議会質疑
PARLIAMENTARY QUESTION
厚生委員会
2016年11月22日平成28年厚生委員会第15号
山加朱美
さきの福祉保健局の事務事業でも、私はこのヘルプマークの普及について質問いたしましたが、(実物を示す)病院経営本部におかれましても、その普及啓発の輪をさらに広げていただきたい、そんな願いも込めて、お伺いをいたしたいと思います。
このヘルプマークは、障害手帳を有する者だけでなく、認知症、そしてまた精神障害、妊娠初期の女性、外からわからなくても、配慮や、また援助を必要としている方が身につけ、支援ニーズがあることを周囲の皆様に知っていただく、そのことを目的とするマークであります。
私は、みずから中途障害の体験者として、四年前の予算特別委員会でこのマークの提唱をし、それを受け、福祉保健局が平成二十四年、具体的にこのマークのデザインを決め、そして実現をしてくれました。
具体的に、デジタルサイネージ、映画館、広告など、さまざまな手段を用い、このヘルプマークの周知を福保は行っています。また、局を超え、都営交通でも大江戸線、多摩モノレール、「ゆりかもめ」の駅などで、実際このヘルプマークの無料配布を行ってくれています。
啓発の経過もかなり効果があらわれてきたと思っています。不自由さをお持ちの方に、これをつけていると何かあったときに精神的に安心だと、障害当事者もそうですし、ご家族からもそんな喜びの声を私自身も耳にしておりますし、また、まち中を歩いておりますと、手荷物にこれをつけている方も最近よく見かけるようになってまいりました。
しかし、健常者の方にこのマークがどういう意味があるのかということを知っていただかないと、その啓発の拡大にはつながっていきません。マークに対する認知が健常者の方にも広がっていただきたい。
そんな中で、病院経営本部所管の都立病院、また公社病院ですが、改めて病院はさまざまな疾患を抱えた患者さんが利用する場所であり、見た目ではわからないけれども、障害や不自由さを持っているなど、まさにこのヘルプマークを必要としている方がたくさんいらっしゃいます。そうした方にこのヘルプマークをさらに認知していただくことは大変重要と思います。
都立病院でもこれまで、このヘルプマークの周知に協力をしてきたことは私も存じておりますが、さらに取り組みを充実すべきと思いますので、所見をお伺いいたします。
谷田サービス推進部長
ご指摘のとおり、都立病院に来院する患者の中には、例えば人工関節を有する方や難病の方など、外見からはわからなくても、支援や配慮を必要とする方がいらっしゃいます。こうした方にヘルプマークの存在を知っていただき、活用していただくことは非常に重要であります。
これまでも、都立病院では、ヘルプマークに関するポスターを外来に掲示するなど、患者さんや来院者への周知を図ってまいりました。ヘルプマークをさらに広めていくため、今後、全ての都立、公社病院で、患者支援センターの窓口など、希望される方に対し、ヘルプマークの配布を行ってまいります。
同時に、病院の職員が、ヘルプマークをつけた方に対して声がけなど適切な対応ができるよう、目的、意義について改めて周知を行います。
障害を持つ方はもちろん、都立病院を訪れる全ての方が安心して受診できるよう、さまざまな角度からサービス向上の取り組みを進めてまいります。
山加朱美
どうぞよろしくお願いいたします。
私も都立病院、よく整形外来を、私も人工股関節ですから、受診をするときに、ポスターを張っていただいているなあと。しかし、何カ月かすると、ポスターですから、汚れたり破けたりすると思うんですけれども、何かいつの間にかなくなっていたり、やはりポスターを継続して張っていただく、そのことに意味があると思いますので、ぜひ破れたり汚れたりした場合には新しいものに張りかえるような努力をしていただきたいなと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、精神保健指定医についてお伺いをしたいと思います。
先月末に、精神科医師の持つ専門資格であります精神保健指定医の資格の不正取得があったとして、厚生労働省は、全国で八十九名という精神保健指定医の資格取り消し処分を発表いたしました。八十九名という前例のない大規模な処分であったことから、新聞やテレビで大きく報じられたのは記憶に新しいところであります。
そもそも、この処分の発端は、昨年、聖マリアンナ医科大学病院で、実際に診察していない患者のケースレポートを使用して指定医資格の不正取得を行ったとして、二十名以上の医師について資格の取り消し処分が行われました。これを機に、厚生労働省が過去に提出された全国のケースレポートを調査したところ、指定の取り消しに相当する事案が多数確認されたためとのことであります。
