボンキャンペーンについて、現在までの都の取り組みを確認の意味でお伺いしたいと思います。

桃原少子社会対策部長
 児童虐待の防止は、社会全体で取り組むべき課題でございまして、区市町村の子ども家庭支援センターや民生児童委員、保健所、学校など、地域の関係機関と連携いたしまして、一人でも多くの都民に理解を深めていただけるよう、広く児童虐待防止を訴えることが必要であると考えております。
 都は、平成十九年度から、十一月におきまして、児童虐待防止オレンジリボンキャンペーンを開始いたしまして、集中的にイベントなどを企画、実施するとともに、啓発グッズの作成、配布を行うなど、区市町村や民間団体と一体となって普及啓発に取り組んでまいりました。
 具体的には、広く一般都民に向けたシンポジウムや講演会などを開催するほか、特に子育てをしている若い世代に呼びかけをするため、リボンやリーフレットの街頭での配布や、商店街イベントにおけるPR活動を行っております。また、サッカーやアメリカンフットボールなど、プロスポーツの公式戦でのキャンペーン活動などについても実施しております。

山加朱美
 都が平成十九年度から、オレンジリボンキャンペーンにおいて、さまざまな取り組みを行われ、児童虐待防止を図る上で大変有意義なものとなっていることは高く評価をしたいと思います。
 私もこの趣旨に賛同し、冒頭申し上げましたが、一人でも多くの方にこの問題についての関心を持っていただきたいと十九年度当初からオレンジリボンを身につけまして、まさに十一月だけではなく三百六十五日PRをし、児童虐待防止の啓発に、そして、その重要性を訴えているわけであります。
 ことしは、この蛍光の、これはバッグとかにちょっとつけるものでありますが、これと、それからシールですね。これもちょっと物に張りつける。そして、これがノートであります。もう皆さんご存じだと思いますが、これも一式差し上げますので。--ぜひ、こういうものを、児童虐待をやはり訴えるからには、どういう啓発をしているかをみずから身につけて--リボンが反対でございますので、ちょっと逆さまにつけないようにしていただきたいと思いますが。
 しかし、これをつけていますと、これ何って聞かれるんです、必ず聞かれます。これが児童虐待防止啓発のオレンジリボンですよと申し上げると、ああ、そうなんだ、オレンジリボンがそうなんですねと、その時点で、私は啓発に貢献をしていると思うわけであります。
 しかし、そのリボン、オレンジリボン、それ何ですかという質問がなくなることを私は願っております。都民のだれもが、このオレンジリボンを見たら、これは児童虐待防止啓発リボンなんだと、その啓発の重要性が大変大切だと思います。そう思いますと、この活動中、まだまだ声があるということは、オレンジリボンに対する認知度がまだ低いのかなと感じて残念でなりません。都民に広く周知されるよう、都はさらなる取り組みを行う必要があるのではないかと思っております。
 そのためには、志のある民間企業を巻き込んで、児童虐待防止推進月間だけでなく、年間を通じて継続的に実施していくことが重要と考えるわけでありますが、都民への普及啓発を進めていくために、都は今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

桃原少子社会対策部長
 都は、この間、十一月の児童虐待防止オレンジリボンキャンペーンを中心として普及活動を行ってまいりましたが、オレンジリボンの認知度をさらに高め、児童虐待防止への理解を社会全体の中で深めていただくためには、ご指摘のように、年間を通じた啓発活動に取り組んでいくことが重要と認識しております。
 今後、区市町村やNPOに加えまして、民間企業との連携をさらに強化する中で、より宣伝効果の高いイベントであるとか、PRグッズの企画などにさらに取り組むことによりまして、普及啓発活動を一層推進してまいりたいと存じます。

山加朱美
 こうした取り組みによって、児童虐待がゼロになることを強く願っております。ぜひとも、都の取り組みを飛躍的に強化していただきたい、このことを要望しておきます。
 さて、あわせて今月、里親月間でもあるわけであります。虐待など、さまざまな理由によって親と暮らせない子どもたちを養子縁組を目的とせずに一般のご家庭で預かっていただくというこの養育家庭制度を、東京都は、昭和四十八年、全国に先駆けて独自の制度として創設し、推進しております。家庭的な環境のもとで、里親との信頼関係を通じて子どもをはぐくんでいくという、大変、非常にすばらしい制度で、私も平成二十年の本委員会におきまして、養育家庭の普及啓発に積極的に取り組むよう取り上げてまいりました。
 しかし、せっかくのすばらしい制度であっても、ことし八月のような痛ましい事件が起きますと、報道の中には、養育家庭制度が正しく理解されないような心ない内容の報道もあり、誤解を生じることにもなります。
 養育家庭制度を推進していくためには、子どもを養育する養育家庭を支える仕組みを一層充実するとともに、社会全体、とりわけ地域で養育家庭の理解を得ることが重要であります。
 都は、養育家庭について広く理解を得るために、どのような取り組みをしているのか伺います。

