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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

厚生委員会
2022年11月8日 令和4年厚生委員会第14号

山加朱美
 大分お疲れと思いますが、私の常識の範囲で、テーマを一つに絞って質問させていただきますが、後ほど、委員会以外のところでお聞きしたいことは伺おうと思いますので、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。  私がこのヘルプマークを提案いたしましたのは、(実物を示す)ちょうど十年前、二〇一二年でありました。
 私は三十代の半ばで、たった一日を境に、納得のできない不条理な事故によって機能欠損を持ちました。先ほど、どなたかの会派、白石委員でしたね、ベッドで動けないまま天井をじっと見ている、そんな話で、私は自分自身の動けなかった、全く身動き一つできなかった七か月の大変苦しい時間を思い出してしまいました。その後、私は、不条理によって機能欠損を持つ、事故や病によって機能欠損を持つ、それは誰にでも起こり得ることであり、明日は我が身だなと思いました。
 でも、明日は我が身と思ったその私が、数年後に余命二年かな、三年かなという不条理な、また、がん告知を受けました。しかしながら、十年のがんサバイバーの壁を越えました。しかし、壁を越えたからといって、不安がなくなるわけではありません。想像を絶する大変厳しい抗がん治療がありました。恐らく経験者でなければ分からないと思います。
 そんな自分自身の体験の中から、私は十年前、外から気がつかない、分からない、そんな援助や配慮を必要とする方のマーク、東京都はもちろんですが、日本にはまだそういうマークがないということで、このマークを提案いたしました。所管の福祉保健局がこの提案を受け、その年の十月に、実際にこの形を作っていただき、製作をしてくださいました。
 思い出に残っているのは、元東京都知事、石原慎太郎知事が退任をなさるとき、各会派にご挨拶に回られ、自民党にもお越しをいただきました。私の前を通るとき、今月の「広報東京都」、最終ページの一面はヘルプマークだよ、そんな温かな言葉を思い出します。  そして、このマークを提案してから五年後、このマークは見事にJISの新しい福祉のマークに追加をされました。このときには、国の安倍晋三元総理が、必要な方がつけていても、それを見る周りの方が一〇〇%このマークを認知しなければならない、啓発が必要であると、そんな温かな言葉をくださいました。
 今年、お二人とも同時に逝去されました。このマークを大きく後押しくださった偉大なこの二人の政治家に、心からの哀悼の意と、そして感謝と御礼を込めて、私は今日、自分自身が提案した、そしてちょうど十年の節目となるこのヘルプマークについて、皆様方にお伺いをさせていただきたいと思っています。
 先ほど中山副委員長も、聴覚の不自由な方に、言葉が文字になって出てくる、そんな提案をなさいました。実は私は、ヘルプマークを提案したときは聴力に異常はなかったんですが、現在は、補聴器を外すとほとんど自分の声が取れません。このようにデジタルといった機械の進歩によって、声が言葉になって出てくる、それを見て助けられております。
 どんな機能欠損を持っても、やはり自分自身の人生ですから、最大限の自助努力をしなければなりません。それは当然のことであります。しかし、ちょっと社会参加をして、助けが欲しい、配慮が必要だ、そんなときにこのマークを見て助けてくださる、そのことによって、どんなに生き生きと、また明日への希望を持って生活のできる方がいらっしゃるか、そのことをぜひ心の中に置いていただきたいと思っております。
 このマークは、皆様も恐らく私が提案したとき、私自身もそう思っていませんでした、全国に広がるとは、恐らく所管局、福祉保健局の皆さんも、そう思っていなかったと思います。
 でも、このマークを提案してしばらくたって、若い方が、私はこんな障害を持っている、だけれども、このマークが必要なマークである、だから一生懸命啓発しています、そんなSNSが届きました。
 若い方がこのマーク、今までと違う、つまり障害や不自由さを持つと、どうしても自分がこんな障害がある、こんな不自由さがあるということを表に出すのは、ちょっとためらうときがあるんですが、でも、皆さん堂々と明るく、そして、自分自身が持っている、抱えている、配慮の必要な、そんな生活の中で、このマークの啓発に努めてくれている。このことが、私は、この福祉のマーク、ヘルプマークが十年かけて全国に広がり、そして、昨年の秋でしたか、最後の一県、熊本県が導入を決めてくれ、全国四十七都道府県全て、このマークが広がったわけであります。
 皆様方のお力添え、心から感謝をしたいと思います。そして同時に、全国でこのヘルプマークの啓発に携わってくださった一般の国民、都民、そんな人たちの心のつながりにも感謝を申し上げたいと思っております。
 さて、五年前、平成二十九年、JISに入りました。このJIS、日本産業規格、日本の国家規格、国家の標準の一つでありますJIS、新しい福祉のマークに、この東京都から発信をされたヘルプマークが追加をされました。
 JISにはISO、これは全世界で統一された規格を制定している国際標準化機構ですが、ISO、国際規格に準じ、公共の福祉の増進に寄与することを目的とし、事業者等の国際標準化の促進に向けた努力義務規定も含まれていると認識をしております。
 JISに採用されたことで、先ほど申し上げました全国の都道府県が追従をし、時間がかかりましたけれども、全国でヘルプマークが導入をされたわけであります。
 確認の意味で、現在のヘルプマークの認知度をお伺いいたします。