精神保健指定医は、精神保健福祉法に定める医師の国家試験で、精神科医療において、患者本人の同意によらずに措置入院、身体拘束の判定を行うなど、患者の人権を制限する極めて責任を持つ者ですが、残念なことに、今回取り消し処分を受けた八十九名の中には、申請当時、都立病院に所属をしていた医師が五名いました。三名が多摩総合医療センター、二名が松沢病院の医師でありました。
この五名中四名は既に退職をしているとのことですけれども、現在、その医師がいないとしても、都立病院で起きた事故であることは変わりがありません。
今後、このような事故を起こさないためにも、不正取得であると認定された具体的な原因を追及することは不可欠であります。
資格取得の手続としては、一定の臨床経験を積んだ後、厚労省の定める八つの症例に関するケースレポートを提出し、厚生労働省の資格審査を受けるという流れでありますが、さきの聖マリアンナ医科大学の事例では、あってはならないことですが、先輩医師からケースレポートのデータを使い回しし、ほぼ同じ文章で提出することが常態化していたとの報道もあります。
都立病院で今回のような不正取得の発生した原因や背景について、どのように考えているのか伺います。
谷田サービス推進部長
今般の取り消し処分を受け、指定医本人に当時の状況を確認したところ、いずれの医師も、患者へのインタビューやカンファレンスへの参加など、患者の診療には関与していたとのことでございますが、カルテへの記載が不十分でございました。
一方で、厚生労働省の発表によれば、ケースレポート症例は、診断または治療等に十分なかかわりを持った症例としては認定されなかったとのことでございます。
このような事案が生じた背景としては、法令に定める申請要件に対する医師本人の理解が不十分であったことに加えまして、法令によれば、ケースレポートの症例管理は、申請する医師本人と指導医のみで行われ、申請手続も医師みずからが行う仕組みになっていることなどから、組織的なチェック体制が不十分だったことなどが考えられます。
山加朱美
ご答弁で、指定医本人の話によると、関与の度合いはどうあれ、患者の診察には携わっていたとのことであり、マスコミで報道されているような、診察をしていない患者についてケースレポートを使い回すような組織的な不正ではないと思われる。その一方で、ケースレポートの作成から提出までの一連のプロセスが医師個人に委ねられており、組織的に管理する体制が欠如していたことは問題であろうかと思います。
二度とあってはならないことですが、今後再び資格の取り消し処分を受けるような事態を招かないために、具体的にどのように再発防止に取り組むつもりか、所見をお伺いいたします。
谷田サービス推進部長
今回の取り消し処分が発表された翌日に緊急の事務局長会を開催しまして、全ての病院に対し注意喚起を行うとともに、再発防止を指示いたしました。
具体的には、厚生労働省が定めます精神保健指定医の新規申請等に係る事務取扱要領の内容を再度確認し、申請要件等への理解を深めるとともに、ケースレポートへの症例重複が起きないよう、診療科内での管理を徹底すること、事務局でケースレポートのデータベースを作成し、管理を行っていくことといたしました。
今後は、組織全体で資格取得手続や症例管理を行ってまいります。
山加朱美
ぜひ実効性のある確実な再発防止策を講じていただきたいと思います。
そして、再発防止と並んで重要なのが、当該指定医のもとで診療を受けていた患者さんへの影響であります。
先ほども申し上げましたが、精神保健指定医は、措置入院、身体拘束など、本人の同意なしに、その権利を制限することができます。
当該指定医が行った業務について、判断は適正であったかなど確認を行っているのか、また、患者さんの不安の払拭に向け、どのように取り組んでいるのかお伺いいたします。
谷田サービス推進部長
今回の取り消し処分は、過去にさかのぼらず、本年十一月九日付で資格を取り消すものでございましたが、両病院では、患者の人権擁護を第一に考え、厚生労働省の指示を待たずに、過去に行いました指定医業務の有効性の検証に着手しております。
具体的には、措置入院や医療保護入院の判断など、当該指定医が在籍中に行いました全ての指定医業務について、副院長や他の精神保健指定医が診療録等により確認を行っているところでございまして、その結果を踏まえまして、対応については検討してまいります。
厚生労働省から指定医業務の有効性確認等について指示があった場合には、別途、適切に対応してまいります。
また、患者を含めた利用者、都民に対しては、両病院のホームページにおわびの文書を掲載し、再発防止の徹底など、今後の対応をお知らせしてまいりました。