桃原少子社会対策部長
 養育家庭にとりましては、地域住民や学校などの関係機関において、里親制度が正しい理解を得ることが安心して日常生活を送る上では不可欠なものでございます。
 このことから、都は、区市町村と連携しながら普及啓発に取り組んでまいりました。普及啓発に当たりましては、十月、十一月の里親月間を中心といたしまして、都民や学校などの関係機関に向けまして、さまざまな取り組みを進めております。
 具体的には、都民向けといたしましては、養育家庭経験者による体験発表会の実施を行っておりまして、平成二十三年度は、合計五十一の区市町での開催を予定しております。また、里親と行政が連携いたしまして、地域のイベントを活用した普及啓発を行うなどの取り組みも実施しております。
 今年度は、さらに、養育家庭の状況が具体的に伝わりますよう、里親と養育家庭に育った子どもの体験などを掲載いたしましたリーフレットを新たに作成いたしまして、普及啓発に活用いたしております。
 また、教育機関との間におきましても、里子が心身ともに安定した学校生活を送ることができるよう、教員の研修におきまして、制度の説明や体験発表の取り組みを始めるなど、連携の強化を図っております。
 今後とも、これらの活動を推進する中で、養育家庭について広く理解を得るよう、促進を図ってまいります。

山加朱美
 子どもたちは、我が国の未来そのものであります。養育家庭を含め、すべての子育て家庭が地域全体から支えられ、子どもたちの笑顔を守れることを願って、次の質問に移らせていただきます。
 次に、社会福祉分野での地方分権について、お伺いいたします。
 本年八月、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律、ちょっと息を切らずにいうのは大変な、長い法律名ですが、いわゆる第二次一括法が成立し、公布をされました。
 この法律の施行により、四十七の事項が都道府県から区市町村へ権限移譲されます。そのうちの一つに、社会福祉法人の事項があるわけであります。
 その内容は、社会福祉法人の実施する事業が複数の区市町村にまたがる場合は、引き続き都が所管、事業の実施区域が一つの区市に限られる場合は、社会福祉法人の設立、定款の許可や指導検査の権限などが都から当該の区市に移る、こういうことで間違いがないと思うんですが、確認の意味で整理をしてわかりやすく説明をしていただきますとともに、あわせて、そうなりますと、現在、都内にある社会福祉法人のうち、許可や指導権限が都から区市に移るのはどのくらいあるのか、お伺いいたします。

松浦指導監査部長
 まず、社会福祉法人に関するいわゆる第二次一括法の内容でございます。  具体的に申し上げますと、社会福祉法人が幾つかの事業を実施している場合に、その事業を実施している場所がA区とB区というふうに複数の区市町村にまたがる場合は、これまでどおり都が所管いたします。
 一方、社会福祉法人の主たる事業者が例えばA区にあり、かつ、その行う事業がA区の区域のみというふうに当該の区や市に限られる、こうした法人の所管が、平成二十五年四月から、都から当該の区市に移るというものでございます。
 都から区市に移る権限でございますけれども、社会福祉法人の設立認可、定款の認可や、社会福祉法人に対する報告徴収及び検査、さらに、業務停止命令や解散命令などでございます。
 次に、都内にある社会福祉法人の数でございますけれども、平成二十二年度末現在でございますが、千十七ございます。そのうち、区や市に権限が移譲される社会福祉法人の数は、その六七・六%に当たります六百八十七でございまして、移譲される法人数が多い区市を挙げますと、八王子市が五十一法人、町田市四十八、青梅市四十、板橋区三十五、世田谷区三十二、足立区二十九、葛飾区二十八、練馬区二十四でございます。

山加朱美
 平成二十二年度末現在千十七ある社会福祉法人のうち、今のご答弁によりますと六百八十七法人、つまり、約三分の二に当たる法人に対する指導検査権限がそれぞれの区市に移譲されることになるわけであります。私の地元の練馬区も、三十ある社会福祉法人のうち二十四法人に関する権限が移譲されると、今、伺いました。
 区市は、今後、権限が移譲されるものプラス、これから新たに設立される社会福祉法人の設立許可も行わなければならないわけであります。
 地方分権の観点から権限移譲は望ましいものの、準備期間が何にせよ一年半しかないわけでありますから、しかも、社会福祉法人の許可事務、指導検査業務のノウハウが恐らくおありにならないので不安という声も上がってくると思います。東京都は、こうした不安の解消に全力で努める責務があると思います。
 そのためには、社会福祉法人の許可、指導検査が権限移譲される区市に対し、都は、許可事務や指導検査のノウハウの引き継ぎのために研修の実施など、積極的に技術支援をしていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

