議会質疑
PARLIAMENTARY QUESTION
厚生委員会
2012年6月4日 平成24年厚生委員会第7号
山加朱美
私からも、この慢性疲労症候群患者への支援を求める意見書の提出に関する請願、請願者が私の地元練馬区でありますので、何点かお伺いさせていただきたいと思います。
私は、自分自身が障害四級、四級というのは、一下肢維持機能の全廃、私は右の股関節の全廃から人工股関節を入れておりますので、障害程度は四級の認定を受けているわけでありますが、そのこともありまして、障害当事者の立場から、さまざまな障害者が直面する課題に取り組んでまいりました。
ことし三月の予算特別委員会では、外見からは一見して障害があることがわからない方々が日常生活でさまざまな不便を強いられることのないよう、そのような方々への理解を促進すべく、都として、外見からわかりにくい障害を持つ方々への統一したマークの作成をすべきであることを提案いたしました。今、そのマークの作成が進んでいる途中ではないかと思っております。
さて、今回の請願にある慢性疲労症候群については、全国では約二十四万人の患者さんがいるといわれております。厚生労働科学研究疲労研究班のホームページによりますと、慢性疲労症候群とは、これまで健康に生活をしていた人が、対人的、物理的、生物学的な総合ストレスがきっかけとなり、ある日突然、原因不明の激しい倦怠感に襲われ、それ以降、強度の疲労感とともに微熱、頭痛、脱力感や、思考力の障害、躁うつ等の精神神経症状などが長期にわたって続き、健全な社会生活が送れなくなる疾患とあります。
請願書を読ませていただいて、私が特に心を痛めましたのは、ほとんどの患者さんが、職を失うほどの深刻な病気でありながら、いまだ慢性疲労症候群について、医師も含めて周囲の理解が進まず、偏見と無理解に苦しんでいるという点であります。
私自身、冒頭申し上げましたが、不慮の事故によって、私も三十五歳のときに、ある日突然、障害を持つ身となりました。しかし、このように外見では一見して障害者とはわからない。こうして立っていても、右足は人工股関節が入っておりますから、左足、片方の足だけで体重をかけて立っております。また、まち中で普通に歩くことはできますけれども、長い信号で、途中信号が変わってしまうと、走れないためにクラクションを鳴らされたり、何をもたもた歩いているんだと罵声を浴びせられたりいたします。そしてまた、家を出るときも、目的地に、和式のトイレが使えませんので、そのお店のトイレが和式なのか、洋式なのか、また、階段があるのかないのか、いすがあるのかないのか、そんなことも一つ一つ、家を出るときに先方にお電話をして確認しながら出かける。いざ行ってみると、座いすはあるけれども座れなかったりとか、さまざまな、まち中、生活の中で不自由な思い、そして時には不愉快な思いをすることが少なくありません。
ですから、この慢性疲労症候群について、原因究明が進まずに難病としてなかなか認定がされていない中で、患者の皆様が周囲の理解を得られず、日常生活で私のようにさまざまな苦しみを抱えているのかなと思いますと、本当に過酷でつらい思いをされているんだなと大変、私自身のようにつらくなる思いがいたします。こうした立場から、何点か質問をさせていただきます。
まず、慢性疲労症候群に関する研究についてですが、この疾患はWHOにおける国際疾病分類では神経系疾患に分類されているとのことでありますが、我が国における研究の状況はどのようになっているのか、お伺いいたします。
芦田障害者施策推進部長
国内では、平成三年に厚生省の疲労調査研究班が発足し、自覚症状を中心とした慢性疲労症候群の診断基準の試案が作成されたところでございます。その後、厚生労働科学研究等において、慢性疲労症候群の原因や病態の解明、検査法等に関する研究が行われております。
平成二十一年から三カ年では、慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な診断法を確立することを目指して調査研究が進められているところでございます。なお、厚生労働省によれば、さらなる研究が必要であるため、今年度の厚生労働科学研究においては、慢性疲労症候群の実態調査と、客観的診断法の検証等に関する研究が実施される予定とのことでございます。
山加朱美
次に、慢性疲労症候群の診療体制についてですが、慢性疲労に苦しむ患者の皆様にとっては、十分な診療が受けられる環境を整えることが切実な要望であり、慢性疲労症候群に関する診療体制の整備が望まれる、そう思います。また、この疾患に対する偏見や無理解の解消のためには、心因性の疾患ではなく器質的疾患であると認められることが要望されていますが、器質的疾患であると証明されるためには、どのような条件が整うことが必要であるのか、お伺いいたします。
芦田障害者施策推進部長
慢性疲労症候群の原因としましては、ウイルス感染、内分泌異常、免疫異常、脳神経系の障害など、さまざまな説がございます。
器質的疾患であると認められるためには、こうした疾患の原因についての解明が進められるとともに、臓器や神経などの組織に生じた異常により引き起こされる疾患であることが医学的に証明される必要がございます。
具体的には、画像診断や血液検査などを用いた客観的な診断法を確立することが求められ、現在も研究が進められているところでございます。
山加朱美
慢性疲労症候群の解明については、なかなか難しい問題があるということは理解をいたします。
次に、福祉制度についてですが、慢性疲労症候群では、その症状が重くなってくると、日常生活にも支障を来し、例えば、車いすが必要になるなど、さまざまな支援や福祉サービスが必要となってくる方がいると伺っております。
そこで、重複するかもしれませんが、確認したいのですが、現在、身体障害者手帳、補装具などの福祉サービスは、障害の原因が慢性疲労症候群のように診断基準の確立していない疾患、原因不明であるといわれる疾患である場合であっても、症状に応じて対象となるのかどうか、お伺いいたします。
芦田障害者施策推進部長
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法及び東京都身体障害認定基準に基づき認定を行っております。
具体的には、障害の原因となった疾患のみで判断するのではなく、筋力低下などの所見、日常生活動作能力の状況、また、症状が継続している期間など、申請者の障害の状態全般に照らし、審査、認定を行っております。
車いすなどの補装具につきましても同様に、障害者自立支援法や国の示す指針等に基づきまして、個々の身体状況や生活環境を十分考慮に入れて判定を行っております。
山加朱美
障害の状態全般に照らして対応がとられるということは了解をいたしました。
しかし、慢性疲労症候群は、まだ診断基準も確立されておらず、個々の症状を理解してもらうことが難しい実態もあると思います。疾患の実態に即した支援策が講じられるためには、その病態の解明が進むことが何よりも大切であります。そして、患者の皆様が置かれている困難な状況を、さまざまな機会を通じて広く外に向けて発信をしていく、世の中に啓発をしていくことも必要であると思います。
一日も早く、この慢性疲労症候群並びに患者の皆様のことが、周囲の方々に、一人でも多くの方に理解をされ、社会に認知されることを切に望みます。そのためには、この疾患に関する科学的な研究が何よりも前進し、原因究明が進められることが何よりも必要であると考えます。
局として、今後ともできる限りの知恵を絞って取り組んでいただきたいことをお願い申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございます。
出典:厚生委員会速記録第七号https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2012-07.html
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