議会質疑
PARLIAMENTARY QUESTION
厚生委員会
2016年3月14日 平成28年厚生委員会第3号
山加朱美
私からは、都立広尾病院の整備について、お伺いをしたいと思います。
来年度の予算原案において、都立広尾病院が平成三十五年度の開設に向けて、仮称ですが、首都災害医療センターとして移転改築することが明らかになりました。
私は平成十三年に初当選をいたしましたが、都は、国に先んじて三百六十五日二十四時間の救急医療、東京ERを開設、まず墨東、そして続く広尾となったわけでありますが、そういう意味においても、広尾病院は都の災害医療、そして救急医療を牽引する都立病院として大変重要な役割を今まで担ってまいりました。これからもそうであります。
築三十五年が経過をし、設備も大変古くなっている。また、今後も、その重責を果たしていくためには、抜本的な改築が必要ではないか。私は以前から将来を見据えた十分な対策を検討すべきと、当委員会でも提案をしてまいりました。
広尾は昨年、開院百二十周年ということで、私ども厚生委員会のメンバーも党派を超えてお招きをいただいたわけであります。百二十年の長きにわたって、現在の地で医療を提供してきた病院でもあります。現在地での改築は実現をしなかった、これは建蔽率とかいろいろな問題があると思いますが、しかし、旧青山病院跡地への移転改築という形で建てかえが実現をするということは、都民にとっても大変喜ばしいことであると思います。
しかし、移転改築が七年後でありますね。それまでには東京のみならず、この日本が、本当に大きな国際的なイベント、二〇二〇東京オリンピック・パラリンピック、これを控えているわけであります。現在地で迎える、この東京大会への対応をしっかりと行うことが重要であると思います。
二年ほど前、当委員会でも、当時まつば委員長でありましたけれども、この厚生委員会で広尾病院の管内視察を行ったことがございます。今の委員の中でも三分の一ぐらいが当時、管内視察で広尾を訪れていますが、その際、先ほど申した東京ERなどの重要施設の老朽化がかなり進んでいるなと。
救急でERに入った方は当然、一般の入り口とは違う入り口から入る。入り口は別々なんですが、中の動線はなぜか一つになっているんですね。つまりERで運ばれますから大変な、ひどい状態になった患者さんもいらっしゃる。それが一般外来で来ていらっしゃる人々の前を通って治療室に行くという大変--救急患者の動線が分かれていない、また、患者のプライバシーへの配慮が不十分である。
国際水準に照らしても改善すべき課題が多いねということは、当時視察に参加をした厚生委員会の党派を超えて、それぞれ共通の意見を持ったところでありました。
東京二〇二〇大会では、世界各国からVIP、そしてまたアスリート、まさに〇・〇一秒を競うトップアスリートが、全てこの東京に集結するわけでありますね。そして観光客、現在の広尾の地でも、今は立地的にも各大使館が非常に多いということで、都立病院の中でも一番、外国の患者さんが非常に多い病院でもあるわけですが、さらにその観光客がふえていくと思います。首都東京の顔にふさわしい機能と設備を備える必要があります。
まずは、東京二〇二〇大会に向けて、現在の都立広尾病院の施設をどのように整備をしていくのか、お伺いをいたします。
中野経営企画部長
東京二〇二〇大会を迎えるに当たりましては、自然災害やテロなどのリスクにも備えつつ、国内外から訪れる方々が安心して医療を受けられるよう、必要な施設整備を行う必要があると考えております。
具体的には、今、ご指摘のありました初期診療室の移設をしまして、災害時には多くの患者に対応できるようスペースを拡張するとともに、二つのフロアに分かれている救命救急センターを集約し、救急搬送から入院に至るまでのワンフロア化を実現いたします。
また、患者のプライバシーを確保するため、新たに救急患者の専用動線を整備いたします。
これらの改修工事につきましては、来年度から二カ年にわたって実施いたします。
さらに、大会までに汚れた外壁の補修ですとか内装リフォームを行うとともに、外構整備や緑化対策などにも取り組み、可能な限り快適な環境を得られるよう配慮いたします。
こうした取り組みにより、大会の成功に向けて万全の準備を進めてまいりたいと考えております。
山加朱美
今後も、今まで以上に都民、そして東京に訪れる外国人が安心して医療を受けられるようにするためには、必要な改修はぜひとも計画的に進めていただきまして、広尾病院に期待する都民の一人として、しっかりとした取り組みをお願いしたいと思います。
今のご答弁によって、ハード面での整備はしっかりとしていかれるようでありますが、しかし、東京二〇二〇大会開催時には、ソフト面においても外国人患者の受け入れ体制を整えていくこと、これは大変重要と思います。
広尾は、たしか昨年の八月に厚生労働省によって、全国で十九カ所ある医療通訳拠点病院の一つに認定をされています。
また、外国人患者への対応を、さらに進めているとも聞いておりますけれども、私たち日本人もそうですが、海外に行ったときに最も不安なことは、病院に行ってコミュニケーションがとれないことであると思います。ですから、訪れる外国人にとっても同じであろうかと思います。