松浦指導監査部長
 区市に対する技術支援でございますけれども、都は、本年三月に、社会福祉法人の適正な経営の確保に向けました区市町村の関与のあり方ガイドブックというものを作成しまして、区市町村に配布するとともに、七月に、区市町村の職員を対象に説明会を実施しております。
 今後の支援でございますけれども、区市における社会福祉法人の許認可を担当する予定者に対しまして、社会福祉法人の設立事務、定款の変更事務などの研修を実施いたします。また、指導検査を担当する予定者に対しましては、社会福祉法人の運営や会計等に関する指導検査の研修を実施いたします。
 三点目としまして、区市と権限移譲連絡会、これは仮称でございますけれども、こういう連絡会を設置しまして、移譲事務の具体的な課題を調整した上で、移譲される個別法人ごとに具体的な内容について、当該の区や市と引き継ぎを行います。
 移譲後の平成二十五年度以降におきましても、区市による社会福祉法人許認可事務や指導検査事務について、区市からの問い合わせに対しましてガイドラインを示すなど、丁寧に対応してまいります。

山加朱美
 ぜひ、しっかりとした引き継ぎをお願いしたいと思います。  さて、私は、昨年十月の本委員会で、社会福祉法人の経営の適正化を図るために、法人理事が法人の経営状況をみずからチェックできる有効な財務指標を検討し、わかりやすいガイドラインとして公表するよう要望させていただきました。
 それを受けて、都は本年四月に、ホームページ上に社会福祉法人財務分析計算シートを載せ、決算数値を入力すると、十一の財務指標が自動的に計算できるようにしました。これは大変活用されていると聞いております。これによって、各社会福祉法人が経営分析できるようになったわけであります。  社会福祉法人の経営の適正化のためには、課題の早期発見、早期対応が必要であることはいうまでもないことであります。
 ことし三月に、社会福祉法人経営適正化検討会報告書、これが発表され、それを受けて、都は、今後、社会福祉法人経営適正化事業をどのように実施していくのか。また、こうした社会福祉法人の経営適正化のノウハウも、指導検査等が権限移譲される区市に引き継いでいただきたいと思いますが、所見をお伺いいたします。

松浦指導監査部長
 まず、都が実施する社会福祉法人経営適正化事業でございますけれども、山加理事ご指摘のとおり、社会福祉法人の経営適正化のためには、課題の早期発見と早期対応が重要というふうに考えております。
 社会福祉法人の課題を早期に発見するために、理事会運営、財務状況、事業運営とか人事管理、利用者サービスなどの各分野におきまして、重大な課題になりやすい項目につきましてチェックリストを作成しまして、指導検査のときに調査を実施しております。これを引き続き充実してまいります。  経営分析につきましては、個々の社会福祉法人が継続的に経営状況をみずからチェックできますように、都は毎年度、都内のすべての社会福祉法人の決算書全体を分析しまして、十一の財務指標、例えば事業活動収入対借入金の比率とか、流動比率とか、純資産比率、こうした財務指標につきまして、各年度の都内の社会福祉法人の平均値を、保育とか特養とかを経営する事業種別ごとに算出し、公表してまいります。
 社会福祉法人の課題の早期、かつ専門的な対応につきましては、指導検査による調査の結果、重点的に指導を要すると判断された社会福祉法人等につきまして、法律、会計、人事管理などの専門家などから構成されます社会福祉法人専門家会議を設置し、専門家会議の助言を受けて、指導を強化してまいります。
 こうした課題の早期発見、早期対応という都におけるノウハウにつきまして、区や市に対して、先ほど申し上げました研修会や、権限移譲連絡会等で引き継いでいくとともに、移譲後におきましても、指導方法についての区市からの相談にきめ細かく対応してまいる所存でございます。

山加朱美
 東京都が実施する経営適正化事業によって、すべての社会福祉法人の経営を適正化した上で、平成二十五年度に、区市に社会福祉法人の指導検査権限などが移譲されることが望ましいと考えます。それは、なかなか難しいと思います。
 時間も一年半しかないわけでありますが、しかし、都によってできる限り、社会福祉法人の経営適正化を図っていただくとともに、権限移譲された後も、区市による社会福祉法人に対する経営適正化への指導を都が支援していただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

出典:厚生委員会速記録第十四号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2011-14.html

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