山加朱美 患者さんへの人権擁護を第一に考え、迅速に検証に着手しているとのことでありますが、厚生労働省や福祉保健局の方針に従って、今後も適切に対応していただきたいと思います。
また、精神保健指定医については、ことしの二月にも、都立病院の医師が指定医の資格更新を怠り、資格を失効したまま業務を行ったとして、停職七日間の、このときは懲戒処分を受けています。
厳しいことを申し上げますが、今回の資格の取り消し処分といい、続けざまにこのような事故が起こっていることは、都立病院に対する信頼が大きく揺らぎかねない事態と憂慮しています。この際、過去の事例も含めて徹底的に問題点を洗い出し、うみを出していくべきと思います。
これまでの事故を受け、医師の専門資格の管理について、病院経営本部として今後どのように対応していくのかお伺いいたします。
谷田サービス推進部長
これまでの二つの事案を受け、既に各病院では、精神保健指定医を初めとする医師の専門資格の確認やケースレポートのデータベースの作成など、病院全体で資格を管理する仕組みを構築するとともに、医師の資格更新等について総点検を実施いたしました。
その結果、現在、精神保健指定医の更新手続の不備が疑われる事案があることから、確認を行っており、事実関係が明らかになった段階で適切に対応してまいります。
精神保健指定医は、精神疾患の治療に伴う非自発的入院、隔離、拘束など、患者の人権制約を含む治療上の決定を行う権限を持つもので、この資格について不正取得があったことは、精神科医療全般に対する信頼を損なうことに通じるものであり、この事実を深く受けとめまして、再発防止に努めてまいります。
山加朱美
ぜひとも不適正な事例は、ぜひ今回で終わりにしていただいて、いま一度都立病院が都民からいかに必要とされ、そのことを肝に銘じて信頼回復に努めていただきたいと思います。
次に、広尾病院の改築についてお伺いをいたします。
都は、国に先んじて、三百六十五日二十四時間体制で救急医療を提供する東京ERを、墨東病院に続いて都立広尾病院に開設をしました。
そして、広尾は、阪神・淡路大震災以降も基幹災害拠点病院にも指定され、都の災害医療を牽引する重要な役割もこれまで担ってきています。まさに、多くの都民を救う命綱であります。
そして、オリンピック・パラリンピック大会が開催される二〇二〇年に向けて、今後、都を訪れる外国人、また在留外国人のさらなる増加が今予想されている中で、都立病院として最も多く外国人患者を受け入れてきたのが広尾病院であります。ですから、この広尾の役割はますます高まっていることは、いうまでもありません。
厚生委員会の管内視察で、私たちは平成二十五年十二月に広尾病院の視察をさせていただきました。その際、党派を超えてかなりの方が、施設が大変老朽化していることをこの目で見て感じてまいりました。抜本的な改築の必要性を私も感じましたし、ほとんどの委員の方も感じられたと思います。
例えば、東京ERと一般病棟の入り口は別でも、中に入りますと、ERから入った大変重篤な患者が、一般の外来で来ている方の動線で、前を通ってレントゲン室に入るとか、まるで動線も分けられていない。そういう意味でも改築の必要性を感じたわけであります。
そのような中、今年度、広尾病院を改築して首都災害医療センター、仮称ですが、整備に向けた検討が始まったものと認識をしています。
そこでまず、なぜ今、広尾病院の改築が必要であるかについて、改めて確認の意味でお伺いしたいと思います。
谷田サービス推進部長
委員ご指摘のとおり、現在の広尾病院の中心となる建物は、昭和五十五年竣工でございまして、築三十六年を経過し、施設整備を検討すべき時期に来ております。
また、建築当時、災害拠点病院を想定した設計となっていないことから、玄関前や院内にスペースの余力がなく、災害時に多くの傷病者を受け入れるためのスペース確保などに課題がございます。
今回の改築は、施設老朽化への対応と、広尾病院の担う重要な役割の一つでございます災害医療機能の強化の二点を主な目的としております。
病院の改築には、工事竣工に至るまで多くの手順が必要でありまして、一定期間を確保し、改築を計画的に進めていくため、今年度基本構想の策定に着手することとしたものでございます。
山加朱美
改築の必要性についてはわかりましたが、広尾病院の改築に当たっては、現地建てかえ、改修、移転について、かなり検討してきたと聞いております。
それぞれの手法について、改めてどのような課題があるのかお伺いいたします。
谷田サービス推進部長
現地建てかえでは、工事期間中に診療制限が伴うため、いつ起こるかわからない災害への対応という観点からは、災害拠点病院としての機能維持に課題が残ります。
改修では、工事期間中の診療制限のほか、災害時のスペース確保といった課題を抜本的に解決することが困難でございます。