診療に当たって最も大切なことは、患者と医療者とのコミュニケーション。コミュニケーションの基本は会話であります。
広尾病院では外国語での対応が必要な外国人患者に対して、どのような対応を現在行っているのか、対応状況について、まず、確認のためにお伺いをしたいと思います。
中野経営企画部長
広尾病院では、現在一カ月に外来、入院合わせまして五百人を超える外国人患者が受診しております。日本語での診療が困難なため、英語や他の言語により診療等の対応を行った者は、ことし一月実績でございますが、百十八件でございました。
広尾病院では、平成二十六年度から二カ年にわたり、語学リーダー養成コースという職員向けの語学研修を実施しておりまして、これまで看護師やコメディカル職員二十三名が受講し、病院現場での実践的な英会話を学んでまいりました。
外国語での診療が必要な場合には、各診療科の医師、看護師を初めとしたコメディカルが対応するほか、必要に応じて、平成二十七年度から新たに配置した英語、中国語の外国語医療相談員が医療通訳としての役割を果たしておりまして、外国語医療相談員が従事している平日の日中は、全ての診療科で英語、中国語での対応が可能となっております。
こうした対応が評価されまして、昨年八月に医療通訳拠点病院として認定されたことに加えまして、今月四日に観光庁が発表いたしました、訪日外国人旅行者受け入れ医療機関の都内十カ所のうちの一つにも選定されております。
平成二十八年度には、外国人患者が円滑に医療を受けられるように病院内外の調整を行います、外国人向け医療コーディネーターに看護師を配置いたしまして、体制の強化を図っていきたいと考えております。
山加朱美
今、ご答弁の中にもあった今月の四日、観光庁が公表した訪日外国人旅行者受け入れ医療機関、都内十カ所の中の一つに広尾が入っているということでありますが、これは都立では唯一、広尾病院が名を連ねているわけであります。大変、都立病院を牽引するという意味でも心強いことと思います。
都立病院では、東京二〇二〇大会の前年までに、全ての都立、公社病院で、外国人患者受け入れ医療機関認証制度、JMIP、これは多言語での診療案内、日本人とは異なる文化、背景等に配慮した外国人患者の受け入れ体制が整っている医療機関に与えられるものでありますが、この取得を目指していると聞いております。
取得をすれば、広尾が都立初の取得に取り組んでいくという方針になるわけであります。医療の質が強化されていることはもちろんですけれども、外国人の患者が安心して医療サービスを受けられる、その環境を整えるためには、さまざまな配慮が必要だと考えます。
そこで、広尾病院では、外国人患者が安心して診療を受けられる環境をどのように整備をしていくのか、今後の具体的な取り組みについてお伺いをしたいと思います。
中野経営企画部長
現在、広尾病院では職員の語学力の向上を図る一方で、多言語翻訳アプリ等を登載しましたタブレット端末を、言語サポートツールとして活用を図っていくための試行を行っています。
今後は、受診の流れや検査の受け方などをわかりやすく説明する動画機能を盛り込むなど、活用方法の検討を深め、他の都立病院への展開を視野に入れ、試行状況の検証を行ってまいります。
また、院内案内表示につきましてはデジタルサイネージを活用し、日、英、中、韓の四カ国語のほか、フランス語とスペイン語等を含めた多言語案内表示のあり方を検討してまいります。
さらに、職員の誰もが外国人患者に対し、適切な対応がとれる体制を構築するために、各部門で想定される場面に応じた外国人患者対応マニュアルを作成し、万全の対応を図ってまいります。
こうした取り組みを通じまして、広尾病院では、平成二十九年度までにJMIPの認証を取得し、他の都立病院の外国人患者対応を牽引してまいります。
山加朱美
さまざまな外国人の旅行者受け入れに対して、体制整備に向かって力を注いでいただいていることがよくわかりました。
広尾は通訳の拠点病院には、もう指定をされている。そして、来年までにはJMIP、そして、さらにいえば、私はやはり海外から来る皆様方というのは、日本人の感覚以上にさまざまな、どのような病院が認証の許可を得ているのか、そのことに大変関心が強いと思うんですね。
先ほどの観光庁発表の訪日外国人旅行者受け入れ医療機関の、まさに十カ所の病院の中の一つに広尾は一覧として入っているわけですから、インターネットで救急と引けば、都立は広尾と一カ所が出てくるわけであります。
通訳拠点病院、そしてJMIP、そしてさらにいうならば、世界の標準である国際病院評価機構、ジョイント・コミッション・インターナショナル、JCIというのがありますが、これは非常に検査項目も、JMIPよりも項目が多く、そしてまた、今度、広尾がさまざまな改築もしていきますから、その中では、それに合う基準にもなっていきますので、ぜひ、この三つをしっかりと取っておくことも、東京二〇二〇に向かって海外から来る皆様方に、さらに、世界の中で国際医療機関としての、しっかりとした地位も確立できるのかなと思いますので、私の意見ですけれども、添えさせていただきたいと思います。
