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議会質疑

PARLIAMENTARY QUESTION

本会議質疑
平成二十八年東京都議会会議録第一号

山加朱美
 監査委員を代表いたしまして、過去一年間に実施した監査の結果についてご報告申し上げます。
 監査委員の役割は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務事業を監査することで、都民の信頼を確保していくことであります。そのため、年間を通じて、定例監査、工事監査、財政援助団体等監査、行政監査、決算審査、住民監査請求に基づく監査など、多岐にわたる監査を実施しております。
 この一年間に延べ六百五十七カ所で監査を実施し、問題点の指摘は二百五十九件、指摘金額は約五億円でありました。
 初めに、定例監査について申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。本庁各部の全てと事業所の約四割、合計で四百四十五カ所を対象として監査を実施しました。
 その結果、都営住宅の工事の設計書作成のために構築したシステムを運用開始以来、使用していない事例があったため、システムの活用について検討するよう求めました。
 また、都立学校において、定期点検で不備を指摘された消防用設備の修繕を行っていなかったため、速やかに改善し、生徒の安全を確保するよう求めました。指摘件数としては合計百十五件、金額にして約一億七千万円であります。
 平成二十七年の監査では、庁内で発生した職員による最低制限価格の情報漏えい事件を踏まえ、工事契約に係る価格情報管理を全庁対象の重点監査事項としました。
 その結果、積算情報を記載した電子ファイルにパスワードを設定しないまま共有フォルダに保存していたものなど、六局において関係者以外の者が価格情報を閲覧できる情報となっていたため、管理を適切に行うよう求めました。
 次に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は百万円以上の工事を対象として、千六百八十八件について監査を実施しました。
 その結果、クレーンのつり荷の下に労働者を立ち入らせているものや、掘削作業において崩落事故を防ぐ安全対策を行っていないものなど、危険な施工について指摘し、適切な監督を行うよう求めました。
 また、工事の入札の際に施工条件が適切に明示されていないものや、単価設定、数量算出に関する積算誤りも認められたことから、設計、積算を適正に行うよう求めるなど、合計三十七件の指摘を行いました。
 今回の工事監査の指摘では、設計、積算、施工等に関する知識や理解が不十分である経験の浅い職員が増加していること、また、それに対し、組織的なチェック体制や技術的支援体制が十分に確立されていないことによる基本的な誤りが多く見られました。
 東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、技術職員には、競技施設や都市インフラを短期間で集中的に整備するほか、既存施設の適切な維持管理、長寿命化対策を行い、持続可能な都市を創造していくことが求められます。
 このため、職員の技術力の維持向上や部局を超えて横断的に技術支援する体制づくりなど、組織的な取り組みを求めました。
 次に、財政援助団体等監査について申し上げます。
 まず、補助金交付団体への監査では、百五十六団体を対象に、補助等に係る事業が目的に沿って適正かつ効果的に執行されているかなどについて検証いたしました。
 その結果、例えば、私立学校において、補助対象となる教員数の算定誤りによる過大交付が認められたため、補助金の返還を求めました。
 出資団体への監査では、九団体を対象に、団体の事業が出資の目的に沿って適切に運営されているかなどについて検証いたしました。  その結果、例えば、巡回点検を行って把握した都営住宅の不適正使用について、継続的な指導を行っていなかったため、指導を適切に行い是正を促すよう求めました。
 次に、行政監査について申し上げます。  行政監査は、特定の事務や事業を対象として行う監査であり、今回は、庁舎及び都民利用施設における都民サービスをテーマとして初めて選定し、利用者の視点に立ったサービスの提供ができているか、利用者に対する配慮は十分なものとなっているか、四十七カ所を対象に監査しました。
 その結果、施設の改変に合わせて速やかに案内板等を更新すべきもの、苦情、要望等の利用者ニーズを業務に反映させる仕組みが不十分なもの、都立公園や海上公園においてバリアフリールートの設定、案内を行っていないものなど、三十五件の指摘を行い、さらなる利用者サービス向上のために利用者の視点に立ったサービスの提供や、障害者、外国人等への配慮を求めました。
 次に、決算審査について申し上げます。
 平成二十六年度の決算について、決算の数字が正しいか、予算の執行が適正で効率的に行われているかなどを東京都財務諸表の監査とあわせて審査しました。
 その結果、例えば、財産に関する調書において、土地や建物などの登載誤りが十二件あり、適正に事務を行うよう求めました。
 なお、平成十八年度から導入した複式簿記・発生主義会計による新公会計制度は、決算数値の正確性の担保や資産、負債の管理に有用なものであり、さらなる活用が望まれます。
 次に、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて初めてその目的を達成します。このため、年二回、各局から改善状況について報告を求め、その改善を促しています。過去三年間に行った指摘について見ると、各局が改善に努めた結果、これまでに前年を上回る約九四%が改善済みとなっています。
 具体的な改善事例としては、設計担当者以外の者が閲覧できないよう工事契約の価格情報管理を見直したものや、保育所を運営する社会福祉法人に対する補助金の算定誤りが繰り返されることのないよう、補助制度の再構築に合わせて算定方法を見直したものなどがありました。
 また、監査結果に基づく見直し内容を、予算編成における事業評価として迅速かつ的確に予算へ反映させる仕組みが、平成二十五年度予算編成から導入されております。
 引き続き、監査結果が都の事務事業の改善につながるよう、質の高い監査を実施するとともに、同じ誤りが繰り返されることのないよう、各局における改善の取り組みを促してまいります。
 このほかに、都民からの住民監査請求が十三件ありました。
 以上、この一年間に実施した監査について述べてまいりました。
 監査の結果、総じていえることは、組織内部のチェック機能や異なる部門間での連携が十分に機能していないために、事務処理の誤りやおくれが見過ごされていることです。また、都民目線に立ったサービスの提供に向け改善すべきものも見られました。
 各局長並びに管理者の皆様には、組織の責任者として先頭に立ち、指摘を受けた事項の是正改善のみならず、誤りの根本原因の解消や仕事の進め方の見直しなど再発防止に取り組み、都民サービスのさらなる向上に努められるよう望みます。
 我が国の経済は、穏やかな回復基調が続いていますが、都財政は景気の影響を大きく受けやすい歳入構造であり、先行きは予断を許さない状況にあります。こうした中で、都は、史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現に向けて、一丸となって開催準備に取り組むとともに、少子高齢化、環境問題への対応、安全・安心の確保など、山積する課題を解決していかなければなりません。
 そのためには、財政基盤の強化を図るとともに、事務事業について不断の見直しを行い、事業の効率性や実効性を一層高めていくことが求められます。
 こうした中にあって、事務事業の効率化や都民へのサービス向上が図られているかを検証する監査の果たす役割が、より一層重要であります。
 私ども五名の監査委員は、都政が公正かつ効率的に運営されるよう、これからも監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

出典:平成二十八年東京都議会会議録第一号 https://www.gikai.metro.tokyo.jp/record/proceedings/2016-1/01.html

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