もっとも、移転におきましても、土地取得コストや患者の受療動向が異なることへの対応などの課題が生じるものでございまして、どのような方法によっても、解決すべき課題は生じるところでございます。
山加朱美
現地建てかえ、改修、移転、いずれの方法においても大なり小なり課題があることがわかりました。
私も、先ほど申し上げたように、委員会で視察をし、この老朽化した広尾病院を拝見し、都民の命をしっかりと守るためにも、やはり改築は必要と思っておりましたので、委員会でも何度か改築が必要ですよということを、特に二〇二〇年オリンピック・パラリンピックに向けては、海外から大勢の皆様がこの日本にいらっしゃって、そして世界で一番の首都を目指しているわけですから、世界で一番の医療を提供しなければならない。その意味でも、現在の広尾の改築は必要と申し上げてきました。
そして、今回の改築について、ことし三月の厚生委員会においても、都民にとっても大変喜ばしいことであると思う旨を述べましたのは、言葉だけがひとり歩きをすると、その前後の意味がわからない方もいらっしゃいますので、現地建てかえや移転新築のいずれがよいということではなくて、老朽化した広尾の施設への対応に今までめどが立っていなかったわけですから、一応のめどが立ったことに対して、都民にとっても喜ばしいと述べたわけであります。
今答弁いただいたように、いずれにしても課題があることからすれば、大事なことは、場所がどこであろうとも、今回の改築が都民にとって喜ばしいことであるかどうかであります。
そこで、都民の期待にしっかりと応えていけるよう、広尾病院の役割の検討を今後どのように進めていくのか伺います。
谷田サービス推進部長
広尾病院の改築は、平成二十六年度から検討を開始し、施設の老朽化対応とあわせ、災害医療機能の向上を図ることを前提としてまいりました。
具体的には、整備手法として、現地建てかえ、現地改修、移転新築のそれぞれに課題が伴うことを念頭に、整備期間中、広尾病院の重要な役割の一つである基幹災害拠点病院の機能を維持することに重点を置いてまいりました。
今年度、専門家や関係者を加えた基本構想検討委員会を立ち上げ、これまでの経緯を詳しく説明するとともに、現在の広尾病院の特徴について意見を交換してまいりました。
今後は、病院運営の現状分析だけでなく、地域医療構想策定の動きを踏まえ、将来担うべき医療や地域との協働関係のあり方など、さまざまな観点から議論を深めていく必要がございます。
こうした議論を重ねながら、今後の広尾病院が目指すべき病院像を見きわめ、都民の期待に応える病院となるよう、改築のあり方全体を検討してまいります。
山加朱美
今、都政はこれまでになく厳しい都民の目にさらされています。都庁内の各局は、それぞれ真摯に行政運営に取り組んでいると信じていますけれども、これまで以上に汗を流して、適切な行政運営を心がけ、都民の信頼を回復しなければならないと思っています。
そこで、都民から信頼される都立病院の運営に向けた本部長の強い決意を最後に伺い、私の質問を終わります。
内藤病院経営本部長
都立病院は、行政的医療や総合診療基盤に支えられた高度な医療サービスをいっときも、一刻も欠かすことなく提供してございまして、その役割、責務は極めて重いものと認識してございます。
ただいまご質疑いただきました、まず広尾病院の改築に当たりましては、引き続き、基本構想検討会の場などを通しまして、必要な医療機能や規模等に関する議論を丹念に重ねながら新しい病院像を見きわめ、患者や地域の方々からも、より一層頼りにされる病院を築いてまいりたいと考えております。
また、精神保健指定医の問題につきましては、精神科医療そのものの信頼性を損なうことになりかねず、まさにあってはならないものと認識してございます。ご指摘を重く受けとめまして、再発防止に全力で取り組んでまいります。
地域医療のあり方が大きく変化する中、これからの都立病院が担うべき医療につきまして改めて検証、検討し、来年度策定する次期中期計画にも反映していく予定でございますが、その前提といたしまして、何よりも欠かせないことは、都民や地域からの信頼だと認識しております。
都民の生命と健康を守るという使命のもと、これまで以上に信頼される都立病院を目指しまして、各病院現場と経営本部とが一体となって、日夜、安全・安心な医療の提供に万全を期してまいりたいと考えております。
出典:厚生委員会速記録第十五号 https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2016-15.html
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