今まで以上に、広尾病院でのこうした外国人患者対応のノウハウの蓄積が、七年後の首都災害医療センター(仮称)にしっかりと引き継がれ、国際化に対応した医療につながっていくものと思います。
まさに、オリンピックのレガシーとして、成熟した国際都市東京を医療で支えていくために、さらなる高みを目指し、医療の質においても国際標準、これが大事だと思います。
国際標準を満たした世界に誇れる医療機関としての展開を、私は大きく期待をしたいと思います。
最後になりますが、広尾病院がこれまで担い続けてきた医療、中でも災害医療は多くの都民を救う命綱でありました。首都災害医療センター(仮称)の整備に当たっては、大変立地条件のいい、好立地での移転改築となるこのメリットを最大限に生かしていただき、十分に踏まえ、災害時においては、いつ何どきどんな災害があるかわからないわけであります。
災害時における他県からの応援職員の受け入れ環境の整備、そしてまた被災者等の一時避難場所の確保、これは現在の広尾病院では対応が困難であった機能であります。ぜひ詳細に検討し、災害拠点病院としてさらなる進化を遂げていただくことを大きくご期待申しております。
改めて、首都災害医療センター(仮称)の整備について、本部長の強い決意をお伺いしたいと思います。
真田病院経営本部長
まずもって山加先生には体調がすぐれない中、広尾病院に対する本当に熱い思いと貴重なご意見、ご提言いただきまして、本当にどうもありがとうございます。
今、お話にありました広尾病院ですけれども、今度、移転しまして、首都災害医療センターということで整備してまいりたいと考えておりますが、広尾病院は、都心部で唯一となる基幹災害拠点病院として、首都直下地震などの自然災害だけでなく、NBC災害あるいはテロなど、首都東京を脅かす新たな災害への対応が求められておりますので、今回施設の更新の機会を捉えまして、抜本的にその機能を強化することといたしました。
移転改築に当たりましては、あらゆる災害に対応するため、基幹災害拠点病院としての機能を抜本的に強化するとともに、その機能強化の中には、今、お話しいただきましたような帰宅困難者の対策ですとか、その他もろもろお話しいただきましたので、そういったこともぜひ考えていきたいと思っております。
また、平常時の医療としましても、スポーツ医学に基づく医療、あるいは国際標準、これも今回いろいろご意見いただきましたけれども、こういったことも踏まえまして、国際標準に対応した医療など、新たに対応すべき医療課題にも取り組んでいきたいと考えております。
来年度は、外部有識者を含む基本構想検討委員会を設置いたしまして、新たな災害医療の拠点として、平成三十五年の開設に向けて基本構想を取りまとめてまいります。
構想の策定に当たりましては、これまで広尾病院が積み重ねてまいりました実績、あるいは信頼を継承しつつ、将来にわたり都民の生命と健康を守り続ける病院としまして、確実にその責務を担っていけるよう、先生方のご指導もいただきながら、職員一丸となって準備に万全を期していく決意でございます。
その中で、先生のご期待を裏切らないような、いい病院をつくってまいりたいと考えておりますので、ぜひ今後ともご支援いただきたいと思います。
山加朱美
ありがとうございます。七年後の移転改築に向けて、本部長の強い決意のほどが伝わってまいりました。大変心強く思うところであります。
今、本部長の答弁の中にも、来年度は、外部有識者を含む基本構想検討委員会を設置して、基本構想を取りまとめていくということでありますが、外部有識者の方たち、もちろん、それぞれの見識者がそろうわけでありますけれども、やはり百二十年の歴史の中で、そして日本で、国を先んじて、都で東京ER、救命救急に力を注いできた、さまざまな現場の声というのは、やはりしっかりとその中に生かされなければ--それが私は一番大事なことだと思っております。
移転改築は七年後、その前に二〇二〇東京大会をしっかりと超えなければなりません。さまざまなテロ医療、そして今、本部長がスポーツ医学に基づくという、それは新病院、七年後のことでありますが、しかし、〇・〇一秒というのは大変な、トップアスリートは普通のリハビリとはちょっと違うと思いますので、それをどのようにオリンピックのときに支えていくのか。そしてまた、テロといっても、病院そのものがテロの標的になる可能性もあるわけですから、もうテロ医療だと私は思います。
テロ医療にもしっかりと前向きに取り組んでいただきたい。そのことを強く強くお願いを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
出典:厚生委員会速記録第三号 https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/welfare/2016-03.html
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