中川障害者施策推進部長
都が令和三年度に実施いたしましたインターネット都政モニターアンケートにおいて、ヘルプマークを知っているか聞いたところ、意味も含めて知っていたが六四・九%、見たことや聞いたことはあるが、詳しい意味は知らないは二三・〇%、知らないは一二・一%でございました。
 ヘルプマークの意味も含めて知っていた人については、二年前の前回調査から約六ポイント増加し、見たことや聞いたことはある人も含めると、ヘルプマークを知っている人は約九割となっており、前回調査から約五ポイント増加しております。

山加朱美
 ありがとうございます。
 ヘルプマークの認知度が約九割に高まったことは、数字としては評価をしたいと思います。しかしながら、ヘルプマークを身につけている方が、いつでもどこでも必要としているときに支援を受けられ安心して社会参加するためには、やはり一〇〇%の認知度が必要であります。
 ぜひとも東京都から発信されたこのヘルプマークが、全国共通の福祉マークにまで育ったわけですから、東京の意地と誇りを見せていただきたいと思います。提案者として心から切望いたします。
 また、ヘルプマークの所管は福祉保健局ですが、当時、このヘルプマークの連携、一番頑張ってくださったのが、私は交通局だと思っております。都営交通、どの駅にもヘルプマークのポスターが掲示をされていました。
 ちょっとそれますが、ポスターができたとき、私の手で一番最初に届けた事務所、つまりヘルプマークを提案し、ヘルプマークのポスターができましたと最初に見せに伺ったのが、練馬区で当時、自民党の衆議院議員として私としっかりと連携を取っていた現在の東京都知事、小池百合子事務所でありました。私が一枚目に届けた場所がそこであります。
 ちょっと横にそれましたけれども、多くの人に知ってもらうためには、区市町村の窓口など、地域住民にとって身近な場所に啓発ポスターを貼るなどの啓発活動をさらに進めていただきたいと思います。
 そこで、区市町村が包括補助事業を活用して、庁舎等にヘルプマークのポスターを貼るなどの普及啓発にさらに取り組むように、都としてもっと積極的に働きかけるべきと考えますが、見解を伺います。

中川障害者施策推進部長
都は、ヘルプマークの普及に取り組む区市町村を支援するため、包括補助において、ヘルプマークの製作、配布、地域の公共施設やコミュニティバス等へのステッカーの表示、広報媒体での普及啓発に関する経費の二分の一を補助しておりまして、令和二年度までに三十一区市町村で取り組んでおります。
 ヘルプマークに関する区市町村の取組が一層進むよう、包括補助の事業説明会や区市町村との会議などの場を活用し、今後とも積極的に働きかけてまいります。

山加朱美
 ぜひ今後とも区市町村と連携をしながら、ヘルプマークの一層の普及に取り組んでいただきたいことをお願い申し上げます。
 また、JISに追加をされてからは、辞書にもヘルプマークと調べますと記載があります。教科書の福祉マークにも、このヘルプマークが載っております。次の世代につなげるためにも、子供たちの理解を促進することも大切なことだと思います。
 実は、数年前には、私がヘルプマークを提案し、JISに入ってその後すぐですが、三重県から中学生の三人の学生さんが担任の先生に引率されて、練馬の私の事務所に、ヘルプマークをテーマにしたいので提案者にインタビューをさせてくださいという、大変かわいらしいインタビュアーが事務所にお越しになられました。
 その後も、学生さんがよく、このヘルプマークをテーマにしたいので、どういうことでこのヘルプマークを提案するに至ったのか、提案者として聞かせていただきたいと。私も昔、インタビューする側の仕事をしていた時期がありましたが、逆にインタビューを受けて少々緊張しながら、かわいいお子様たちがこのマークに対して理解を深め、そしてすばらしい社会をつくっていただきたいなと、本当に温かな気持ちになるところであります。局の皆さんが感じている以上に、若い世代の皆さんが、このヘルプマークに関心を示していることをぜひ忘れないでいただきたいなと思うところであります。
 次の時代を担う子供たちがヘルプマークを正しく理解し、まち中でヘルプマークを使用している人を見たら必要な手助けができるように、局の垣根を超えて、まさに心のバリアフリーにもつながる啓発を行ってほしいと思いますが、そこで、都は、子供たちがヘルプマークを正しく理解できるよう、どのように普及啓発を行っているのか伺います。

中川障害者施策推進部長
都は、ホームページでヘルプマークを広く周知するほか、駅や公共施設等へのポスターの掲示、電車やバスの優先席やホームドアにおけるステッカーの表示、イベントでのチラシの配布などを通じて普及啓発に取り組んでおります。
 また、子供たちが障害や障害者について知り、身近な問題として考える機会となるよう、毎年十二月の障害者週間におきまして、ヘルプマークや障害者に関するマークを紹介するポスターを作成しておりまして、都内全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等に配布し、理解促進を図っております。
 令和二年度には、ヘルプマークを見かけたときの具体的な対応方法を紹介した分かりやすい啓発動画を作成し、都のホームページやイベント等で公開するなど、子供も含め、広く都民がヘルプマークを正しく理解してもらえるよう様々な取組を行っております。

山加朱美
ぜひとも、未来を担う子供たちがヘルプマークを正しく理解し、援助が必要な人へ手を差し伸べることができるように、関係各局が連携しながら、繰り返し繰り返し積極的に啓発を行っていただきたいと思います。
 次に、ヘルプマークの普及が進むにつれまして課題もあります。その一つが、必要な方には全国で無料配布されているはずのこのヘルプマークが、フリマサイト等で有料で転売をされているということであります。転売は一向に減らずに増えていると聞きます。
 もう皆さんの耳にも入っていると思いますが、このヘルプマークの商標権、著作権は東京都が有しているはずであります。都は、このヘルプマーク、耳に入っていると思いますが、その転売について、どのように認識をし、対応しているのか伺います。

中川障害者施策推進部長 
 ヘルプマークの転売につきましては、都としては、あってはならないというふうに考えておりますが、その転売につきましては、商標権を有する都でありましても、法律上規制することは難しいというものでございます。
 このため、都は、ヘルプマークの正しい普及を推進するため、ホームページ上で無料で入手できることを強調して情報発信をしております。昨年度からは、フリマサイト等での売買を控えるよう、ホームページで告知するとともに、全国の配布場所を紹介し、転売者からの購入を控えるよう促すなど、対策を強化しております。

山加朱美 
ぜひ、必要な方が無料で入手できるということを徹底的に啓発、広めていただきたいと思います。
 正しい理解が必要だと思うのは、先日もこんな一件がありました。芸能界のある有名なミュージシャンが久しぶりに作った限定アルバムに、ヘルプマークに似たグッズを付録としてつけたんですね。それが発売前から大変な問題となりました。
 私のところにはフェイスブック等のお友達やLINEのお友達から、こういうことがあるけれども、ヘルプマークに似たマークが付録につくということは、ヘルプマークの提案者としてどう思いますかという、私の方にかなり多くの問合せがありました。
 一件ずつは個別にお答えをしておりませんが、所管局には、芸能界のことではあるけれども、これだけ大きく世間を騒がせているので、注視をしてほしいと申入れをしたところであります。
 早速、大変タイムリーに、所管局は相手のレコード会社に指導を入れてくださいました。そして、指導を受けたレコード会社も大変真摯に対応してくださり、ヘルプマークを知らなかったということが出たわけであります。そして、知らなかったがゆえにこういうことになった、ですから、グッズの変更と、そして、大変申し訳なかったというおわびをホームページに上げていただきました。まさに迅速な東京都の対応に敬意を表したいと思っております。
 外見から分からなくても、援助や配慮の必要な方が真に困っていたら、周りの人々が自然と声をかけたり、手を差し伸べられる社会、そのような温かな共生社会に向けて、ヘルプマークがさらなる心のバリアフリーのきっかけになってほしいと私は願っております。
 そして、このヘルプマークを日本国内だけでなく−−福祉のジャンルで日本から発信をされて世界に通用しているのに、点字ブロックがあります。ぜひ、二つ目の日本から発信される福祉のマークとして、世界に通用する福祉のマークに育てていただきたいと願います。
 そのためにも、ヘルプマークのさらなる正しい理解、啓発のために力を入れていただきたいと願いますが、最後に、ヘルプマークの普及に対する西山局長の強い決意を伺い、私の質問を終わらせていただきます。局長、よろしくお願いいたします。
西山福祉保健局長
ヘルプマークは、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、外見からは分からなくても援助が必要な方が、周囲に配慮を必要とすることを知らせることで、援助が得やすくなることを目的に作成したマークでございます。
 平成二十四年に都営大江戸線で試行を始めまして、翌年には都営地下鉄全線の優先席に導入をいたしました。その当時から委員には、ヘルプマークを推進する立場から、議会においても重ねてこの事業を取り上げていただいているところでございます。
 都営地下鉄の導入後、都として様々な普及啓発を重ねるとともに、多くの自治体や企業、鉄道会社などが賛同して取組が広がりまして、平成二十九年にはJIS規格の案内用記号として全国共通のマークに位置づけられ、令和三年には全ての都道府県で使われるようになったところでございます。
 全ての都民が共に暮らす共生社会を実現するためには、障害のある人もない人もお互いに尊重し、支え合う心のバリアフリーの考えが広がることが重要でございます。
 今後とも、ヘルプマークの理解促進に向けた取組を積極的に進めるとともに、ヘルプマークを身につけた方への援助方法など、より具体的な普及啓発にも取り組みまして、ヘルプマークの定着を一層進めてまいります。



出典:厚生委員会速記録第十四号 https://www.gikai.metro.tokyo.lg.jp/record/welfare/2022-14.html

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